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文化交流会当日。
個展のように各教室には有名な画家や彫刻家、そしてジワジワと人気の出てきている方たちの作品が並べられている。
……この学園の生徒たちのためだけに。因みに気に入れば購入も可である。
貴族の子息令嬢たちが多く在籍するこの学園は、前世の時のように学生が準備をすることはない。
警備やその他諸々全て学園側が手配している。
あくまでも生徒は鑑賞する側なのである。
(パーティーだけは生徒会が準備を行ってはいるけれど)
そしてホールでは交響楽団によってクラシック音楽が奏でられており、オーケストラを楽しむことが出来る。
そして夕方からは同じホールで、生徒会が手配した別の交響楽団の演奏でパーティーが始まるのである。
「そろそろホールでオーケストラを楽しみませんか?」
ひと通り作品というより、作品をみている子息令嬢たちの反応を見ていたマリー様(さすがは商人向きと言われるだけあります)が、満足そうに微笑みながら言った。
最初に私が、続いてミランダ様とミレーヌ様も笑顔で賛成の意を表し、お嬢様特有のゆったりした歩調でホールまで向かう。
ホールに並べられた椅子は七割ほどが埋まっていて、オーケストラを楽しんでいる人や、多分芸術に興味がなく居場所がないのでここにいるだろう人や、完全に寝ている人など様々で。
「後ろの方になってしまいますが、あの辺りに致しましょう」
比較的空いている場所を差して、ミランダ様を先頭にそちらへと向かう。
演奏の邪魔にならぬよう、静かに座席に腰を下ろし、オーケストラに耳を傾けた。
この世界で音楽といえばクラシックのみで、J-POPやロックやジャズなどはない。
けれども慣れてしまえば、クラシックも十分に楽しむことが出来るようになった。
前世では聞こうとも思わなかったのに。
充分にオーケストラを楽しんでから、今日は時間がないので食堂でお昼を頂き、寮に戻って夕方からのパーティーに向けて支度を始める。
ドレスを着るには色々と時間が掛かるのだ。
今日のパーティーは学園内のものなのでまだ良いが、本格的な社交界のパーティーに出る時などはほぼ一日がかりになることも。
何にしても、ミアのような侍女たちには大変な仕事である。
屋敷のように使用人が何人もいるわけではないので、一人で全てをこなさなくてはならないのだ。
ミアの鬼気迫る姿に口を開かずに言われる通りに動き、ようやく完成したのはパーティー開始の三十分前である。




