暴走と二つの剣
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「新しい依頼だ」
「・・・分かった。どこに行けばいい?」
「ターゲットは少し前にグラードを出た」
「グラード・・・訓練基地だったか」
「ああ、そこの総責任者がターゲットだ。仕事を放棄して脱走したらしい」
「脱走?とんだ責任者だな」
「どうやら新ギルドのメンバーに抜擢されたらしいぞ?」
「ギルド?私達と同じか?」
「いんや、世間一般のギルドはモンスター退治だの荷物運びだのお遊びごっこみたいなのばっかだ。俺達は違うだろう?」
「そうだな。ここまで人の命を軽く扱うギルドなんて滅多にないだろうな。全くイカれている」
「おい、口を慎め。お前に立場なんてものはないんだ。分かってるな?」
「・・・すみませんでした」
「お前の活躍にこっちも注目置いてんだ。おとなしく依頼だけをこなしてればいいんだよ」
「今回の達成金は?」
「10万ギルだ」
「!それは少なすぎやしないか!?」
「文句あるのか?」
「くっ・・・、分かった。行ってくる」
「それでいいんだよ。あ、あと」
「何だ?」
「前みたいな事しでかしたらもう只じゃおかねえ。今回も同じ様な事をしたら次こそ・・・」
「分かった!ちゃんとヤる!だから・・・頼む」
「ふん、せいぜい頑張るんだな」
気味の悪い仮面を被った人間が依頼の詳細の紙を持って部屋から出て行った。
「くくく・・・ははは!ギルド側に190万ギルでお前の取り分は10万ギルって話だけどなあ!哀れだなあアイツも。なんかギルメンみんなで美味いもんでも食いに行くか~。もちろんお前ぬきでな~」
イスに座っていた人間は扉の方を向きながら笑っていた。
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「ようやく落ち着いたって感じだな」
「ですね」
「ダメだルイ。まだ僕は立ち直れない。思い出しただけで吐き気を催す」
ルイ、リン、ジークの3人がイスに座ってコーヒーを飲みながらくつろいでいた。
しかしジークは気がすぐれない様子だ。
「・・・何があったんだよジーク」
「からかうな。僕をからかうな」
「ダメですよルイさん!あんなにジークさんは走ってくれたのに」
「リン、キミは本当に天使だ」
「ごめんジーク、来る前に気付けば良かった。そこまで頭がまわってなかったんだ」
「分かってる。しょうがなかったんだ」
「まあ気付いてたけど」
「ルイ!キミってやつは!!!」
「ルイさん!」
ルイは後ろに顔を向けながら笑うのを堪えていた。
訓練基地グラードから脱出してから早くも4日経った。
3人は脱出したのちとりあえず近くの町に避難した方が良いと判断し、ジークの道案内で近くの町へと移動した。
移動には3日かかった。
馬だけで移動ならまだ良かったものの馬に3人も乗るはずがなく、ジークが走り担当になった。
ルイがたまに変わろうかと声をかけてはいたが、王国兵の訓練を受けてきた事に依る意地なのかジークは大丈夫と言い走り続けた。
途中で野宿を挟みながらも、なんとジークは3日間走りとおしたのである。
流石に休憩が必要だと判断したルイとリンは午前中に到着したのでとりあえず一日休息の日にしようと決め、ルイとリンは観光がてら町を散策し、ジークは一日宿で休む事になった。
そうして1日が終わり、今3人は起きたばかりで部屋の中で宿のモーニングとコーヒーをいただいていた。
「今日はどうするんですか?というかジークさんはもう大丈夫なんですか?」
「うん、大丈夫だ!ありがとうリン!」
「ジーク!?本当に大丈夫なのか!?」
「ルイは本心で言ってるようには思えないね」
「で、今日はどうしましょうか?」
「リン。行動を起こす前にまず確認しなきゃいけない事があるよね?」
「・・・そうでしたね」
リンとジークはルイの方へと目線を向けた。
「ルイ、何が言いたいか分かるよね?」
「ルイさん」
「グラードでの暴走の事だよな?」
「うん。君はあれがどういった現象なのか理解できているのかい?」
「そうだな・・・おおよそ50%程は把握しているつもりだ」
「その50%の内容を教えて欲しいです」
「・・・分かった。まず1つ、あの状態になった時の俺は普段の俺の倍以上の力を得る」
「普段の倍以上って・・・とんでもないね」
「2つ、瞳の色が真っ赤になる」
「確かに赤くなってました。まるで鬼を宿したかのようでした」
「3つ、自分をコントロールできなくなる。そして事が終わった後に徐々に暴走していた間の記憶が戻ってくる」
「そう・・・でしたね」
リンは少しほっとするのだった。
自分が突き飛ばされた理由が本人の意思ではなかった事をちゃんと確認できたからだ。
「リン、あの時は・・・ゴメン」
「いいんです。大丈夫です」
「4つ、これが最後なんだが発動条件について。今分かってるのは恨み、怒りがどっかの境界線を越えると勝手に発動する。もう1つは・・・」
「それ以外にあるのかい?」
「・・・俺、剣2本持ってるだろ?」
「青の剣と赤の剣だね」
「ああ。青の剣はブルースフィアって言うんだ。これは母さんから譲ってもらった剣で絶対に無くすなって言われてる。後、この赤の剣なんだが」
ルイは部屋の壁にたてかけてある剣を指さした。
「あれはネオエンシェントって言うらしい。らしいっていうのは剣に彫ってある文字をそのまま名前にしただけだからなんだ」
「それはどこで手に入れたんですか?」
「・・・顔も知らないクソ親父からの譲りもん。家から出ていくときにいつか俺にって置いてったらしい。で、こいつなんだけど」
ルイがイスから立ち上がるとネオエンシェントを片手に取った。
そしてしばらく立ち尽くす。
「・・・あの~、ルイさん何して「俺の瞳を見ろ」
リンとジークがルイの瞳を見ると、いつもの黒色の瞳が赤色へと変色していた。
「・・・!ルイ!どういう事だ!?」
「まあ待ってくれよ」
ジークが珍しく声を荒げた。
そしてルイはゆっくりとネオエンシェントをまた壁に立てかけた。
「・・・色が戻ったね」
「これがもう1つの発動条件だ。この剣を手に持つと強制的にあの状態になる。20秒ぐらい持つのは大丈夫だ。瞳の色が変わるぐらいですむ。30秒持つとアウト。自我がなくなる」
「そうか・・・これは恐ろしい剣だ」
「因みに俺以外の奴が持っても何も起きないから安心しろ。ネオエンシェントの秘密を親父が握ってるはずだから、いつか必ず見つけ出して聞き出してやる。そしてできれば・・・」
「できれば?」
「この力を自分のものにしたいよな」
そう言うとルイは笑みをこぼした。
「おおよそ分かりました。私達にできる事があればなんでも言ってください」
「またルイが暴走しそうな時は僕が止めてみせるよ」
「ありがとな。俺も暴走しないように気を付けるから。暴走したらジーク、また強烈な腹パン頼むな?」
「了解」
3人はルイの秘密を分かち合う事でまた結束力を固めるのだった。




