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【書籍化&コミカライズ】悪役令嬢はオジサマに夢中です  作者: 翡翠
第二章 白馬のオジサマ登場
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7

 (にわ)かに入口の辺りが騒がしくなり、そちらに目を向けると。

 そこにはなんと、私が恋い焦がれたお方、近衛騎士団長であるサミュエル・トレス様のお姿がっ!!

 嗚呼(ああ)、どうしよう? 手の震えが止まらない。

 サミュエル様の姿を瞳に捉えた瞬間より心臓が早鐘を打ち、緊張が一気に高まり、そしてサミュエル様から一瞬たりとも目が離せない。

 入口の所で騎士と話を……あ! 今笑った!?

 笑うと年齢より少し若く見える。

 生サミュエル様は、あんな風に笑うんだ……。

 柚月の時は、ゲームの中でしかサミュエル様の姿を見ることは出来なかった。

 しかもメインキャラじゃないから、その姿も本当に少しだけ……。

 でも今、私の瞳に映るのは、意思のあるリアルな一人の男性で。

 どうしよう……。もっと近くで貴方を見てみたい。

 もっともっと色々な表情(かお)を見せて欲しい。

 一目見るだけでいいと思っていたはずなのに。


 サミュエル様は訓練場の中に入ると、早速騎士たちの指導を始めた。

 一人一人の動きを観察し、どこが良くてどこが悪かったのか、時に厳しく、そして的確に。


「騎士の皆様、とても嬉しそうですわね」


 マリー様が呟くと、視線は前に向けたままローガン様が、


「俺も含めて、皆団長を尊敬し憧れてるからな。そんな人から直接指導してもらえるんだ。そりゃ嬉しいさ」


 そう言いながら、騎士たちを羨ましそうな目で見ていた。

 きっと参加したいんだろう。

 だから、思い切って聞いてみた。


「ローガン様、訓練に戻られますか?」

「え?」

「ローガン様のお顔に、自分も指導してもらいたいと書いてありますわ」


 ローガン様は恥ずかしかったのか、思わず頬をかきながら目線を彷徨わせる。


「参ったな、そんなに分かり易かったかい?」

「ええ、とっても。うふふ」


 大きな身体だけれど、その姿はとても可愛らしいと思う。

 とはいえ、私が好きなのはオジサマなので、恋愛的要素は全くないけれど。

 ローガン様はバツの悪そうな顔をして、


「降参。悪い、訓練に戻るわ。マリー、気を付けて帰れよ。アビゲイル嬢、また遊びに来て下さい。では」


 と、凄い勢いで訓練に参加しに行った。

 そんなローガン様の背中をマリー様は呆れるように見送りながら、


「お兄様ったら、もう。アビゲイル様、申し訳ありません」


 と頭を下げた。


「そんな、頭を上げて下さい。マリー様が謝罪されるようなことは何もありません。忙しいところを無理言って案内して頂いて、謝罪しなければならないのは私の方ですわ」

「いえ、お兄様のことなら全く気にしないで大丈夫ですわ。いくらでもこき使ってやって下さい」


 真面目な顔でそんな風に言うマリー様に、つい笑ってしまうのだった。

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