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いったいどうしてこうなった?
現在マリー様の手配した馬車に乗り、王城(の中の近衛騎士団宿舎)へ向かっている。
馬車の中には私とマリー様。
……と、ミランダ様にミレーヌ様。
あの後ミランダ様の「(自分の目で)見てみないことには何とも言えませんわね」の一言で、楽しみにしていた訪問にミランダ様とミレーヌ様が追加で参加されることになったのだ。
……別に二人が参加するのは構わないし嬉しいけれど、気を抜いたら自覚のない乙女な顔? を晒すことになるわけで、今日はサミュエル様に集中出来ないことが、少し残念だなぁと思っているだけだし。
仲の良い皆んなで出掛けることは、純粋に嬉しいのだ。
◇◇◇
「初めまして、マリーの一番上の兄のローガンです。以後お見知り置きを、綺麗なご令嬢方」
と、跪いて手の甲にキスを落として行くローガン様。
デジャブだわ。
私の時も確かこんな感じだった。
ブレないな〜、チャラ男兄ローガン様。
ミランダ様もミレーヌ様もうまくスルーしている様子。
マリー様のお兄様でなかったら、それはそれは冷たい視線が向けられていたことだろう。
ちなみにマリー様は、明後日の方を向いて現実逃避中だ。
前回同様、ローガン様に宿舎内を簡単に案内してもらい、訓練場へと向かった。
現在、訓練場内左側の階段状の所に腰掛け、近衛騎士様たちの訓練を見学させてもらっている。
意外にもミランダ様もミレーヌ様も、真剣に騎士様達の訓練を見つめ、ローガン様から説明を受けていた。
しばらく静かに見ていると、入口が何やら騒がしい。
もしやと視線を移せば、やはりそこにはサミュエル様がっ!
嗚呼、素敵すぎる! サミュエル様!
ウットリと見つめる私。
ハッと気付き、恐る恐る視線をサミュエル様から横に座っているミランダ様たちに向けた。
皆、生暖かいという表現がピッタリな顔で、私を見ている。
「あうぅ……」
思わず言葉にならない何かを口から発して挙動不審な私に、皆は引かずに優しく微笑む。
「間違いありませんわね。アビゲイル様、もう認めてしまわれた方が楽になりますわよ?」
ミレーヌ様が私の手を両手で包み、「ね?」と首を傾げながら言った。
とっても可愛いけれど、それとこれとは話は別だから!




