第二章 h
「ここね。えーっと、皇立アルテ学院だったかな」
学院の制服を着た、長い黒髪に藍色の様な瞳、背は低めだが女性的なスタイルの魅力的な少女。
光龍と共に旅を続けていた、原種の跡の無い、純粋な人間の少女。
「よーし、ちょっと見学させてもらいましょう」
意気揚々と校門の柵に手を掛けて軽々と昇り飛び降りる。
「うーん、やっぱりスカートだとひらひらして邪魔だよね」
スカートの裾を掴んでひらひらとどうした物かと見て、ぱっと手を離して。
「まっ、いっか。さーて、探検、探検!」
些か、淑やかさには欠けるが気品を感じさせる歩き方、幼い頃より光龍に躾けられていた結果である。
彼女が校内を歩いていると鐘が鳴った。
授業の終わりを告げる鐘、それに彼女は困った顔をした。
「誰かに見つかると不味いよね」
と言いつつも隠れる気など毛頭なく変わらず腕を後ろに組んで校内を探索している。
「やっぱり、皇立なだけあって、綺麗な作りしてるなぁ」
そして、行きかう生徒の中に、目に入った、黒い髪の青年、初めて見るその姿に目を丸くした。
「嘘、嘘、嘘、なんで? お父さんと一緒に旅してた時も見つからなかったのに」
初めて、いや、正確には十数年ぶりに見る、同じ髪の色をした人を。
曲がり角に消えて行ったその青年の後を追う、話がしたかった、顔を見たかった、もしかしたら、会えるかもしれない、あの人と。
走り出す、時折学院生徒と肩がぶつかったりするが気にしていられなかった。
見失う訳には行かない、絶対に!
そう思うと走る速さが徐々に増していく。
引き留めたい、あの青年を。
曲がり角を曲がり、さほど遠くない所に居る青年の肩を掴む。
青年は一瞬体をこわばらせてから振り返った。
「ちょっと、話したいんだけど」
息を切らせ顔を上げると、驚いた顔をした青年が居た。
「君は……?」
どこか、あの人に似た顔の青年、そうきっとこのくらいの年齢のはずだ。
「苗咲 千穂、貴方は人間なの?」




