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ノア王太子殿下に手を引かれて、女子寮へと向かっている。
歩調はゆっくりで、私に合わせてくれている。
こういうところを見ると、ライアン殿下よりもよっぽど王子様だなぁと感じる(どっちもリアル王子様だけど)。
私的にはあと二十年老けていれば完璧!
まあ、サミュエル様には敵わないけれど。
……なんて、あまりにも予想外なことが起きるので、プチ現実逃避中だ。
半歩前を行くノア王太子殿下の背中をぼんやりと見ていると、不意に彼が立ち止まる。
「勝手に連れ出したりして、余計なことだったかな?」
苦笑気味に言われ、私は慌てて現実に戻り丁重にお辞儀した。
「い、いえ。余計なことだなんてとんでもないですわ。正直、あの場をどう収めたらよいか、私、本当に困っておりましたもの。感謝しております。ありがとうございました」
しばらくは色々言われるだろうが、ノア王太子殿下にあの場で私は被害者だと認めてもらえたことは大きい。
私に少しでも害のない状態での婚約破棄に、一歩近付いたと思っていいのかな? まだまだ先は長そうだけどね。
さて、これからドレスを着替えてパーティー会場へ向かったとして、多分終わりに近い時間になるだろう。
例え戻ったとしても、先ほどの出来事は確実に面白おかしく噂されている。
何だか色々と面倒臭くなって、このまま部屋で休むことにした。
ノア王太子殿下は残念そうにしていたけれど、あなたは早く戻って他の令嬢たちと踊ってあげて下さい。でないと、後で私が睨まれちゃうから!
……などということは、口には出しませんよ?
「送って頂きまして、ありがとうございました。パーティー楽しんで来てくださいませね」
寮入り口のガラス扉の前でノア王太子殿下を見送り自室へと戻ると、ミアが吃驚した顔をしながらも出迎えてくれた。
私のドレスのシミを見て更に吃驚してたけれど、そこは出来る侍女なミア。
すぐに何事もなかったような表情に戻り、淡々と私を部屋着へと着替えさせ、汚れたドレスを部屋から持って出て行き、マリー様たちにパーティーには戻らない旨伝えるよう手配してくれた。
そして少ししてから、私の大好きなフルーツサンドと、最近お気に入りのハーブティーを用意してくれた。
ミアのお陰で、部屋でマッタリと本を読みながら寛いでいる私。
色々あったパーティーだったけれど、途中までは皆と楽しい時間を過ごせたから、まあ良かったのかな?
……明日は皆さんから色々根掘り葉掘り聞かれそう(ノア王太子殿下のこととか)だけど、期待してもらうようなことなんて何もないけどね?
でも、今日は本当にノア王太子殿下には感謝!




