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運命の女神は勇者に味方する  作者: 岩切 真裕
~ 剣術国家セントポーリア編 ~

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彼らの弱点

 ―――― 分解!!


 周囲は驚くけれど、わたしの魔法は酷く単純なものだと自分では思っている。


 結果の予想、想像力を働かせて、頭の中に不自然ではない形を思い描けば良いだけ。


 無から有は作れないが、大気魔気が源精霊や微精霊……、原子や分子のようなものだと分かれば、それらを結合(仲良く)させたりするだけの話。


 地球の自然界には90以上の元素が存在していたはずだから、この世界もそれぐらいはあるだろう。


 そのために、たまに頭の中の絵とは違う結果に繋がることもあるけれど、それはわたしの想像力が貧困なのだと思っている。


 今回のコレもそうだ。


 自分の周囲にあった紐をバラバラにしたかった。

 それだけの話。


 だが、まるで少年漫画の主人公や敵キャラが、拘束を無理矢理解くかのように、ぶちぶちっと嫌な音を立てて、引きちぎられるとは思わなかった。


 分解ってもっと大人しいものじゃないっけ?


 あれ?

 バラバラにするのだから、現実的にはこんな感じ?


 まあ、いい。

 拘束からは抜けることができたのだから。


 わたしを捕まえていたのは、ツタのような植物だったらしい。


 ブドウも似たような葉っぱだったと思うけど、ブドウはもっと緑部分が少なかった気がする。

 ブドウは木だしね。


 しかし、空中に持ち上げられていたらしく、わたしの身体は重力に従って落下する。


 いつもは助けてくれる護衛たちは、床に臥せっていた。


 彼らはわたしが捕えられたことで、勝負を諦めたわけではなく、単純に陛下にやられてしまったらしい。


 本当に国王という存在は、敵に回したくないと思う。

 あれだけ有能な護衛たちを、短時間で叩き伏せるとか、どんな魔法を使ったのか?


 いや、それよりも、この状況をどうにかするか。


風魔法(ういんど)


 風魔法がクッションになって、ふわりと降り立つつもりだったが、どうやらわたしは選択肢を間違えたらしい。


 凄い勢いで、天井に身体が持ちあげられ、そこで魔気の護り(自動防御)が発動する。


 身体が天井に接触する前に空気の塊がぶつかって、そのまま、ぼてっと床に落とされた。


「あいたたたた……」


 魔気の護り(自動防御)が出たということは、天井に叩きつけられるところだったのだろう。


 でも、その高さから落とされたのも結構、痛い。

 そして、痛みはあっても、打撲程度だと思う。


 自分の身長の二倍以上ある高さから落ちたというのに打ち身だけとか、どれだけ頑丈な身体になったのか!?


「……何をやっている?」


 ああっ!?

 セントポーリア国王陛下の視線が珍しく突き刺さる。


「自滅……、でしょうか?」


 無駄に魔法力を消費したことだけは分かる。


 いや、自分でも何をやっているのかと思うけれど、咄嗟の判断って難しい!!


 だけど、手から放出された風魔法がブレーキになるどころか、下から持ち上げられた上に加速して天井に向かわせるなんて思わないじゃないか!!


 そして、わたしは九十九のように器用ではない。


 風から飛ばされた後、身体を反転させて天井を蹴り上げてからその体勢を整えるなんてことができるはずもなかった。


 どこの忍者だ!?

 忍者ではないわたしが勢いよく天井にぶつかってしまう前に自動防御が出たのは当然だろう。


「普通に降りた方が良かったな」


 ええ、わたしもそう思います。

 でも、その時はそんなことを考えられなかったのだ。


 それに、自分に迫りくる床ってかなり怖いんだよ。

 ジェットコースターに乗っている時のように、お腹あたりがスーッとする変な感覚がした。


 いや、実際迫ってきたのは動かぬ床ではなく、落ちていったわたしの方なんだけど、感覚的にそんな気がするのだ。


「しかし、まさか、あの拘束を引きちぎって抜けるとは思わなかった」


 国王陛下にはそう見えたらしい。

 自分でもそう思えたのだから当然か。


 陛下の言葉だけを聞くと、どこの怪力お嬢さんだって思わなくもないけれど、この世界には自分の肉体を強化する身体強化という素敵補助魔法もある。


 一見非力に見えるお嬢さんでも、どこかの世界のおてんば姫のごとく修理中の城の壁を蹴破って脱走することだって可能なのだ。


 残念ながら今のわたしには使えないけれど。


 他者の強化はできるようになったのに、自分が強くなる姿ってどうしても想像できなかった。


「さて、どうする? 護衛たちは倒れたままだが、そなた一人で続けるか?」


 改めて、問われる。


 その表情には微かな笑み。

 わたしの答えなど分かっているのに、国王陛下は挑発的な確認をする。


「続けます」


 だから、そう答えた。


 見たところ、九十九も雄也さんも怪我をして動けないわけではないらしい。

 そのことにほっとする。


 それでも、九十九は上半身だけ起こしているが、それ以上は動けないようだし、雄也さんは完全に床に張り付き、顔だけこちらを向けていた。


 九十九は腰から下が、雄也さんは全身が床に縫い付けられているような感じなのだろう。


 そして、意識はあるが話すことができないのも、彼ら二人の視線から分かった。


 特に、九十九が先ほどのわたしの阿呆な行動を見ていたというのに、全く何も言わないのは不自然なのだ。


 本当に何の魔法なのだろう?

 わたしが以前食らった重圧魔法かな?


 でも、あれは風属性魔法だったらしいから違うかもしれない。


 九十九や雄也さんが、わたしが見ていない僅かな時間で、身体が動かせない状態になっているのだから、それは普通の魔法とは思えなかった。


 怪我なら治癒魔法でなんとかできるけど、精神系魔法だと原因が分からないとどうすることもできない。


 つまり、このまま続けるなら、放置して彼らの回復を待つか。

 それとも、一人で国王陛下を倒すかの二択となる。


 この場所に二人は倒れているため、確実に巻き込んでしまうだろうが、この状況で彼らを動かさない方が良い。


 この様子だと国王陛下は彼らが動けないと思っている。

 それだけの魔法を使ったのだろう。


 彼らにはちょっとだけ我慢してもらうことにした。

 万一、動けるかもしれないとわたしが期待していると思わせていた方が良い。


 今から使う魔法で衝撃を与えてしまったら、後で、存分に謝ろうか。


 いや、そんな大きな魔法を使う気はないのだけど、今から使おうとしているわたしの魔法は、確実に彼らにダメージを与えるとは思っている。


 それだけ、広範囲に影響があるものだ。

 今回の模擬戦が始まる前からずっと考えていた。


 これなら、必ず効果があると思われる魔法。


 風魔法の耐性が強すぎる国王陛下が相手でも、この魔法なら絶対に効くと思われる魔法をわたしは持っているのだ。


 それをこれまで一度も使わなかったのは、陛下を油断させるため。


 わたしや九十九、雄也さんの魔法が国王陛下にとってほとんど効果がないことなんて分かっていた。


 相手は国の頂点。

 わたしたちが王族の血を引いていても、簡単に勝てるはずがないのだ。


 魔法国家の王族なら、その桁外れの魔力とか、魔法力で圧倒できるかもしれないが、残念ながら、この場にそんな特殊事例の人間はいない。


 だが、わたしが今から使おうとしているこの魔法はこれまでの方向性とは全く違うものである。


 力押しではない、精神系の魔法。

 でも、だからこそ、国王陛下の魔気の護り(自動防御)は働かないだろう。


 強いて言えば、その勝負の仕方に納得できるかどうかだ。

 まあ、先に陛下が似たようなことをしている。


 わたしを植物魔法? で、捕えた後、そこで動揺した彼らの隙を突き、何らかの精神系魔法を使ったのだと思う。


 攻撃魔法なら、彼らの魔気の護り(自動防御)が発動すると思う。


 仮に、彼らの魔気の護り(自動防御)と魔法耐性を上回るほどの攻撃魔法であっても、何かの気配は感じられるだろう。


 今のわたしが、拘束されていたとはいっても、近くにいた九十九の変化に気付かないとは思えない。


 つまり、わたしがあっさりと国王陛下の手に落ちたから、そこで動揺した彼らも隙を突かれてあっさりと倒されてしまったってことだよね?


 前々から分かってはいたけれど、わたしは彼らの弱点になり得るのだ。


 だから、強くなりたかった。

 彼らの足手纏いになりたくなんかないから。


 魔法を使えるようになって、強くなったつもりだった。

 だけど、何も変わっていない。


 寧ろ、もう自分は大丈夫だと油断するようになった分だけタチが悪くなった。

 それに気付かせてくれたことは感謝すべきだろう。


 だけど、それに陛下がそのことに気付いていて、弱点攻撃をしたことに変わりはない。


 油断するなという忠告か。

 それとも、そんな手段を使わせるほどに追い込んだのかは分からない。


 ふと九十九を見る。

 彼は上半身だけ起こした状態で……。


 ―――― 行け!!


 そんな言葉にならない声を聞こえた気がした。

 それなら、行くしかないよね!!


「――――っ!!」


 だから、わたしはある意味、禁忌とも言える魔法を口にしたのだった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました

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