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第四章 c


昼食を終えてユーナと別れて、教室に戻りながら話していると中で、閃助の前に千穂が現れた。

「やっと見つけた」

何故か疲れ気味の千穂、メリーシアとウェルヘンは転校生が来たと聞いていたが、情報が乏しく二人して顔を見合わせていた。

「疲れているみたいだけど、何かあったのか?」

それを言うとだるそうな表情を浮かべた千穂はため息を吐いて閃助の傍による。

「えーっと、彼女は?」

完全に蚊帳の外扱いされたメリーシアだが、比較的大人の対応をすることが出来た。

「ああ、俺の友人で、苗咲千穂って言って光龍の娘だ」

光龍の名前が出て目を丸くする二人。

「じゃあ、貴女が噂の光龍様が溺愛しているって言う」

千穂はそこでようやくメリーシアの方へと視線を向ける。

「貴女は?」

「あたしはメリーシア・アスプール、よろしくね」

「さっき閃助の言った通り、千穂って呼んでいいから」

ちらりとウェルヘンの方へと目配せする千穂。

「君は?」

急に声を掛けられて驚くウェルヘンだが、咳払いをして手を差し出す。

「えっ?ああ、僕はウェルヘン・ハイヤー、閃助とは昨日からの知り合いだ」

千穂はウェルヘンの差し出した手を握ることなく淡々と言葉を口にする。

「そう、私は千穂、握手はあまり好きじゃないの、ごめんね」

そう言われて手を引き、ウェルヘンは難しそうな顔で自分の手を見つめていた。

「それはそうと、千穂は何かあったのか?」

空気を換えるべく閃助は話を再開する。

「あー、ちょっとね」

あきれた風に頬を指で掻きながら視線を晒す。

「まあそれは置いといて、閃助は何処のクラスなの?」

「俺は階段を上ったすぐの所だけど」

「あっ!じゃあ隣のクラスなんだ」

嬉しそうにニコニコする千穂、それに一瞬むくれた顔をするメリーシア。

「そう言えば朝のあの歓声は千穂が転校してきたからか」

合点の良く内容に一人頷き、納得するが、隣ではあきれた顔でたははと笑う千穂。

「まぁ、嫌な顔されるよりは全然良いんだけど、ちょっとね」

確かに思う所は閃助にもあった、もう少し落ち着けはしないのかと。

立ち話をしていると校内に備え付けられた予鈴が鳴り響く。

「もうこんな時間か、じゃあ千穂また後で」

「うん、後でね、閃助」

手を振って走り去る千穂の背中を見ながら閃助も手を振る。

「すごく仲良さそうだけど、どういった知り合いかしら」

興味ありげにメリーシアが閃助に問う。

「昨日から城にしばらく住む事になってね」

「随分急な話じゃない?」

「そうだけど、ややこしい事情が多いらしい」

昨日の晩に獅子王に話を聞いてヴィジョンドラゴンの事は理解したつもりだ。

実際問題として光龍が討伐する以上関わりない話なので不安にさせる必要もないだろうと切り出すつもりはなかった。

「確かに光龍様の娘さんだものね」

「ところで、光龍さんの娘ってそんなに噂があるの?」

先ほどから光龍の娘と良く口にしている所から察するにある程度は噂があるのだろう。

「ええ、あの光龍様がって言う、過保護エピソードなら割と有名かしら」

「参考程度にどれくらい物か聞きたいな」

「二人とも話はほどほどに」

突然話に割り込んでくるウェルヘンだが冷静に閃助は腕時計を見る。

「確かに、これは不味い」

次の科目まであと数分も無い位に時間が押している。

「本当?」

「とりあえず急ごう!」

「ええ」

「次はキザキ先生だから遅れたら大変だぞ!」

思い出したように発破を掛けるウェルヘンの背中を追う様に走る二人。

何とかギリギリ間に合いはしたが閃助は光龍の過保護、もといい溺愛エピソードを聞き逃してしまった。

席について息を吐くと同時にキザキが教室に入って来た。

「全員居るなー、居ない奴は返事しろー」

それから十秒ほど待つ。

「はーい、欠席なしっと、じゃあ始めるぞ」

誰からの返答も受け付けず授業が始まった。

その後、数分遅れで教室に潜り込もうとした生徒が居たが即発見され、問答無用に教室の前に立たされて出てくる問すべてをその生徒にぶつけると言う職権乱用にも似た制裁が行われた。


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