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「『井の中の蛙大海を知らず』は東方の島国で使われている諺らしいですわ。井とは井戸、蛙はカエル、大海は海を指しており、小さな井戸に住む蛙は、大きな海があることを知らないという意味から、狭い見識にとらわれて、他に広い世界があることを知らず、自分の住んでいるところがすべてだと思い込んでいる人のことを言います。つまり『狭い知識にとらわれて大局的な判断の出来ないもの』の例えですわね」
何とか上手く誤魔化せたかな?
東方の島国には日本のようなところがあると耳にしたことがあるし、多分大丈夫なはず?
「あの、その意味もご説明なさりましたの?」
ミランダ様に聞かれて、
「はい、それはもうしっかりと」
ニッコリ答えた私に、皆微妙な顔をしている。
あれ? 何かやらかしちゃった感じ?
「そう、ですの。それは、まあ、イザヤ様も放心状態で固まっておられたわけですわね……」
「そう、ですわね。特に女性から、そういったお話しをされることは皆無でしょうから……」
あれ? 諺のことをもう少しつっこまれるかと思ったけど、そっちじゃなくて皆の関心はイザヤ様の方だった?
「私てっきり、アビゲイル様がイザヤ様に告白でもされて、お断りされてきたのかと思っておりましたわ」
マリーさまが残念そうに言うと、それにミランダ様とミレーヌ様がウンウンと頷く。
えっと、つまり皆は私がイザヤ様の告白をお断りしたから、イザヤ様は断られたことにショックを受けて固まっていたと思っていたってこと?
……ないないない。
「あり得ませんわ。初めてお会いした方ですのに」
私が呆れて否定の言葉を口にすると、即ツッコミが入りました。
「ですが、ノア様とレオン先輩もほぼ初対面からアピールされてましたよね?」
ノア様は分かりますが、レオン先輩のはストーカー案件……。
あれもアピールに入るの?
いやいや、ただの嫌がらせでしょ!?
「そんなことより私、皆様にお伝えしなければならないことがありますの」
そう、私はお子様なんかに興味はないし、そんなことより自分の将来のためにやらなきゃいけないことがたくさんあるのよ!
そのためには、まず
「私、ライアン殿下との婚約解消を致しますわ!」




