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女子会翌日。
「舞台、ですか?」
「そう、今町で評判らしいんだが、どうだろう? 一緒に観にいかないかい?」
いつものように四阿にてマリー様たち+ノア様とランチ中に、町で評判になっているらしい舞台へ、ノア様に誘われているところだったりする。
「ノア様、それはもしかして『妖』では御座いませんか?」
マリー様が瞳をキラキラ(当社比2倍)させて食らいついている。
「ああ、その『妖』だよ。よく知っているね?」
「かなり評判の良い舞台らしく、チケットの入手が困難なのですわ。うちは商売をしておりますから、幾らかは入手可能ではありますが、優先的に御得意様へ回してしまいますから……」
マリー様が物凄く残念そうな顔をしている。
この舞台は前世で言う『宝塚』のように出演は全て女性だそうで、お客様は貴族や裕福な商人の奥様が中心なんだそう。
まあ、興味がないと言ったら嘘になるけれど、ノア様と二人で出掛けるということに抵抗が……。
「ノア様は(そんな大変な)チケットを入手出来ますの?」
一応確認で聞いてみたらノア様にドヤ顔をされた。
「君は忘れているかもだけど、僕は隣国の王太子だからね? ボックス席の手配が可能なんだよ」
ボックス席といえば、五〜六人ほど入れる個室で、王族や国の賓客席として使用されている。
ならば、ここにいる皆で参るとしましょうか。フフフ。
「まあ、素晴らしいですわ! 皆様と一緒に観たら、きっと楽しさは何倍にもなりますわね? とても楽しみですわ。ノア様、いつでしたらボックス席はお取り出来ますの?」
無邪気を装って言ってみた。
二人だけで舞台を観に行くなんて、恋人でもないし、なる予定でもないのに無理無理。
でも、舞台には興味があるし、マリー様も観たがっているし……。
ズルいのは承知で、ノア様がお断り出来ないようにもっていく私は、本当に性格が悪いと思う。
心の中でノア様に謝罪した。
「じゃあ、皆は今度の週末の予定はどうかな?」
ノア様は苦笑気味に皆様の予定を聞いてくれて、全員特に予定はないということで、週末に舞台を観に行くことが決定した。
何だかんだと、ノア様は優しい方なのよね。
私は彼のことを嫌いではなく、友人としては好き寄りだと思う。
ただ、恋愛的な意味の好きではないのだ。
だからこそ、早く(私以外の)良い方と巡り会われてくれたらと願うばかりだ。




