表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/64

ごめんなさい

言葉が分からないなら覚えればいいのだー。

「よく来たなぁ、二人の勇者よ。」


いかにも王であると言った、身体の数倍ある威圧感···を欠片も持ち合わせていない薄っぺらな王が、そんな自分を少しでも大きく見せようと高みから声をかけてくる。


「此度の訪問、さぞ疲れたであろう。ただ、しばし我の話を聞いて欲しい。」


こう言うタイプが一番先に仲間を裏切るのだ、魔王軍ではこんな奴は即刻首を撥ね飛ばしていた。


「時は昔、遥か数千年の事だ。」


脳内で五体ぼど王を切り飛ばした辺りで委員長の様子に気がつく。

委員長は日本語への翻訳を止め、こちらを頬を少し膨らませて見ている。


「私、雷君の為に翻訳して上げてるんだけど。」


どうやら、俺が全く話を聞いてない事がバレてしまったようだ。


こりぁ、あとで土下座だな···


俺は硬く決意した。


                       ◆◇◆◇◆◇◆


あれから俺達は王に休みを貰った、この世界の事を少しでも理解してほしいからとかなんとか。

まぁ、委員長はすぐに出て行ったが俺はそうもいかない。


用意された無駄に豪華な部屋に引きこもり、本に書かれた文字を正確に写していく。


この間にこの国の言語を覚えなければいければ、俺は全くの役たたずなのだから。


「あー、hnqsilが食べるで、wtqz56Hrpが話すか」


本来委員長だけを連れて行くはずだった魔法に無理やり割り込んだ俺は、魔法陣に組み込まれていた魔法がかかっていない。

その中には言語翻訳などもあり、同然俺にはこの国の人間が何を言っているのか解らない。

だが、総司令将だったころは敵国の内情を詳しく知るため、一度に何ヵ国もの言語を覚えた事もあった。

その時に比べればこんな事、楽なものだ。


「フゥ、大分分かってきた。」


この調子で行けば、あと一日もあれば完璧に覚えられる。


「失礼します。シーツのお取り替えに参りました。」


丁度メイドがやって来た。


ここのメイドは王の趣味なのか、スカートがかなり短い。普通の高校生ならば喜ぶところなんだれうが、生憎人の裸どころか中身まで見飽きてる俺としては悪趣味だとしか言い様が無い。


「ありがとうごさいます、いつもご苦労様です。」

「···!、いっいえ、仕事ですから···」


どうやらこっちの言葉は通じたようだ。


メイドは急いでシーツを代えると、そそくさと出ていった。


···何はともあれ、言葉が通じただけでも良しとしよう。


再び視線を本に戻し、集中力を高めていく。




「···雷君、雷君てばっ!」

「···ん?」


委員長が帰って来ている。

窓の外を見ると、夕日が沈みかかっていた。


「雷君、あまりやりすぎると身体に悪いよ。」

「分かってるよ、委員長」


この身体じゃあ何年動かなこうが、何も問題は無いけどな。


「それで?何か用か」

「用が無きゃ来ちゃいけない?」


委員長は妖艶に微笑む。


···最近委員長のイメージが崩れまくってんだけど。


「俺さ、委員長ってもっとお堅いイメージあったわ」


ペンからインクを拭き取り、書き上げた紙をまとめながら話す。


「俺なんかよりずっと頭良いし、しっかりしてるし、クラスの奴から頼られるし、なんつうか真っ直ぐって言うか···」 


魔王様の下へ帰ることを諦めた俺には、彼女のような人間は苦手な部類だった。


「そっそんなことないよ」


指で毛先を弄りながら、彼女は下を向く。


「私だって嫌いな人には親切には出来ないし、好きな人には優しくしちゃう。皆の前じゃあカッコつけてたけど、今の私には何も無いから私自身でいられるだけ」


彼女の顔は、どこか切なく、どこか楽しそうだ。


「そっか。···ところで委員長、ちょっと報告したいことが···」


この国の言語を完璧にマスターしました!


「私も雷君に貰って欲しい物があって」


貰って欲しい物?引導かな?


「じっ実は、この一週間国立魔道具研究所って所に行ってて、とある魔道具を作って貰ったの」


おや、銃でも作っていたのかな。


「べべべ別に深い意味は無いんだけど、この形が最適って言うか···」


委員長は恥ずかしそうに小さな黒い箱を渡してくる。

箱は横に切れ込みがあり、開くようになっている。


「開けていいのか?」


委員長はこくりと頷く。


中に入っていたのは無駄な装飾の無いシンプルな指輪だった。


「えっと···これは?」

「···翻訳機」

「えっ」


マズイ


「だから、翻訳機!言葉が分からないって大変そうだから作って貰ったの!!」


···これは、まさか二度目の土下座するパターンか。


「あー、委員長。その···とっても有り難いんだけど、なんつうか···覚えちゃった」


委員長は首をコテンと傾げる。


「···?何を」

「この国の言語」


そう言ったとたん、委員長はふらふらと壁に寄りかかり座り込む。


「そっ、そんなぁ···」


本当にごめんなさい。



何とか委員長を慰めていると、メイドに呼ばれた。


「あの、失礼ですが、私の言っている事が分かりますか?」

「はい、分かりますよ」


メイドは目を丸くして驚く。


「でっ、でしたら、王が二階の王の間に来て欲しいと」


前回の続きでも話すのだろうか?


俺は委員長を呼ぼうとして止められる。


「王は、雷様一人で来て欲しいと」

さすがにまたあの意味の無い文字列を使うのはダメかなぁと思いました。

次回もまたお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ