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今日の午後の授業は、教科の先生が学会で居られないため休みとなり、四阿でのランチもお休み。
正直、ランチをしても良かったのだけれど、どうせ後で女子会をする予定だし、四阿でのランチにはノア様が来てしまうので、病み上がりの今、彼の相手は正直キツイと思っていたところ、マリー様からの鶴の一声で昼食は各自でとなりました。
◇◇◇
「失礼致しました」
先生から資料を受け取り、職員室を後にした。
資料は紙っぺら二枚。重いものでなくて良かった。
寮へと戻る途中には広さの異なる訓練室が三つあり、一番小さなものは二十畳ほどの広さで、中くらいのものは体育館ほどである。
一番大きなものは代々木国立競技場体育館のように客席もあり、広さもそれくらいありそう。
いったい何に使うんだか。
……コレ、必要ですかね?
いやはや、恐ろしくお金の掛かっている学園である。
一番小さな訓練室の横を通り過ぎようとした時に、小さな風を切るような音が聞こえた気がした。
そのまま通り過ぎてしまえばよかった。
本当に、そのまま通り過ぎてしまえばよかったのだが、つい足がそちらに向いてしまったわけですよ。
なんでそのまま通り過ぎなかったかと、この時の自分を殴ってやりたい。
ええ、自分の好奇心の強さに呆れ返ってしまいますよ、本当に。
開いていた窓から中を覗き込むと、ダークブラウンの短く刈り込んだ髪に薄いグレーの瞳を持つ、非常に整った顔立ちをした細マッチョな少年が、一心不乱に剣の稽古をしていた。
『学生』という枠組みの中では素晴らしい実力の持ち主なのだろう。
この数ヶ月、近衛騎士団の稽古を見せて頂いたお陰で、素晴らしく目は肥えている私。
違いの解るお嬢様とは私のことよ♪
……自分で言っておいて恥ずかしくなってきた。
気が付けば稽古をしていたはずの少年が窓の前に立っていて、鋭い視線を向けて聞いてきた。
「俺に何か用か?」
覗いていたことが知られるのって、物凄い悪いことをしていた気分になるものなのね。
ちょっと挙動不審気味ながらも、謝罪した。
「い、いえ。音が聞こえてきたので、気になって覗いてしまいました。勝手に覗いてしまってごめんなさい」
お詫びのつもりに一つだけ、彼の動きを見ていて思ったことを伝えてみる。




