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朧の里 -2




「ん~~~、ここはハズレかなぁ?フヒヒ」


巨人は崩れおちた家の中を大きな手でガサガサと漁っている。


「や、やめろ!!!」

「ん~?何だお前はぁ~?」

「貴様っ!よくも私の家を!!」

「なぁんだ~ガキンチョかぁ~~、ムシムシ~」

「貴様だけは許さないぞ!」


サクラは懐から二つのクナイを取り出した。

そしてそれを巨人の両目にめがけて放つ。



「ん?なんだぁ?うっ......!いってぇええええ!!!!」


眼球には当たらなかったが視界を封じる事に成功した。

巨人は目から溢れ出す血を両手で必死におさえている。


「今の内に母さんとトモエを助けないと!母さーーん!!!トモエーーー!!!返事をしてくれーーーーっっ!!」


サクラは無我夢中に瓦礫を漁る。

すると、


「お...ねぇ......ちゃん......」

「トモエ!?何処だ!何処にいるのだ!」


無我夢中に探すと血だらけの小さな手が瓦礫からはみ出していた。

サクラはすかさず近寄り、トモエを瓦礫から引っ張り上げる。

出血はしているものの命に関わる様な大きなケガはしていなかった。

それに安心したサクラは続いて母を探し出す。

母はトモエのすぐ近くに倒れており、トモエと同じ様に瓦礫から母を引っ張り上げた。

母も大きな怪我はしていなかった様だ。

だが母は足を捻挫した様で上手く歩く事ができない状態だった。

とりあえず二人の生存を確認でき安心したサクラはスッと立ち上がる。


「お、おねぇちゃん?」

「......トモエ、母さんを連れて里の外に逃げるのだ」

「何言ってるのおねぇちゃん!そんなのダメだよ!!」

「言う事を聞くのだ!!あの巨人はもうすぐにでも私に襲い掛かる!」


トモエと母は巨人の姿を初めて確認した。

巨人は両目に付いた血をゴシゴシと手で拭いていた。

もう少しで拭き終わりそうだ。目が見える様になればサクラに襲い掛かるに違いないだろう。


「あんなの...あんなのに勝てる訳ない!おねぇちゃんも一緒に逃げようよ!」

「ダメだ。あいつが私を狙って追いかけてきたらお前達まで巻き込まれてしまう。それだけは絶対にさせない!」

「おねぇちゃ「いいから早く行くのだ!!!」


サクラが珍しく声を張り上げた。

トモエもこんな姉の姿を見た事がなく思わずポロッと涙を流す。


「トモエ、お前は私並みに強い。いや、むしろ私を超えているかもしれない。お前なら母さんを守れる。お前が母さんを外に逃がしてやるのだ。これは任務。お前が小さい頃から憧れていた任務だぞ?人生初の重大任務だ...できるな?」


トモエは涙を手で拭いた。

そしてゆっくりと立ち上がり、背中から刀を取り出し右手に持つ。

左手で母を持ち上げ背中に背負った。


「...おねぇちゃん!約束だからね!絶対に里の外でまた会うんだからね!」

「ああ、約束だ!川のほとりで落ち合おう」

「うん......。負けるなお姉ちゃん!!!」


トモエが走り出した。

サクラも背中の刀を手に持つ。


「私は次期伝道者だぞ?負ける訳にはいかないのだ!!!」






「良くぞ言ったサクラよ!!!」



気付かぬ内にサクラの横に現・伝道者のザド師匠が立っていた。


「ザ、ザド師匠!?」

「遅くなったなサクラ。もう大丈夫じゃ。大方ピエロ共も片付けたわい。残るは恐らくこのデブッチョだけじゃ。まぁ...悲しい事に里の半数以上はやられてしもうたがの...」

「何をさっきから呑気に喋ってるんじゃゴラアアアアア!!!!!クソガキィィィ!!てめえ許さねえぞォォォォ!!!」


巨人が復活した様だ。

巨人の額には多くの血管が浮かび上がり、相当怒っている事が分かる。

ドスッドスッと大きな音を鳴らしながらサクラ達の方へと歩み寄ってくる。


「サクラ、共闘じゃ。お主は右からゆけ。ワシは左からまわり込んでこやつの右腕を落とす」

「分かりました!私は隙をついて左足を使えないものにします」

「よし、ゆくぞ」


サクラとザドは同時に駆け出した。

巨人の目の前ギリギリまで一瞬で移動し、同じタイミングで左右に分かれる。

そして打ち合わせ通りサクラは右へ、ザドは左へまわり込んだ。


「ちょこまかとうぜええなアアアアアア!!!」


巨人は二人の迅速なスピードに対応し、右手でザドに殴りかかり、左手でサクラを掴みにかかる。

ザドは素早い身のこなしでそれを避けたが、サクラは捕まってしまう。


「こやつ...!ただのデカブツって訳じゃあなさそうじゃ」

「つ~かま~えたああああ!!!」

「くっ!!離すのだっ!」

「や~だぴょ~~ん!このまま握り潰してやるよおおおお!!!」


巨人が右手に力を込めていく。


「くっ...!あぅ......!」

「サクラ!」


ザドはサクラに呼びかけると同時に胸の前に両手を組んだ。


「焼肉になるがよいわ。火遁 ”落火球らくびきゅうの術”」


すると、巨人の頭上から無数の火の玉が出現し、次々と降り注いだ。


「何だ何だあああ!?あちいぃぃぃ!!あちいいよぉぉぉ!!!!」


いてもたってもいれず巨人はサクラを手放し、走り回る。

服に火が移り、その熱にやられている様だ。

転げ落ちたサクラはすぐにまた戦闘態勢へと戻る。


「流石師匠!」

「これぐらい朝飯前じゃよ」

「てめえら調子に乗りやがってェェェエエエ!!!!」


やっと服から火を消す事ができた巨人はさらに怒りが増す。

しかし、何かに気付いた拍子に巨人は急にスッとおとなしくなった。


「ん?なんじゃ?」

「何か不気味ですね」


少し経つと巨人は急にニヤリと笑みを浮かべ始めた。


「お前......この里の伝道者って奴だろ?」

「さっきから何なのじゃお前は」

「お前...!お前......!おまえええええええ!!!!!!お前が伝道者かあああああ!!!!探す手間が省けたぜェェェ!!!!」

「......師匠、あいつの狙いは師匠のようです」

「みたいじゃな。ワシなんかに何の用か知らんが」

「クヒヒヒッ!クヒヒヒヒヒヒッッ!!!」


巨人の不気味な笑みが止まらない。

サクラとザドはさっぱり理解できず、何をされても対応できるようにより一層集中力を高める。

不穏な空気だけが漂うのだった。




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