表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/30

第六章 c


獅子王と二人、ターミナルの職員に案内されて会場の入り口に立つ。

「あまり、肩を張らなくても良いぞ。なに、私が付いている。それに立食パーティーだ。多少の無礼とて目を瞑るさ」

何よりも心強い言葉に閃助は息を吐き、落ち着く。

「これでも昔は敵国に、赤い鬣の闘神とまで呼ばれていたのだぞ? 不安などしなくて良い。いいな?」

「わかった。あと良かったら後でその話聞かせてほしいな」

閃助がそう言うと獅子王はしまったなと困り顔を作る。

「いずれ、話すときも来よう。さあ、いくぞ」

獅子王がそう言うと獅子王の背よりもはるかに高い扉が開く。

会場を包む拍手が反響して大気を震わせる。その勢いを真正面から受けた閃助は思わず心臓が高鳴り固まってしまう。

だが、そんな事お構いなしに獅子王は歩き出す。はっとして遅れては不味いと閃助は気合を入れて獅子王の隣を歩く。

すると辺りから閃助の事を噂する者たちの声が耳に入る。

あの者が獅子王様の養子で次期国王候補なのか。噂に違わぬ美しい黒髪だ。背は低いが見た目は悪くない。どこの馬の骨ともしれぬ小僧をあの獅子王が。

賛否両論、手放しに迎え入れてもらえるとは思っていなかったが、実際に貴族達に口々に噂されていると思うと全身に理解できない痛みが広がる。極度の緊張だろうと頭では理解できても心が付いてこない。

しかし、本能にも近い意志が閃助の体を動かし、獅子王の隣から遅れる事は無かった。

壇上に上がりホールを見下ろすと、ゆうに百は超える数の種族の貴族達の目が獅子王とその養子、閃助に向けられた。

逃げたしてしまいたい気持ちを抑えて獅子王の方へと視線を移すと、獅子王は堂々たる風格で一歩前へ出て咳払いをする。

「今日は皆、良く集まってくれた。私から礼を言おう。いつもの如く、私はあまり話す事は得意ではない、それは皆も承知だろう。故に簡潔的に行こう」

獅子王は一呼吸おいて一瞬だけ視線を閃助に移す。

「まず、今回の飛空艇ターミナルの完成の件だ。各方面で尽力してくれた者たちには惜しみない賞賛と礼を送ろう。この場に居合わせていない者も含めて、ありがとう」

そう言うと貴族達は拍手をして獅子王と同じく、尽力した者達への賞賛をおくる。

「今回のパーティーにはベリセル皇国の第一皇女のアルトネーア姫をお招きしている。是非楽しんでいただきたい」

アルトネーアはスッと立ち上がり会場の貴族たちに向けて一礼する。辺りの貴族達は口々にアルトネーアを褒める様な言葉を口にして、微笑みかける。

「さて、次は、皆が気になって仕方ないだろう所だ」

閃助は静かに息を吐き出して心を決める。

「私の少し後ろに居る者は先日、私が養子として迎え入れた、正真正銘の私の息子だ」

その言葉に会場がざわつく、誰もがそうだろうと分かっていても、獅子王の口から聞いていなかった以上信じがたい所もあった。

「名は巷ではレグルスと噂されているようだが、それは愛称の様なものだ。最も本人はさほど嫌がっていると言う訳ではないがな」

ニヤリと笑う獅子王の横顔に閃助は声には出さなかったがやってくれたなっと心で口にして唇をきゅっと結ぶ。

「うむ、では、皆グラスを手に持て」

会場の誰もが近くのグラスを手に取り、獅子王の方へと向ける。

「交易の要、飛空艇ターミナルの完成を祝い、乾杯!」

獅子王の音頭に続き皆がグラスを掲げて音を鳴らす。

「さあ! 私の話は以上だ、皆楽しんで欲しい」

振り返り獅子王は壇上に背を向けて閃助の前に立ち肩を叩く。

「ここからは大変だぞ、脅すつもりはないが貴族の者達も閃助がどう思おうとコネを作るために、あわよくば娘を嫁がせるために声を掛けてくるぞ」

発破をかけてくると笑う獅子王を見て貴族たちにばれない様にため息を吐く。

その後、獅子王共に檀上を下りて一番近くのテーブルから水の入ったグラスを手に取り口を付ける。

閃助が息を吐いている間に貴族の一人が獅子王へと挨拶しに来ていた。

「この度は飛空艇ターミナル完成パーティーへ、お呼びいただきありがとうございます」

「うむ、そう堅苦しくなくともよかろう、寧ろ誰も彼も固くなられては私が敵わんよ」

気さくに言うが本音だろうと閃助は内心苦笑していると、閃助にも声がかかる。

「初めまして、以前より獅子王様からは良くしていただいております。私、ナーシトバと申します。以後お見知りおきを」

ナーシトバと言う貴族が閃助に声を掛けたのを皮切りに、我先にと閃助へと近づき声を掛けて行く。そうなってはもはや収拾がつかない勢いで閃助は質問攻めにされる。

見たことも無い種族の青年が獅子王の養子となったのだ。これが気にならない貴族は居ない。結局そのまま日が暮れるまであれやこれやと話をし続ける事になった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ