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マリー様たちが部屋へ迎えに来てくれました。
いよいよ、出陣の時!!
「見事婚約破棄を勝ち取って、隣国から新しく輸入致しましたお菓子でお祝いしましょうね」
マリー様が満面の笑みを浮かべてそう言った。
「楽しみですわね」
「ちゃっちゃと終わらせてしまいましょう」
マリー様に毒されたミランダ様とミレーヌ様が笑顔で答えている。
けれど皆のそんな姿を見て、私の肩に入っていた無駄な力が抜けて、指先にいつもの感覚が戻ってくるのを感じた。
ここまで予定通りに進んでいるし、何度も脳内シミュレーションを繰り返した。
頼もしい友達もいてくれる。
「晴れて自由の身ですわ!」
自由を勝ち取るために、いざ行かん!
◇◇◇
パーティー会場へ到着。
ここまでにライアン殿下を見かけることはなかったので、きっと彼はシャルロットと一緒に会場の中のどこかにいるのだろう。
扉の前に立ち皆で大きく頷いた後、扉を開け会場へと足を踏み入れた。
なかなかの熱気である。
制服姿の在校生に混じって、ドレスやタキシードに身を包む卒業生の姿が。
出来るだけ人目につくようにと、なるべく中央へと向かって歩を進めていると。
突如大きな声で「アビゲイル!」と呼ばれる。
声の主はもちろんライアン殿下だ。
心の中では「ようこそお越し下さいましたぁっ!」と大歓迎しているけれど、私は打ち合わせ通りに不安そうな表情を浮かべる。
「ライアン殿下……」
消え入りそうな声で、ライアン殿下を見つめる。
それまではあちらこちらで楽しそうな声が聞こえていたものがシーンと静まり返り、その中をライアン殿下はツカツカと音を立てながらアビゲイルの前まで歩いて来る。
彼の後ろにはシャルロットがトテトテといったように着いて来ていた。
ライアン殿下はアビゲイルの前でピタッと止まると。
「アビゲイル・クラーク、貴様との婚約は破棄することとする!!」
徐に会場に響き渡るような声で宣言して下さいました。
グッジョブ! ナイス、ライアン殿下!!
会場内は彼の言葉にざわつき始め、あちらこちらで
「卒業後にアビゲイル様と結婚するのでは無かったの?」
「あの平民上がりとは在学中の遊びでは無かったのか?」
などの声が上がっている。
マリー様の噂の成果はバッチリである。




