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勇者なんてやるわけねぇ!

賛美、非難、両評価ともお待ちしています。

「遂に追い詰めたぞ、魔王!」


そう叫びながら勇者は聖剣を構える。


「···来てしまったか、勇者。」


魔王は悲しそうに呟いた。


「この世界の平和の為に、お前を倒す!」


勇者の姿が霞み、一瞬で魔王に近づいたかと思うと空気を裂くほどの斬撃が魔王に向かう。


「フッ」


だがその一撃は魔王の持つ魔剣によって阻まれる。


「やるな、勇者。」

「黙れ」


それからは凄まじい攻防の嵐だった。両者が両者の速度を超えて切り、払い、刺し、弾く。勇者の聖剣は魔族にとって最大の毒であり、当たるどころかかするだけでも致命傷に成りうる。だが魔王の魔剣も総勢千人の呪術師が掛けた呪いの力があり、刃に触れた者の生命力を吸い取ってしまう。

まさに、勇者対魔王の最初で最後の戦いだった。

この世に一つしか無い剣同士の幾度と無い弾きあいが続き、爆発が吹き荒れ、ほんの数ミリ魔剣にひびが入る。


「そこだぁぁぁー!!」


勇者は飛び上がり、己の全てを剣に込める。すると聖剣は光り輝き、一条の光となる。


「人間を、舐めるなぁぁーーー!!」


勇者の一撃は、魔剣を砕きその身を切り裂こうと一層光を強くする。


『エアバレット』


何者かが突如魔王の前に現れ、魔王に魔法を放ちその身体を後ろへ吹き飛ばす。


「なっ!」


乱入者によって魔王を逃した剣は、そのまま乱入者に降り下ろされる。


「スライっ!」


魔王を助けたのは、魔王軍総司令将スライ·カルファングだった。

スライは勇者最大の一撃を受け瀕死の状態だ。

魔王はすぐさま倒れたスライを抱き起こし、その傷の深さに愕然とする。


「スライ!起きろスライ!お前は我の後を継ぐ者だ、我より早く死ぬなど絶対に許さぬぞっ」


魔王にもスライが助からないことは分かっていた、だがそれでも叫ばずにはいられなかった。


「魔···王、様···」

「スライ···不死身の魔将とも呼ばれたお前が、こんなところで死ぬな···」


魔王は悔やんだ。

時間が掛かるからと、回復魔法を覚えてこなかった自分を。

国の統治が忙しいからと鍛練を怠った自分を。

自分の夢の為に大切な仲間を殺した自分を。


理性を失い、暴走しかけている魔王の腕をスライは震える手で掴んだ。


「魔王···様、私のことは、もういいのです。私は···貴方に大切なものを、沢山貰った。大切な命を、大切な仲間を、大切な国を、そして···命を懸けて守りたいと思える、大切な主人を。」


魔王の目からは、涙が流れていた。


「最後に···貴方を守れてよかった···」


太陽暦4725年4月26日、不死身の魔将と呼ばれたスライ·カルファングはその一生を終えた。


魔王は優しい手つきでスライを床に寝かせ、無言で待っていた勇者へ頭を下げる。


「家臣への手向けの時間、感謝する。···まったく薄情な奴じゃ、主人を置いて勝手に死におって···あやつは家臣失格じゃ」


折れた魔剣が、魔王の心に共鳴する。


「スライ、おぬしは今から我唯一無二の友だ」


魔王は折れた魔剣を構え、勇者へと立ち向かった。


                      

                      ◆◇◇◆



「魔王様っ!!」


男はベッドから飛び起きる。

だがそこに、剣を構えた魔王はいない。

辺りを見回し、自分が誰なのかを思い出す。


「はぁ···はぁ···また、あの時の夢か···」

<注意>夢オチではありません。


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