13
もうね、このお三方には今までに色々と恥ずかしい姿を見られてしまっていて、今更取り繕ったところで無駄ということに漸く気が付きましたよ、はい。
でも、なぜか皆は私のそんな姿を喜んでいるようで。
「私達しか知らないアビゲイル様ですわ」
「レアですわね」
などと、楽しそうに話している。
ローガン様は空気と化していたけれど。
あ、今の私も空気だから、仲間だわ!
……なんて、絶賛現実逃避中ですが、何か?
サミュエル様は数分ほど訓練場の様子を見られ、本日は忙しいのかそのまま訓練場を後にされた。
がっくりと首を垂れる私。
そうよね、団長様ともなればとても忙しいでしょうし、少しの間でも、たとえ遠目でも、顔を見ることが出来ただけでもラッキーだったと思わなければ罰が当たるわよね?
これ以上を望むのは贅沢というもの。
直接渡せないのはとっても残念だけど、ローガン様に本日の差入れであるフィナンシェを渡してもらうようお願いした。
「あまり長居するのもいけませんし、本日はこの辺でお暇致しましょう」
ミランダ様の言葉にハッとして顔を上げると、こちらを見ている皆の笑顔が何となくニヤニヤという言葉に置き換えられそうな気がするのは、気のせいだろうか……?
とりあえずローガン様に差入れを渡し、挨拶をし、訓練中の騎士様たちの邪魔にならないよう、静かに訓練場を後にする。
入口前に待機していた馬車に順番に乗込み、私の隣にマリー様、私の前にミランダ様、その隣にミレーヌ様が座る。
……馬車の扉を閉めた瞬間からお三方の表情が、気のせいではなく完全にニヤついたものになっている?
ちょっと待って? その顔、お嬢様がする顔じゃないよ?
そして寮に着くまでの間、私は皆に散々いじられるのだった。
 




