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目の前にはスラリと背の高い、所謂細マッチョと言われるイケメンが立っていた。
マリー様は目がパッチリの可愛らしい系だけれど、お兄様の方は少しつり上がった涼しげな目元の凛々しい顔つきをされている。
近衛騎士団、聞いていた以上にイケメン率高し!
入隊資格にイケメンの項目があるのでは、と本気で思うくらいに。
マリー様に紹介して頂いたので、お兄様にしっかりとご挨拶しなければ。
「ただいまご紹介頂きました、アビゲイル・クラークと申します。どうぞよろしくお願い致します」
……あれ? 何の反応もない?
目の前のお兄様はジッと私を凝視していて、難しい顔をしている。
もしかして私、何かやらかした?
「あの……?」
不安になって声を掛けてみると、彼はハッとしたように、爽やかな笑顔を浮かべ、
「ああ、済まない。これは聞いていた以上の美人さんだね。改めまして、マリーの一番上の兄、ローガンです。以後お見知り置きを」
と跪いて手の甲にキスを落とした。
……是非とも二十年後の貴方にお会いしたかった。
その後、マリー様とローガン様に宿舎内を案内してもらい、訓練場の前へとやって来た。
中からは激しく剣のぶつかり合うような音が聞こえてくる。
「席に案内するから、ここからは静かにして下さいね」
ローガン様の言葉に顔を縦に振って返事をする。
中に入ると広い訓練場の中では、あちらこちらで激しい訓練をされている。
訓練場を入って左側の壁面部分は階段状になっており、場内を座って見ることが出来る作りのようだ
その中央部辺りに腰掛け、少し見下ろすような形で騎士たちの練習を見学させてもらう。
汗だくになりながらも真剣に訓練される姿は、素晴らしいの一言に尽きる。
ただ残念なことに、肝心の団長様は訓練場内には居られない様子。
絶対に会える保証があったわけではないし、会えたらラッキー的な部分が大きかったので、残念だけれど仕方がない。
もう少しだけ見学させてもらったら、差し入れだけお渡しして、今日は諦めて帰ろう。
帰りの馬車の中でマリー様に、次に来られる時にまた同行させてもらえないか聞いてみよう。
そうして私が諦めモードに入った時。




