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マリー目線です。
「いやいやいや、ソレを俺に言われても。それに、こんなところって……。アビゲイル嬢はライアン殿下の婚約者だろ? それこそこんなところに来てないで、殿下のご機嫌とっておいた方が良いんじゃないのか?」
お兄様の言葉に苛立って、掴んでいた手を乱暴に放す。
「フン、あの無駄にキラキラしただけの能なしクソ殿下ったら、お気に入りの女を横に置いて、アビゲイル様のことは放りっぱなしなんだから。学園に入ってから、あちらからはただの一度も(アビゲイル様に)会いに来たことはないし? あんな無能にアビゲイル様は勿体なさすぎるわっ!」
「おま、仮にも自国の王子をクソ殿下って……」
毒舌過ぎる妹の台詞が前面に出ていたために、それ以外の言葉を危うく流すところだったマリー兄。
「って、ちょっと待て! 学園入ってから一度も会いに来てないって、ソレはマジ情報なのか? 入学してから何ヶ月経ってると思ってんだよ。マジかっ!? それにお気に入りの女って……。単数か? 複数か?」
「単数よ。文化交流会の後のパーティーも、アビゲイル様でなくその女と参加してましたわよ」
驚きな事実を妹の口から聞かされ、言葉が出て来ない様子のマリー兄。
「……お前のことだから、色々と調べてはいるんだろう?」
やっとのことで絞り出した言葉に、口の端をクッと上げて兄から見ても背筋が寒くなるような笑みを浮かべた。
「当然ですわね。ケツ毛まで毟り取る勢いで調べましたわよ」
「ケツ毛って……。殿下、終わったな……」
遠い目をして呟く兄に、マリーは楽しそうに笑う。
「何を仰いますの? まだ始まってもおりませんわ。これから始まりますのよ?」
マリー兄は大きな溜息をついた。
「程々にしておけよ。あんなんでも一国の王子なんだからな」
「あら、王子はあと三人もおりましてよ。一人くらい欠けても問題は御座いませんでしょう? ……というのは冗談ですけれども」
「……マリーが言うと冗談に聞こえないんだよ。ホントお前はいい性格してるよ」
「あら、お兄様ほどではございませんわよ? ふふふ。それはそうと、お兄様?」
「何だ?」
「お兄様に調べて頂かなくてはならないことが、た・く・さ・ん、ありましてよ?」
マリーはニイッと笑った。




