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銀髪美女



闘技都市 ファイトネス


ルイが船で到着した都市だ。ここは主に闘いが盛んな都市で名が通っている。

人口は約50万人とまあまあの数の人が住んでおり、闘いが盛んな分やはり必然的に男性が多い。

どこにいても近くに酒場があり、大男達がガヤガヤと飲んだり食べたりする光景がみられる。

みな本気で自分の強さを誇示している為、闘いに関してはスポーツ同様本気で取り組んでおり、都市の中で喧嘩が起きようものなら全員で止めにかかり、正式な場所、正式なルールを用いるよう強制するぐらいだ。

そんな都市に見た目が細身のルイが歩いていると若干アウェイにみえてしまう。




「みんなデカい・・・」


港を後にしてからルイは観光がてら商店街の中を散策していた


「へ~噂通りホント男ばっかだな。もっと若い女の子とかいたら華やかになるのに」


ルイは頭に両手を組みながらゆっくり周りを見物していた。


「しかし男だらけであっても野菜やら果物はちゃんと充実してる。おっ、これとか美味そう。おっちゃん、これ一つ」

「あいよ。100ギルね」

「はい100ギル。サンキュ」



ルイは購入した真っ赤な果実をガシュッと大きく一かじりし、片手でそれを空中で回転させながら散策を開始した。

すると少し遠くで騒ぎになっているのが聞こえてきた。


「なんだなんだ?」


集団の中を多少強引に人を掻き分けて先を覗いてみた。


「泥棒!泥棒だ!!誰か捕まえてくれ!」


年配の男性が道の先の方を指差しながら叫んでいた。

先の方をみるといかにも自分泥棒ですよ感まるだしの赤いバンダナを巻いた男が風呂敷に大量の食物を抱えて走って逃げている。


「おほ、なんか王道の展開だな」


ルイはそれを見ながら感心していた。

既に泥棒は50m程先にいる。


「これぐらいの距離なら」


そう言うとルイは年配の男性の肩をポンと二回叩き、残った果実を近くにあったゴミ箱に放り投げ腰を低くし踏み込む構えをとった。

そしてビュンという音と共に物凄いスピードで走り出した。

50m...40m...30m...

とぐいぐい泥棒との距離を縮めていく。

しかし後20mの所で異変が起きた。


「!?」


ルイは何かが自分の横を通り過ぎて行った様な気がした。

そして辿り着いた頃には泥棒は首元に槍の矛先を突き付けられ、膝を地面につけながら両手を挙げて降参のポーズをとっていた。


「相手が悪かったわ。観念なさい」


目の前にはサラサラの銀色の髪の毛を腰の下当たりまで伸ばした美女が堂々と立っていた。


(・・・この子、俺より速かった)


脚力には少し自信があるルイは表情にはだしていなかったが内心かなり驚いていた。

それもそのはず。ルイは決して遅くはなかった。彼女があまりにも速すぎたのだ。


光速に近いスピードで走り抜けた彼女はその勢いで起きた風が原因で他の店の者を少々荒らしてしまい、店主達に頭を下げていた。


「わ、私とした事が・・!す、すいません」

「いやいや、泥棒捕まえたんだから偉いじゃないか。みてたよ?凄い速さだったね。お手柄お手柄!」

「そ、そんな。・・・へへへ」


否定しながらも彼女は満更でもない様子だった。

そして、用事があるのでと彼女はそそくさとその場を後にした。

今あった光景に少し唖然としていたルイは一言呟いた。






「・・・・・早速見つけた」







________________________________







ルイは銀髪の女性のありかを求め酒場へと足を踏み入れていた。

ルイは酒場へ入るとカウンターへ座った。





「マスターさん、ホットミルクを頼むよ」

「はいよ。砂糖いれるかい?」

「うん、たっぷりいれてくれ」



ルイはかなりの甘党である。食べ物も飲み物も甘いものを特に好む。

旅に飴を持ち歩いているのも納得だ。

ルイは片足を大きく上げ足を組み、右肩を前に出した。



「マスターさん、ちょっと聞きたい事とかあるんだけどいいかな?」

「ん?こんなおじさんで良ければ何でも答えるよ」

「さっき商店街の方で泥棒が出没したんだけどさ、そん時に物凄い速さで泥棒をとっ捕まえた女の子がいたんだよ。その子がどこの誰かが知りたいんだ」

「ふむ...。何か特徴とかは?」

「銀髪ロングの美女だったな。あと槍を扱っていた」

「うーむ...分からないなあ。この都市は闘いを好むものばかりだから男ばっかなんだ。だから綺麗な女性なんていたらたちまち噂が広がるからすぐ情報が入ってくるはずなんだがね」



話をしながらスッとだされたホットミルクをルイは飲み始めた。



「あちちっ」

「ははは、ゆっくり飲みなさんな」

「そっか、知らないかー。さっき強引にでも引き留めるべきだったかな」

「因みに君は何故その女性を探しているんだい?」

「ん?強そうだったから」

「?理由になるのかねそれは?」

「仲間が欲しいんだ」

「仲間?」

「仲間。しかもめちゃめちゃ強い奴」

「へ~仲間ね~、仲間って言っても色んなのがあるんじゃないのかな。友達?旅のお供?はたまた王国への反乱軍とか?」



マスターはルイの言う「仲間」が何か気になり興味津々に話を聞いていた。



「俺が求めてる仲間はそんな小さいのじゃないんだ。一緒に依頼をこなしたり、仲間が困っている時は助け合う。そして色んな困難をみんなで乗り越えて、終わった後の夜は宴をしたりするんだ。そして依頼をこなすうちにどんどん知名度が上がっていってどんどん有名になる。同時に自分達の強さも知れ渡る。そうなったら最強を名乗るんだ。そうなるまでの過程も含めて想像しただけですごく楽しそうだろ?」


「はっはっは!楽しそうだ。で、結局のところ君の求める仲間とは?」




「ギルド。強い奴のみを選抜して集めた、世界一の移動式最強ギルド」





ルイはフフンとした顔をしてマスターに答えたのだった。



「なるほど、良い夢だね。大体町に一つから三つぐらいはギルドが存在してるものだからね、ギルド志望者はそこへ入会するのが基本だ。だから一からギルドを作り始める人なんて初めて見たよ。応援したいもんだ」

「マスターも強いんならいれてやるよ」

「バカを言いなさんな。・・・ふむ、だからこの闘いの多いファイトネスに最初に出向いた訳だ」

「そゆ事~」

「さっきの銀髪美女の話だが・・・もしかしたら」

「ん!?」

「この都市ファイトネスの中心にはね、大きな闘技場があるんだ。そこで年に二回行われる超武闘大会が丁度明日あるんだ。もしかしたらそれにでる為に銀髪美女さんはこの都市に来たのかもしれない」

「それホントか!?」

「もう受付はとっくに終わってるから参加はできないけど見に行く価値はあるかもしれないね」

「絶対見に行く!じゃあ今夜はこの都市に泊まらなきゃいけないな、すぐ宿を探しに行こう!マスターありがと!また!」



ルイはそう言うとホットミルクのお代を置いてそそくさと出て行こうとした。



「あ!待ってくれ!君の名前だけ教えてくれ!」

「俺はルイ。ルイ・クローバーだ」

「ルイ君か、仲間集め頑張るんだよ!」

「あいさ!」



「行ってしまったか。・・・・・ん?クローバー?どっかで聞いたような・・」



マスターが頭を5秒ほど掻いてからハッと何かを思い出した。





「そうか!思い出した!クローバー!・・・ルイ君はキミの子か。思えば目尻がキミにそっくりだ」


マスターは店の右端の上の方に飾ってある10人の人間が立って並んだ写真を見上げて懐かしいな、と一人呟くのだった。






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