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パーティーはほぼ予定通りの時刻より開催された。
ホールの奥には数々の美味しそうな食事がブッフェスタイルで並べられており、飲み物も多数揃えられている。
マリー様たちと早速お皿にそれらを盛り付け、壁際の椅子が並べられた場所へと移動した。
何故って、ホールの中央には、周りの見えていない脳内お花畑なライアン殿下とシャルロットが、二人だけの世界にトリップしながら踊っているからである。
ダンスの腕前に関しては、王子様はきちんと教育されていただけあり素晴らしいけれど、このシャルロットは申し訳ないがあまりにも酷すぎた。
胸は開いておらず肩と首が若干前に出ていて(いわゆる猫背)、折角の王子様からプレゼントされた素晴らしいドレスも似合ってはいるが素敵に着こなせてはいない。
ダンスの練習をしているようには見えず、王子様の足を踏みまくったステップ。
かなりの確率で踏んでいるので、これが王子様の足を踏むゲームであれば高得点が見込めるだろう(※そんなゲームはない)。
そういった状況だから、悪い意味で目立ちまくっているのだ。
そんな中に私がダンスを始めてしまえば、格好のエサになるのが目に見えている。
殿下たちが踊っている今の内に楽しく美味しく腹ごしらえして、彼らが休んでいる間にダンスを楽しもうと、ホールに来るまでの間に皆で話して決めた。
本当にありがたい話だ。
ミレーヌ様とデザートを取りにブッフェに向かい、皆の元へ戻ろうとしていた時。
後ろでパシャッという小さな音が聞こえたように思い振り返ると、そこには空のグラスを手に固まるシャルロットの姿が。
……え? 何でここにいるの?
さっきまでホールの中央で踊ってたよね?
固まるシャルロットの目線を辿ってみると、私の淡い菫色のドレスの後ろ側、膝から下にかけてしっかりと赤ワインのシミが広がっている。
いきなりのことで思考が纏まらず、他人事のように、
『ああ、さっきのパシャッっていう音は、シャルロットのワインが私のドレスにかかった音だったのか〜』
なんて考えていた。
あれ? これって立場逆じゃないかい?
見る見るうちに顔が青ざめていくシャルロット。
「大変、ドレスにシミが……」
ミレーヌ様の言葉に被せるように、シャルロットが大袈裟なほどに怯えたような声で、
「も、申し訳ありません。決してわざとではなくて、本当にごめんなさいっ!」
と、それはもう土下座せんばかりの低姿勢で謝りまくってくる。
それはもう、まるで私が謝罪を強要しているかの如く。




