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【書籍化&コミカライズ】悪役令嬢はオジサマに夢中です  作者: 翡翠
第一章 乙女ゲーム『魅惑のシンデレラ~永遠の誓い~』
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「ドナドナド~ナ~ド~ナ~♪」


 思わずドナドナを口ずさんでしまったわ。

 今私は、今日より入学するファリス学園へと向かうべく、馬車に揺られている。

 馬車の向かい側の席には、侍女のミアが「頭は大丈夫か? コイツ」というような目で私を見ながら座っている。

 だから、そんな目で私を見るのはやめて!

 何となくドナドナな心境になってしまったのだもの。

 ……あれからも少しずつだけど、アビゲイル(わたし)の記憶は戻ってきている。

 裏を返せば完全には戻っていないということだ。

 今の私の人格は完全に柚月である。

 自分の中に他人の記憶があるような、変な気分だ。

 けれど分からないのは、今柚月がアビゲイルとして存在しているということは、柚月は死んでしまったのよね?

 その辺の記憶が私には丸っきりないのだ。

 十七歳から先の柚月の記憶はプッツリと途絶えている。


「そのうち思い出すのかしら……」


 窓の外の風景を眺めながら独り言つ。


「お嬢様、何か仰いましたか?」

「いいえ、何でもないわ」


 そして無言の馬車の中。

 それにしても。

 スプリングもない馬車って、めちゃくちゃ揺れるしお尻が痛くて死にそう。

 なのに優雅に座ってなきゃいけないとか、お嬢様っていう存在に尊敬である(私もお嬢様だけど)。

 早く学園に到着してくれないと、私の尾てい骨が死ぬっ!

 顔に出さないように必死にお尻の痛みと戦っていると、(ようや)く学園が見えて来た。

 嬉しくて思わず涙が薄っすらと滲んだのは、仕方がないよね。


◇◇◇


「ゲームのまんまだわ」


 門を(くぐ)ると眼前には見覚えのある特徴的な真っ白い噴水と、その奥には贅を尽くしたと思われる白亜の宮殿ならぬ校舎が。

 初めてゲームで目にした時は、「これ学校の校舎じゃないよ!」と盛大なツッコミを入れたものだけど、まさか自分がこれから三年間、学園(ここ)でお世話になるなんて。

 本当、人生何が起こるかわからない。

 ーーここ、フィリス学園は全寮制の学園である。

 ゲームでの各種イベントの八~九割がこの学園内で起こり、残りは王宮でのパーティーなどだ。

 つまり、これから(一学年上である)ライアン殿下が卒業するまでの二年間は気を抜かず、各種イベントを確実に回避しなければならないワケで。

 そのためにも寮の部屋に入ったら直ぐ、攻略キャラ毎に起こるイベントを書き出してみようと思う。

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