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「分かっとるから、もう何も言わなくていいからな!!」


 まさかの認めない宣言!? と顔色を青くする私に、お父様は慌てて否定した。


「違うぞ? 反対している訳ではないからな?」


 では何故? という顔をしている私を見て、大きな溜め息を一つついてから、お父様は普段の威厳は何処へ行ったとツッコミを入れたくなるほどにしょんぼりと肩を下げて言った。


「あの馬鹿との婚約がなくなって、お前を嫁に出さずにいられると思って喜んでいたのに。……目の前であんな風に仲睦まじい姿を見せつけられたら、断るわけにもいかんだろう? お前にはいらぬ気苦労を掛けてきた分、幸せになって欲しいのだよ。まさか私よりも年上の、しかも近衛騎士団長を連れてくるとは思わなかったがね」


 フウと一つ息を吐き、そしてサミュエル様に射抜くような鋭い視線を向ける。


「あなたの人柄は存じている。だが、この場できちんと、あなたの口から聞きたい。あなたは、この子(アビゲイル)を、幸せに出来るのか?」


 応接室にいる全員の視線が、サミュエル様に向けられる。

 彼はクラーク侯爵の目を真っ直ぐに見つめながら、


「誰よりも、幸せにするつもりです。私の一生をかけて、守ります」


 そうはっきりと宣言してくれた。

 私の目からは洪水のように涙が次々と溢れ、サミュエル様はそんな私に気付くと先ほどまでの凛々しい姿が嘘のようにわたわたと慌てられて。

 そんな姿を見たお母様は可笑しそうにコロコロと笑いながら、


あの(・・)近衛騎士団長をこのように慌てさせられるのは、世の中広しと言えどもこの子(アビゲイル)だけね」


 と言って、私の小さな(と言っても八歳ですが)可愛い可愛い弟はソファーから立ち上がると、ビシッとサミュエル様に指を差しながら、


「お姉様を幸せにしないと、私がやっつけに行きますからねっ!」


 と可愛いことを言ってくれました。

 でも、人を指で差すのはだめですからね?

 シナリオではお父様とお母様と、この可愛い弟から見放され、僻地の修道院へと送られ、散々な一生を終えるはずだった私。

 破滅ルートを回避出来ればラッキーくらいに思っていたけれど。

 大切な友人も出来て、彼女たちのお陰で無事その破滅ルートを回避出来ただけでなく、まさかこんな幸せを掴むことが出来るだなんて、思いもしませんでした。

 サミュエル様は私の手を握ると、優しい眼差しで見つめられて。


「あなたには随分と可愛いくて立派な騎士がついておられるのですね」

「ええ、自慢の弟ですわ」

 

 弟だけでなく、お父様もお母様も、みんな私の自慢の家族です。

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