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運命の女神は勇者に味方する  作者: 岩切 真裕
~ 暗闇の導き編 ~

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感謝の理由

 本当はもっとちゃんと言いたかった。

 わたしが、どれだけ二人に感謝しているかってことを伝えたかったのに……。


「人間界でわたしを見つけてくれてありがとう」


 出てきた声は思った以上に小さかった。

 これでは、まるでわたしが感謝していないみたいじゃないか。


 でも、いろいろな感情が溢れて止まらないのだ。

 さらに言葉を続けたいのに、喉に引っかかって、何も出てこなかった。


「栞ちゃん、キミを見つけたことで、キミから恨まれることがあっても、礼を言われる理由が分からない」


 ぬ?

 恨む?


 雄也さんは何故、そんなことを言うのだろうか?


 わたしたちを見つけたのだって実はもっと早かったと聞いている。

 実際、わたしは入学式の時に九十九と出会っているのだから。


 それでも、彼らは、ギリギリまで待ってくれた。


 わたしの15歳の誕生日まで、人間界で生活することを見逃してくれたのだ。


 そこまで気を遣ってくれた上に、さらに、わたしに選択肢まで与えてくれたような相手を恨むっておかしくない?


「俺たちが見つけてこの世界に連れ帰らなければ、キミは今も千歳様と人間界で……」

「あ、そうか」


 わたしはそこで気付いて、両手を打った。


 雄也さんは知らないのだ。

 あのまま、人間界で生活し続けた果てに起こった未来の形を。


「モレナさまが言うには、あのまま人間界にいた方がもっと危険だったそうです」

「「え? 」」


 わたしの言葉に、雄也さんと九十九が目を丸くした。

 やはり、彼らは気付いていなかったらしい。


「わたしもずっと気になっていたんですよね~。あのまま、人間界にいたらどうなっていたか?」


 勿論、彼らはその可能性は考えていた。


 あのまま、人間界にいた時は、それが起こり得る可能性として口にされたこともあったから。


 だけど、その脅威までは知らなかったと思う。

 王族の血が入った魔界人は、人間界にいても、魔力の暴走が激しいという事実に。


「モレナさまは、わたしが選ばなかったそんな未来も視ることができるそうです」

「それは……」


 雄也さんが何かを確認しかけたけど……。


「つまり、占術師の能力を持つ方々は、『選択肢の多いアドベンチャーゲーム』の『シナリオ』を全て視ることができるのだと思いました」


 わたしは、先に結論を口にした。


「あの方は、栞ちゃんの多岐に亘る未来の全てが、視えるということかい?」

「全てとは明言はされませんでしたが、話を聞いた限りではそんな印象を受けました」


 つまりは、セーブ、リセット、ロードを繰り返して、その選択肢の全てを確認できるってことだと思う。


 しかも、それが映像として視ることまでできてしまう能力だ。


 わたしの人生がゲーム化されたようで複雑だけど、モレナさまの感覚としてはそんな感じだろう。


「わたしがあのまま、人間界にいたら、その先にあるのは悲劇しかなかったと」


 まるで、本当に人間界で人生を模したゲームだ。


 最後の大勝負に負けて、開拓地送り、いや、それよりももっと酷い悲劇。


 あのゲームは、自分だけが借金を背負うだけで済むけれど、わたしが人間界に残ってたいら、その比ではなかった。


 多くの人間を巻き込んだことだろう。


「だから、二人には本当に感謝なのです!」


 そうきっぱりと宣言する。


 だが、これでは自分でもあまり深謝という感じを受けない。

 気持ちだけは溢れているのに。


 うぬう?

 どうしてこうなった?


「そうなると、栞は、あのまま人間界に残っていたら、どうなるところだったのかを聞いたってことか?」

「うん。それはずっと気になっていたことだったからしっかり聞いた」


 それは今となっては本当に仮定の話。

 だけど、起こりえた未来。


「九十九や雄也、あとライトとの魔力的な接触で、一時的に安定したみたいだけど、誕生日から半年と経たないうちにわたしの魔力が暴走らしいよ」

「半年!?」


 九十九が驚きの声を上げる。


「それは、見立てより、かなり早いな」


 ああ、やはり、見立ててはいたのか。


「因みに、雄也。あなたの予想ではどれくらい持つ予定だった?」

「1,2年ってところかな。だが、まさか、半年……、とは……」


 ちょっと信じ難かったらしい。


「その魔力の暴走によって、多くの人間たちを巻き込んだその上、ワカやその従姉妹だった高瀬と、その一族たちによって、なんか、身体ごと封印された図が視えるとモレナさまは言っていた」

「アイツらが!?」

「ああ、若宮さんは、法力国家の王女殿下だし、高瀬さんの一族は、人間界で陰陽師のような役割を担っていたらしいからね」


 そうなのだ。


 だから、高瀬は中学生にして同じ一族の親戚と同居して生活するという少女漫画でありそうな状況だったらしい。


 それを知ることになったのが何故か、人間界ではない場所だったから、お互い、いろいろ不思議な縁だよね?


「ちょっと待て? オレはそれを黙って見ていたってことか!?」


 やはり、そこに気付いてしまうよね?


 だから、正直に口にする。


「黙って見ていたというより、魔力を暴走させたわたしに真っ先にふっ飛ばされたらしいよ」

「その場にいない方がマシだった!!」


 九十九がそう叫びたくなる気持ちも分かる。


 しかも、それがきっかけで、もっとわたしの暴走が激しくなったらしいから救われない。


「暴走栞さん状態だったらしいから、ある意味、仕方ないよね?」


 思わずそう口にしていた。


「なんだ!? その格闘ゲームにありそうな状態!?」

「カゼノナカオウゾクノチニクルフシオリ?」

「しかも、どこかで聞いたことがあるネタまで重ねてきやがった!?」

「いや、このネタが通じてしまう九十九って結構、凄いと思うのだけど……」


 人間界では結構、有名な格闘ゲームだったはずだが、このネタについてはキャラクター設定まで知らないと分からないと思う。


 因みに、わたしは受験の合間に、ゲームセンターに行っていたから知っていた。


 格闘ゲームのセンスがなくて下手だったけど、主人公の声がかっこよくて好きだったから上手い人のプレイを後ろで見せてもらった覚えがある。


 格闘ゲームはソウが上手かったんだよね。

 人間界の話をしていたせいか、うっかり思い出してしまった。


 あのシリーズ、まだ出ているのかな?


「つまり、情けないことに愚弟は即、退場(リタイア)したのか」


 ゆらりと雄也さんの背後から陽炎のような何かが揺れた気がした。


「因みに雄也さんが魔界に帰っている時の出来事だったらしいです」

「その場にいなかった兄貴に言われたくねえ!!」

「今より未熟な俺に完璧を求めるな」

「オレも今より未熟だった!!」


 何故、起きてもいない未来、いや、時期的にはもう過去? のことで、言い合いになってしまうのだろうか?


「『祖神変化』を伴った暴走だったらしいから、寧ろ、わたしを封印しきったワカや高瀬の一族が凄いんだと思うよ」


 どんな手を使ったのかは分からない。


 でも、王族であるワカなら、足止めは可能だっただろうし、高瀬たちの一族は魔法と違う精霊族に似たモノ……式神だっけ? を遣うらしい。


 そして、人間界は魔界人より人間の領域だ。


 あの世界はこの惑星(ほし)の神々の加護が届かないためか、大気魔気も薄く、現代魔法に関してはかなり制限されると聞いている。


 そんな世界で高みを目指し、自分たちが持っている能力の最適化を計り、先祖代々、子々孫々に至るまで日々研鑽を続けている人たちが魔界人(余所者)に劣るはずもないのだ。


「『祖神』、『変化』……」


 わたしの言葉に九十九が茫然とした。


「それは、今の九十九でも力不足だな」


 そして、雄也さんは酷かった。


「おいこら?」

「事実だろ?」

「一度でも栞の暴走に遭遇してから言え!!」


 九十九は、何を言ってるの?

 わたしの暴走って止めるのも大変なんだよね?


 だから、衝撃を与える方法を選ぶしかないって言ってなかったっけ?


「願ってはいるんだがな……」


 願ってはいるんですか、雄也さん。

 九十九から聞いているはずですよね?


 いつものように、好奇心からだと思うけれど、そんなモノは持たないでください!!


 なんで、わたしの護衛たちは頭が良いのに、時々、ツッコミどころが多すぎる阿呆なことを考えてしまうのだろうか?

時々出てくるゲームネタ。

今回は出典を分かりやすくしてみました。

あの時代の大好きなゲームです。

今も続いているのは凄いですよね。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました

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