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少女は蝶々になれたらとただ願うだけ -1



~ある地下施設にて~





暗い廊下をロウソクに火を灯し歩く男がいる。


コツ・・・コツ・・・コツ・・・・・


その足音は鉄格子に遮られた部屋の前でピタッと止まった。



「・・・調子はどうだい?」


「・・・大丈夫です」


「良かった。明日の朝食は何が食べたい?」


「食べれる物なら何でも」


「そうか。ならシチューにしよう」


「ありがとうございます」


「今日は何人程訪れたんだい?」


「20人程」


「それは大変だったろうに。珍しい訪問者はいなかったのかな?話を聞かせておくれ」


「別に。普通の方ばかりでした。いつも通りです」


「そうか・・・。なあリン」


「はい」


「兄妹なんだし、敬語はやめないか?」


「ごめんなさい」


「・・・いや、すまない。いつかまた昔のように君が心を開いてくれるのを待つ事にするよ」


「ごめんなさい」


「いいんだ。じゃあまた顔を出しに来るよ」


リンと呼ばれた女の子は男と会話している間も男の方は見向きもせず四六時中天井に空いたわずか20cm程の穴をじっと眺めていた。

男は用を済ませるとまたロウソクの火をたよりに元来た廊下を戻ろうとする。


「お兄様」


「ん?何だい?」


男は嬉しそうに振り返る。


「私は・・・・・、いえ、やっぱり何でもありません」


「そうか。ではまた来るよ」




天井に空いた小さな穴からはキレイな月が見える。今日は満月だ。

鉄格子の中の女の子は月を見ながら、ポツリと一滴の涙を零すのだった。







---------------------------------------------------------------------------------




「ひええー!誰か助けてくれーーーーーーーーーーーーー!!」



ルイは酒場を後にし、紫苑の森へと向かっていた。

森へは割と距離があった為馬車を利用し向かったのだが、何故か森に近づくのは頑なに断られ途中で半ば強引に降ろされてしまった。

歩くしか手段のなくなったルイは森へ向かう途中草むらで休憩をとっていた。気づかぬうちに眠っていたようで、起きたら約100体のゴブリンの集団に囲まれていた。

そして今に至る。


(紫苑の森っていうのがどんなとこか分からないからな。あんまり体力消耗したくなかったけど)


ルイは追われていたゴブリン達の方に体の向きを変える。


「エンチャント!プロミネンスソード!」


背中の青い剣を構えると剣に赤色の炎がまとわりついた。


「せやっ!」


ゴブリンは魔物の中でも弱い方なのでルイは次々と炎剣で切っていった。

あっという間に80体ほど倒し、残った20体はルイに恐怖を覚え、目の前にある森の中へと走って逃げ去って行った。

ルイは剣の炎を取り除くと背中にしまった。


「いつの間にか着いてたんだな。全然気付かなかった」


目の前には薄気味悪い森が広がっている。

ルイは躊躇もなく森へと入っていった。

マスターから貰った地図を見ると、森のど真ん中に祭壇はあるようだ。

横の方に走り書きで、中心に行けば行くほど木の大きさが小さくなっていくからそれを目安に、と書かれていた。

ルイはとりあえず真っすぐに進んでいく事にし、いつ魔物に襲われるか分からない為警戒しながら歩いていた。

しかし森に入ってすぐのとこで小型の魔物等には遭遇したものの、中心に向かえば向かう程魔物は出現しなくなっていった。


(おかしいな、こんなに魔物がいないなんて。違和感を感じる)


違和感に気持ち悪さを覚えながらも木の小さくなる方へ黙々と道を進んで行き、日が落ちる前に祭壇へと辿り着いた。


(二日、三日かかると思ってたけど案外すんなり着いちゃったな。運が良かったか?)


ルイは直径20m程の上から見ると丸い形をした祭壇へと上がった。

祭壇の周りには柱が4本たっているが、他は何もない。

祭壇自体もただの平ぺったいコンクリートがあるだけで、他は何もない。


「祭壇っていうから何か祀ってあったりするのかと思ってたけど何にもないな」


ルイは祭壇の中心へと行き


「目的地に着いたぞ!よーし、やるか!」


と一息気合をいれ地べたに座りドンと構えた。

しかし10秒程の沈黙。そして



「ん・・・?何をやるんだ?」



ルイはマスターに肝心な事を聞いていなかった。

冷や汗が大量に流れる。


「どうしようどうしようどうしよう!これはマズった・・・。まず第一に森のど真ん中にあるこの祭壇にさぁかかってこいと都合よく人が待ち受けてる訳がない!何であの時気付かなかったのか・・・」


ルイは案外自分がドジである事を同時に実感し、少し凹んだ。


「うむ~・・・引き返すにもあまりに遠いしな・・・」


中々意を決する事ができず一人ウダウダするルイであった。

しかしこんなことしてても埒が明かないとバッと立ち上がった。


「戻るか・・・思い出せばマスター俺を引き留めてた気がするし多分何か知っ」


祭壇を後にしようとした所で


「・・・・・・・・・す。・・・・・・・か?」


微かだが女の子の声が耳に入った。


「?声が聞こえる。何だ?あの端の辺りかな?」


祭壇の端の方へ歩み寄るルイ。


「・・・?ここからだ!穴があいてる!」


しゃがみ込みその穴の方へ耳を澄ませた。

すると穴の下の方からハッキリとした声が聞こえてきた。








「私が癒しの巫女です。私に御用ですか?」






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