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第二章 f

「ドラゴンの肉ってありますか?」

ここ最近で一番食べている肉ならばそうそう変な物は出てこないだろうと踏んでの質問だった。

「ドラゴンの肉なら、あばらの肉のステーキと首肉の蒸し焼きとありますよ」

獅子王が好きな翼のつけ根の肉は無いらしく、閃助も獅子王がそればかり好んで出すよう指示するモノだからここに来てから翼のつけ根の肉を食べた回数は断トツで一番で、閃助も食べ慣れた物があればそれに越したことはないと思っていたが、そこまで甘くなかった。

しかし、あばら肉のステーキと首肉の蒸し焼き、部位ごとに肉の種類分けはされているが明確な名称が付いていない所を考えるとそこまで味や食感に大差はないのだろうかと首を傾げる。

とりあえず、あまり食べられないであろう方を選んでみる。

「じゃあ、首肉の蒸し焼きとパンがあれば二つください」

「はい、ちょっと待っててね」

熊の見た目のおそらく女性が厨房に注文を回すとこれまた瞬く間に出てきた。

「はい、お待ちどうさま」

速さの割に綺麗に盛り付けられた肉とバスケットにいれられた二つのパンを持ち、列を抜ける。

食費は学費に含まれているという事を獅子王が先に伝えていてくれた事に感謝しながら振り返る。

「閃助君は先にユーナの所へ行ってあげて」

「分かった」

メリーシアが背を向けるのを見てから閃助はあの鮮やかな赤い羽の少女を探す。

あれだけ目立つと簡単に見つかる。

食堂はテラスもあり、そこのテーブルを陣取り、日の光が鮮やかな赤を照らし、その羽を振っている。

「こっちこっち!」

ユーナを見つけ閃助はそこのテーブルに腰を下ろす。

「メリーシアちゃんは?」

「後から来るって」

「そっか、じゃあ待ってよっか」

ユーナは机の上に乗せた羽を交互にパタパタと上げ下げしている。

太陽の日に当てられ赤く艶やかに輝く羽が美しい。

「ユーナの羽って鮮やかで綺麗だね」

閃助は上げ下げされる羽を見ながらそう言った。

思いもよらなかった言葉にユーナは固まり動きが止まり、その動きに閃助の背中に冷たい汗が流れた。

羽を触れてはいけない話だったかと獅子王やメロットから聞いた話を思い出していくが、全く記憶にない。

種族によっては触れてはいけない原種の跡と言うもがあるらしく、そういう話は慎重にするようにと言われていたが、あまりの美しさに思わず口にしてしまった。

閃助の心配をよそにユーナはちらりと閃助を見て、すぐさま視線を逸らす。

「あ、ありがと」

照れくさそうにユーナは閃助にそう言った。

予想外の回答に閃助は目を丸くして、ユーナを見た。

「いや、ただ思ったことを言っただけだから、気を悪くして無いなら良かったよ」

ユーナは羽を机の下に隠して顔を閃助から背け、その横顔から見える頬は赤く染まっていた。

「ユーナ、閃助君待った?」

タイミングよくメリーシアが現れ、ユーナの隣に座った。

「あれ、ユーナちょっと赤いよ?」

ぴょんと飛び跳ねそうなくらいにユーナは驚き、すごい勢いで顔を振る。

「そそそ、それより早くご飯食べよ!」

メリーシアは不思議そうな顔をしたと思ったら閃助の方を見て合点がいったのか不敵に微笑む。

「閃助君は手が早いのかな?」

「変な事を言ったつもりはないけど、俺はただ綺麗な羽だなと言っただけだよ」

「閃助君は簡単にそう言う事、言っちゃうタイプの人かな」

「うっ、それを言われると口はあまり滑らない様に気を付けているつもりなんだが」

メリーシアの意図と閃助の理解が一致していない所を見るとなおさらそう言うタイプだとメリーシアは察した。

ユーナはうーうーと唸りながらメリーシアの肩を叩く。

「それは置いておいて、食事にしましょう」

「メリーシアちゃん、もっと早くそれ言ってよー」

スプーンを手に取りスープを楽しむメリーシアの横で、ユーナは両羽を合わせて祈りをささげる。

閃助はいつも通り手を合わせて。

「じゃあ、頂きます」

パンを手に取り食べやすいサイズにちぎり口にしながらフォークとナイフを手に取り肉を切り分けて行く。

メリーシアは閃助が食べるのを横目で見ながら皿に盛られたサラダを口にしていた。

「閃助君って、金色の鷲を信奉しているの?」

「金色の鷲?」

聞いたことの無い話に首を傾げる閃助。

「あれ? てっきりそうなのかなーって思ったんだけど違うんだ」

「ああ、頂きます、の事?」

「そうそう、あたしは違うから、していないけど」

「故郷の風習だよ、昔からだからつい癖でね」

獅子王にも聞かれた質問だった事を思い出して口角がきゅっと上がる。

「それってどういう風習なの?」

興味深そうにメリーシアが聞いてくる。

「そうだな、色々言われているけど基本的には、食事を作ってくれた人やそれを育てた人、それにその食事になったものへの感謝だと思うよ」

「すごくいい風習だね」

「ありがとう、そう言われると嬉しいよ」

「いえいえ、それに閃助君の事もっと知りたいしね、そうだよね、ユーナ」

もきゅもきゅとフィッシュサンドを食べている所に突然話を振られて慌てて首を縦に振る。

「うんうん、そうだと思うよっ!」

「確かに、珍しい風習とかも多いのかもしれないな、あんまり意識したこと無いけど」

自分の国の風習とかなんて意識することも少ない、こうして見知らぬ土地に来ることで違いを見つけて行くことで故郷の土地の事を良く知る事が出来るのかもしれない。

そう思うと若い頃に留学する人たちはこういう事を早く知ることが出来て、少しでも成長して故郷に戻ってくるのかも。

可愛い子には旅をさせろと言うのはそう言う事含んでいるのだろうか。

閃助は違う土地で生きて行くことで故郷の事をより理解できるのではないかと考えもしなかった答えを見つけられたと微笑む。

「この国ではそれぞれの風習とかはとっても大切だから、気を付けた方がいいよ。最も、他の種族なんだから知らなくて当たり前って考えがほとんどだけど、マナーって言うのは必要だからね」

「そうだね、まだまだ知らなきゃいけない事が多くて大変だ」

そのあともメリーシアとユーナと他愛も無い話をして、昼食の時間は終わりを告げた。

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