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「何度でも足を運びたくなるほどの素晴らしい舞台でしたわね」
「もう涙が止まりませんでしたわ」
ミランダ様とミレーヌ様が大興奮で感想を述べ、とても楽しまれたようだ。
あれから舞台は順調に進んで行き、妖と娘がいつも一緒にいた小高い丘の上で、独り娘が来るのをずっと空を見上げて待っているシーンで幕が降り、そして会場には割れんばかりの拍手の嵐が。
その後は場所をレストランへと移し、楽しく舞台の感想を言い合っている。
「なかなか良く出来た作品だったとは思うが、どうも僕にはあの出演者の名前を叫ぶのが気になってしまってね……」
ノア様が苦笑気味にそう言うが、その気持ち、とってもよく分かる。
「私もあの黄色い声がなければ最高の舞台だと思いますわ。せっかく集中して観ているのに、あの声で現実に引き戻されてしまって」
ノア様に続いてそう言えば、マリー様も同意とばかりに頷く。
「そうですわね、舞台に集中して観たい人もいるわけですから、いっそのこと黄色い声アリの回とナシの回に分けて頂きたいですわね。そうすれば舞台に集中したい方と、出演者を応援したい方と両方満足出来ますもの」
あの黄色い声は置いておいて、舞台そのものには皆大満足だったということで、美味しい食事を頂きながら楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
空が朱に染まる頃、学園へと戻ってきた。
「ノア様、本日はお誘い頂きありがとうございました。とても楽しかったですわ」
「いや、私も今日は楽しかったよ。王太子としてでなく、私個人として付き合ってくれる友人は少なくてね。だから、ありがとう」
皆でノア様に感謝の言葉を述べれば、ノア様は少し照れたように良い笑顔で男子寮へと帰って行った。
……背後にイザヤ様を従えて。
「それにしても、あの方は何だったのでしょう?」
「舞台から一言も口を開いておられませんでしたよね? 本当にただの護衛のおつもりだったのでは?」
「あの、護衛って、今日だけ……ですわよね?」
残った女子たちでイザヤ様の話をしていると、ミランダ様の不吉な言葉に皆で固まってしまった。
今日だけ、だよね?
まさか今後ずっとなわけないよね?
誰かお願いだから違うと言ってぇぇぇ。
 




