準備を整えて -2
「インドラ、私と一緒に戦ってくれますか?」
雷神インドラはヒヒィーンッと大きな声で返事をするとリンの前に立った。
基本的に召喚魔法で召喚されたものは言葉を交わさなくても、召喚者と意思がつながっている。
例えばリンが頭の中で右へ動けと念じれば、それに従い右に動く。自由に戦えと念じれば、それに従い自由に戦う。戻れと念じれば、それに従い役目を終え、消える。
ただ、これの対象として適応されるのは先ほどルイが言っていた契約を終えたものだけである。
召喚魔法で召喚されるのは実際に存在する生物の思念体である。なので、どれだけダメージを受けようと実物の方にはダメージがなく、戦闘不能になろうと思念体がただ消えるだけとなる。
ではどういう原理でその思念体が動いているか。それは単純で、召喚者が実物の方へ魔力を送り続け、実物の方が遠いどこかから自分の力を具現化しているのだ。
この理論により、先程の契約が必要となる。
実物のものと契約を交わさないと、例え詠唱をし魔力を送られても、何故お前の為に自分の力を具現化しなければならない、とこういった話になるのだ。
(インドラの情報が私の頭に流れてくる…。よし、ルイさんに一泡吹かせてやります!)
「インドラ、雷撃!」
リンが命令するとインドラは頭の角に電気を流し、ルイに向かって突っ込んでいく。
ルイはそれを剣で受け止める、が
「いててて…。効くな~」
インドラの攻撃を受ける事は出来たものの、剣を伝って電流がルイの手へと流れた。
ルイの袖先が焦げている。
それを見たリンは
「ル、ルイさん!大丈夫ですか!?」
リンはルイの姿を見て躊躇してしまった。
インドラもそのリンの脳内とリンクし、同じく躊躇してしまう。
それをルイが見逃す訳がない。
「せいやっ!」
ルイは剣でインドラの角を弾くと空中で一回転し強烈な回し蹴りを放った。
インドラは大きな木に叩きつけられてしまう。
「インドラ!」
リンがインドラに駆け寄っていく。
インドラは痛む様子を見せながらも再度立ち上がる。
「リン、それじゃあダメだ。インドラはお前の意志で動いている筈だ。リンが強い意志を持ってインドラを動かさないと、せっかくの大きな力が持ち腐れになるぞ?」
「うぅ…」
ルイが軽く指導をすると、遠くから
何もしないといったではないかー!卑怯者ー!
そうだそうだー!卑怯者ー!
とガヤが聞こえた。
ルイは小さくあいつらうるせぇ…と呟くとリンとインドラの方へ歩み寄る。
「まだやれるか?」
「…まだ頑張れます!ね?インドラ?」
リンに言われると返事するかの様にブォン!と返す。
「それじゃあ次は俺に一番強力な一撃をくれないか?あいつらうるさいし」
「分かりました!…でも」
「でも?」
「ルイさんは大丈夫なんですか?」
リンが心配そうな顔でルイを見上げた。
「リン、外に出てきたばっかでまだ経験不足のお前にアドバイスをやるよ」
「何でしょう?」
「いいか?今から俺達が向かう所は戦場だ。そのリンの優しさが戦場では何か仇となるかもしれない。さっきも同じだ。俺の心配をして躊躇しただろ?あれを戦場でやったらリン、お前の身が危ないんだ」
「…はい」
「リンが凄く優しくて良い子だってのは俺は分かってる。でも戦場での相手は俺じゃない。知らないどっかの誰かだ。相手からしてもリンの事をそう思うだろう。相手はリンが優しい子なんて知らないし、知ったこっちゃないんだ。戦場ってのはそういうモンなんだ。だから…自分の身を大事にすると思って今後は気をつけられるか?俺からのお願いだ」
「…分かりました。意識して頑張ってみます」
「うん、良い子だ」
ルイはそう言うとリンの頭を撫でる。リンは顔を赤くしながら俯いた。
その一部始終を見ていたインドラはそうだぞ、と言いたげに小さくブォンと吠えた。
「よし、じゃあ続きいこうか!」
「ルイさんホントに良いんですね?最後の確認です!」
「ああ、ドンとこい!」
ルイはインドラから距離を取り、また剣を構える。
「インドラ!私の持ってる最大魔力をあなたに注ぎます!力を貸してください!!」
インドラはブオオオオ!!!と答える。
「行きます!!!インドラ、サンダーボルト!!!」
リンが声を上げるとインドラは体毛に帯びていた電気をすべて角に集中させた。
そしてその電気は大きな青白い塊となりルイの頭上へと放たれた。
「…思ったよりヤバイかもだな…。エンチャント、アースソード!!」
ルイの剣に岩の粒が付着し、石の剣の様になった。それを頭に持っていく。剣を盾として使うつもりの様だ。
そしてインドラの放った青白い塊がルイの頭上でドガーンッ音を立て凄まじい雷を落とした。
ルイはそれを真正面から受け止める。
あまりの光と衝撃と音にリン、ジーク、サクラは腕で顔全体を覆った。
事が終わると、ルイがどうなったのか安否を確認する為に3人は腕を降ろしルイの方を見る。
するとそこには
「…とんでもない一撃だった。マジックバリア張ってなかったらヤバかったかな」
無傷のルイが立っていた。
リンは安心と魔力の放出による疲労が重なって、膝から崩れるようにその場にペタリと座った。
それと同時にインドラも光の粒となってスーッと消えていく。
「リン、良かったぞ。あれなら波大抵の奴らなら100%で一撃だ」
「ルイさん、なんで無傷なんです?」
「そりゃあ色々したからな。何も無しにまともに受けてたらいくら俺でも流石に死んでたわ」
「流石ルイさんです…」
「お前の方がよっぽど凄いから。回復魔法が出来て?あんな強力な召喚魔法が使える?聞いた事ないわ!」
「…でも…少し疲れちゃいました…」
「リンはここまでだな。これ飲んで木の陰で休んでな」
ルイは懐から魔力回復の薬をリンへ渡す。
「よーし、次はお前らの番だぞー!こっち来ーい!!」
遠くに聞こえる様にルイが声を出す。
そしてジークとサクラは互いを見て少し頷いて立ち上がった。




