表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

野獣学園

作者: 安達邦夫





はじまり


2.


家政婦が、南米に旦那様はいってらっしゃますと話すと、慶子は、

「やはりカメラマンのお仕事ですか?」と訊いていた。

だが、家政婦は、

「いいえ、旦那様は貿易会社の社長さんですよ。あんまり写真は撮られないと思います。

社員の方と買い付けに行かれたと伺っていますよ」と屈託なげに笑顔で否定した。

内心えっと驚きながら、礼を言ってその場を辞したが、心の中で首をかしげていた。

蘭健一郎の言ったカメラマンというのは、なんだったのだろうか?

聞くと貿易関係の会社の経営者らしい。家政婦が嘘を吐いているとも思えなかった。

あれだけの豪邸なら、このあたりなら数億は下らないだろう。

事業をしてるなら首肯けるのだが……。


気付くと、慶子は繁華街に入り込んでいた。滅多に来くることはない界隈。いかがわしい看板やイヤらしいネオンや耳にイヤリングをした顔色の悪い若者が徘徊している。

狭い路地には、配達の車からビールの入った容器を積んだトラックがいて、危うく若者にぶつかりそうになる。

頭を下げて去ろうとする慶子に若者の腕が絡んできた。

「おい、姉ちゃん。人にぶつかって知らんぷりはないだろう」思いきりドスを効かせている積りだが、少し頭が弱そうに見える。

クスリをやっているのか歯並びも悪く、茶髪もザンバラだ。

「すいません」恐怖ですくんだ声帯から、やっと出たのは、ささやくような掠れ声だった。若者は、弱いものいじめの格好の標的と見たのか、かさにかかってきた。

「姉ちゃん!ちょっとそこまで、顔を貸してもらおうか」周囲には人がいない。じっとりと手が汗ばんでくるが、いいアイデアが浮かばない。焦るばかりで、ガッチリと掛けられた若者の腕の力は見かけによらず強かった。筋トレしてるのかも知れない。


そこにかれが現れた。

何故、こんなところに?慶子は、気絶しそうになりがら、思った。蘭雄太郎だわ。あの目だわ。アイピックのように冷たい目だ。突き刺さるような目がきらめいて、見る者を呪縛してしまう目だ!

そして、貫井慶子の意識は、ふっと途絶えた。



つづく




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ