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「そうそう、私週末にローガン兄様に渡すものがありますので(近衛騎士団)宿舎へ参りますが、アビゲイル様もご一緒……」
「もちろん行きますわっ!!」
マリー様の話を遮る形で、テーブルに手をついて前のめりな体勢になり、大凡淑女とは言い難い言動ではあるけれども。
マリー様は私の勢いに少し驚きながらも、可愛らしく声をたてて笑いながら、
「ではまた一緒に参りましょう」
と言ってくれて、その後最近なかなか出来なかった女子会トークが炸裂し、とても楽しい時間を過ごした。
ああ、やっぱり女子会最高!!
ランチではもう難しいので、ミランダ様とミレーヌ様も誘って、寮の部屋で女子会開こうかな?
マリー様にその旨伝えると、彼女も「そうしましょう」と賛同してくれたので、今後は定期的に楽しい女子会が行われることだろう。
◇◇◇
もう何回目になるのか……。
マリー様について宿舎へ通うようになって早数ヶ月。
近衛騎士団長であるサミュエル様と交わす言葉の数も増えていき、いつも必ずと言ってよいほど頭を撫でられるので、宿舎へ来る時にはサミュエル様に頭を撫でてもらいやすい髪型をミアにお願いするように。
初めてミアに「頭を撫でやすい髪型をお願い」と言った時のあのミアの顔。
いつも以上に気の毒な、可哀想なモノを見るような目に+して盛大な溜息を頂きましたよ、ええ。
だから、そんな目で私を見ないで!
私、あなたの雇い主の娘だからぁっ!!
……もうね、ミアの中の私ってどういう扱いなの?
仕事はキッチリとしてくれてはいるんだけどね。
凄く良く出来た侍女なんだけどね。
私の扱いが雑すぎやしませんかねぇ、ミアさんや。
今日もしっかり撫でやすい髪型をしてもらい、動きやすいけれど品のあるワンピースを選んでもらい、やっぱりミアは(私への扱い以外は)優秀だわと納得しつつ、昨夜作っておいたスコーンを可愛らしくラッピングしたものを籠に入れ、準備はオッケー。
約束の時間までまだ少しあるので、ミアに紅茶を淹れてもらう。
うん、美味しい。
前世ではあまり紅茶って飲まなかったんだけどね、転生先は飲み物といえば紅茶だから仕方ないのだけれど、飲み慣れてしまえば味の違いも自然とわかるようになるというもの。
自分で淹れると、同じ茶葉を使ってるのにミアみたく美味しくは淹れられない。
なんか悔しいから、練習してミア以上に美味しく淹れられるように……は多分無理。




