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「噂だけ聞いていると、ただのクズですわね」
「本当に……」
「そろそろ彼女の耳にも入る頃でしょうか?」
「もう耳にしていてもおかしくはありませんわね。後はサッサと婚約解消のお強請りをしてくださればよろしいのですが」
例によって例の女子会中である。
第二弾として流した噂が更にパワーアップして拡散されているのだ。
きっと誰かが面白おかしく話したことが事実のように広まり(その方が面白いなどの理由)、そこに何でも誇張して話すような者を経由すれば簡単にパワーアップされてしまうのだろう。
こちらにとっては都合が良いが、噂される方にとってはたまったものではない。
「出来ましたら、少し先にある卒業パーティーで婚約解消を言い出してくれるのが望ましいですわね」
マリー様曰く、内々に婚約解消の話をした場合、国王様より婚約解消の話は王子が勝手に言い出したことで無効だと言われる可能性があるということ。
そうさせないためにも、生徒の殆どが出席している卒業パーティーで宣言したならば、国王様といえども簡単に訂正することは出来ないだろうと。
そういったことから、もしライアン殿下から「話がある」と言われても決して会うことなく、卒業パーティーで宣言するよう、うまく誘導しなくてはならない。
「何だか緊張してきますわね」
「ミレーヌ様? 今から緊張していては、体力・精神力ともに保ちませんわよ?」
「それにしても、この学園に入学してから、もう直ぐで一年経つのですね。色々ありすぎて、あっという間だった気が致しますわ」
ふと思い出したように呟くミレーヌ様の言葉に皆が同意する。
確かに色々ありましたわね。
王子様とか王子様とか王子様とか……って、ライアン殿下からは迷惑を掛けられたことしか思い出せないんだけど。
……サミュエル様のことは、今は何も考えない様にしよう。




