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朝起きたら見たこともないような、めちゃくちゃ豪華な部屋のベッドで寝ていた。
慌ててベッドから飛び起きると大きな姿見の鏡が視界に入り、その鏡の中ではこの世のものとは思えぬほどの壮絶美少女がこちらを見つめていた。
「……」
右手を上げてみる。
鏡の中の美少女はこちらを向いて左手を上げている。
変顔をしてみる。
鏡の中の美少女もこちらを向いて変顔をしている。
右手の人差し指を鼻の穴に突っ込んでみる。
鏡の中の美少女もこちらを向いて左手の人差し指を鼻の穴に突っ込んでいる。
「どないしよ。コレ私やん」
何故か怪しい関西弁で呟く私。
夢かと思って、思い切り頬を抓ってみたが、普通に痛かった。
どうやら夢ではないらしい。
鏡の中に映る、この超絶美少女が私であることに間違いないようである。
陶器のように美しい白い肌。
髪はサラサラの腰まで届く銀髪。
大きくて少しつり目がちなくっきり二重の瞳は紫水晶のように輝き、睫毛は上に爪楊枝が何本乗るだろうかと思うほどに長い。
唇はぷるんとしており、整った顔は小さく、大きな形の良い胸に、折れそうなほどに細いウエスト。
スラリと伸びた細い手足に形の良い爪。
ナルシストな人の気持ちって、一生理解できないって思っていたけど。
今ならめちゃめちゃ気持ちが分かる。
「ずっと(鏡を)見ていても飽きないわ」
変顔しても美しい顔って、本当にあるんだ。
飽きるほどに自分の姿を堪能した後、今現在、自分の置かれている状況を考えてみる。
私の名前は神田 柚月十七歳。
制服が可愛いと評判の、西条学園の二年生。
その制服を着るために、めちゃくちゃ頑張って寝る間も惜しんで勉強し、受験という戦いに勝ったのだ!
制服はとっても可愛いが、それを着ている私は極々普通の中の中な容姿であって、決してこんな超絶美少女ではなかったし。
中堅サラリーマンの父とパート勤めの母との三人暮らしで、家はこじんまりとした四LDK(庭なし車庫なし)で、こんな豪華な部屋はなかった。
この状況はいったい……?
ベッドの縁に腰掛けてボーッと考えていると、扉をノックする音が聞こえ、誰かが部屋の中に入って来た。
歳は十八歳くらいだろうか?
ちょっとキツそうな派手めの顔立ちをしており、金髪をスッキリと纏め、メイド服のような物を着ている。
何だろう、これ。コスプレ?