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私がどう対応したらいいか迷っていると、マリー様が意を決したように、
「アビゲイル様、失礼は承知でお伺いしますわね。ライアン殿下とはどうなっておりますの?」
と直球で聞いてきた。
彼女の顔には興味本位ではなく、私を心配して聞いていることが見て取れる。
彼女達ならば信用出来ると私のカンが言っているので、ぶっちゃけることに。
「お恥ずかしい話ですが……。入学して直ぐにご挨拶に伺いましたけれど、お忙しいということでご挨拶だけして帰って参りましたの。ライアン殿下から私の元へは一度も……」
そうなのだ。
入学式の後に婚約者として挨拶に伺ったのだが、王族専用の応接室へと通され待っていると、彼は笑顔の一つも見せることなく入って来ると同時に、
「用事があるので、失礼する」
と言って部屋を出て行かれたのだ。
なので実際は、まともな挨拶すらさせてもらえていない。
これだけ聞くと王子様サイテーとか思うけれど、記憶が戻る前のアビゲイルもちょっとヒドかったので、自業自得の部分もあるのかな、と。
まあ、全てを話す必要はないけれど、それでも『私は相手にされてませんよ』と言っているようなものなので、つい恥ずかしくて俯きながら言えば、彼女達の目にはそれが悲しげに映ったようだ。
「入学して二ヶ月以上経っておりますのに、一度もお会いしに来て下さらないなんて、あんまりですわ」
ミレーヌ様が泣きそうな顔で言うので、思わず慰めようと、
「婚約は家同士の決めごとであり契約ですから、私たち個人の気持ちはそこには一切関係ございませんもの……」
だから気にしないでね、という意味で言ったつもりだったのだが、逆効果だったようだ。
「だからといって、アビゲイル様を蔑ろにしていいわけではありませんでしょう?」
目に涙をいっぱいためるその姿に、『やだ、何この可愛い生き物』と脳内で悶えたつもりが、思わずギュウゥゥッと抱きしめていた。
嗚呼、このままお持ち帰りしても良いですか?
「そうやって心配して下さる皆さんがおりますから、私は大丈夫ですわ」
ニッコリ笑顔で言うとミランダ様が一つ息を吐き出してから、
「アビゲイル様がそう仰るのでしたら、もう何も言いませんわ。そのかわり、何かあればいつでも私達を頼って下さいませね」
と、多分言いたいことはたくさんあるだろうに、そう言って微笑んでくれる彼女に、いえ、彼女たちに出会えたことを、心から感謝した。