表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化&コミカライズ】悪役令嬢はオジサマに夢中です  作者: 翡翠
第七章 攻略キャラその①ライアン・ヴァナクーア(婚約者)
70/103

5

シャルロット目線です

「学園卒業後にライアン殿下とアビゲイル様が結婚されるらしい」


 シャルロットがその噂を耳にしたのは、つい先日のこと。


「そりゃそうだよな、平民上がりの下位貴族の令嬢と侯爵家の令嬢とじゃ、比べるまでもないか」

「卒業したら遊ぶ時間なんてなくなるだろうし、学生の間くらいは好きにさせろってところなんじゃないか? ハハハ」


 彼らのいる位置からは丁度死角になる場所に、シャルロットはいた。

 彼らは彼女の存在には気付いておらず、面白おかしく好き勝手に話しているようだった。

 シャルロットはショックで聞いていられなくなり、気付かれぬようにその場から逃げ出した。

 気が付けば屋上のベンチまで来ていて。

 授業の時間になってもそこから動くことが出来なかった。



「ここにいたのか、何かあったのか?」


 授業に出なかった私を心配して来てくれたライアン様。

 本当はこんなことを言うつもりはなかった。

 身分違いなことは自分が一番よく分かっている。

 学園にいる間だけでいいと思っていたはずなのに、私はどうしてこんなに欲張りになってしまったんだろう。


「ライアン様は、卒業されたらアビゲイル様とご結婚されるのですよね? 私は、一人でどうしたらいいのでしょう……」


 こんな言い方は狡い。

 でも一度口から出てしまったら、止められなくなってしまって。


「他に婚約者がいる方と、ずっと一緒にいるなんて、やはり無理なことだったんです……」


 涙も止まらなくなってしまって。

 どれくらいそうしていたのか。

 ライアン様がポツリと口にされたことに吃驚して、思わず涙も止まってしまった。


「今まで中途半端にして来た私の責任だな。こんなに泣かせてしまった。私はアビゲイルと結婚するつもりなど毛頭ないし、シャルロットを手放すつもりもない。……君に辛い思いをさせるくらいなら、アビゲイルとの婚約を破棄しようと思う」

「……え?」


 聞き違い? 婚約破棄って聞こえたのだけど?

 これでもかと言うほど目を見開いて固まっていると、ライアン様は可笑しそうに笑いながら私の頬に手をあてた。


「私の横にいて欲しいのはアビゲイルじゃない。シャルロット、君だ。これからもずっと私の隣にいてくれるね?」


 さっきまでの涙は悲しい涙だったけれど、今視界を覆っている涙は嬉し涙だ。

どこから出て来るのかと思うほどに、次から次へと湧き出て来る。

 私は震える唇を何とか動かしてライアン様に返事をした。


「はい」


 ずっと、ずっと一緒におります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ