異世界転生者の旅立ち
俺の名は伊達顕生、そこら辺にいる一般の
高校生だ。いや、だったというべきか。
なぜなら俺はトラックにひかれそうに
なっていた猫を助けようとして、代わりにひかれてしまったのだ。
そして今俺は暗闇の中にぽつんとある椅子に座っている。
『待たせてすまない』
いきなり声をかけられ俺は辺りを見回した。
しかしそこには誰もいなかった。俺はびっくりしたのと同時に本当に俺は死んだのだと実感したのだ。
実は今まで俺は死んだということに対して受け入れ難かった。なぜなら俺は身体の自由もきき普通に行動することができたので、テレビのドッキリかなと思っている自分もいたのだ。
だが、この声の主が見えなくて、スピーカーもない、この空間で声をかけられるという非科学的なことが起きているのだから実感することができた。
その声は言った。
『君は伊達顕生で間違いないか?』
「はい、間違いありません。」
俺は自分でも驚くぐらい死を受け入れきれていない心で返事をできたことにびっくりした。
「あの、俺は死んだですよね?」
『ああ、確かに君は死んだ』
声はそこで一息ついて言った。
『だが、君は今まで良い行いをしてきた。だから私は君を別の世界に転生させようと思う。』
「そんなことしていいんですか?」
『ああ私は神だからな。それぐらいしてもなにもない。』
この声の主は神らしい。
『今言ったことで嫌なことはあるか?』
「いえ、特にありません。」
『そうか、あと君は何か望みはあるか?』
「困ることですか、え〜とその世界で不自由なく暮らせるならそれでいいです。」
『そうか、私からは君が別の世界で不自由なく暮らせる能力を与えてあげよう。だが君は本当に落ち着いているな。普通死んだら多少は怯えたりするのだが。』
「もう起きてしまったことはしょうがないです。」
俺はこんなことをカッコ良く言っているが、これから行く世界がどういうところなのかということに実際は頭がいっぱいなだけなのだ。
『そうか、あと君が行く世界では科学の文明は遅れている。その代わり魔術の発展が進んでいるので、気をつけてくれ。』
「俺も魔術は使えますか?」
『ああ使えるようにしといた。』
「ありがとうございます。」
誰でも一回は使ってみたいと思う魔術を使えるのだと思い声が弾んでいた。
『では、今から君を送る。心の準備はいいか?』
「はい。大丈夫です。」
俺は今になって自分が敬語を使っていることに気づいた。知らないうちに神様に敬意を持って接していたらしい。
そんなことを考えているうちに俺の身体は強い光に包まれた。
『では、幸運を祈る。さらばだ。』
俺は気づいたら草原で横になっていた。
俺はこれから生きて行くためには街に行かなければいけないと思い、このただ広い草原のどこに行けはいいのかと立ち上がって悩んだ。
そんなとき、急に女の人の悲鳴が聞こえた。
「誰か助けて〜」
声がした方に行くと女の人が明らかに山賊だと思われるやつらに追われていた。
助けようと思ったが、力がない。今の俺で突っ込んだら二人とも犠牲なる。
そんなことを考えていたら、女の人が山賊に捕まってしまった。
「殺しはしねえよ。ただ身ぐるみ全部いただいて奴隷商人に売るだけさ。」
がらの悪そうな声で山賊の頭みたいな奴が言った。
そこで女の人の顔がどんどん恐怖に包まれていく。
その顔を見て俺は助けたいと思った瞬間、俺は身体が勝手に動いていた。足元に落ちていた、石を掴んで
山賊の頭に投げていた。その石がすごく速く飛び山賊の頭に当たり一撃で山賊の頭は血を流して倒れた。
予想外のことで他の山賊は動揺していた。
女の人は山賊の頭の死体を見て気絶してしまった。
だが、俺は自分でもこんなに速く石が飛ぶなんて思っていなかった。
山賊たちは恐怖に怯え逃げて行った。
俺は女の人が目覚めるまでそばにいた。いつまた山賊がくるかわからなかったし、この世界のことも書いて起きたかったからだ。
やがて目が覚めた彼女は俺を見てびっくりした。さっきまで山賊に追われていたのに、いつの間にか知らない人が目の前にいたからである。
「あの、あなたは?」
「俺は顕生、伊達顕生だ。」
「ダテケンセイ?」
「そうだ。」
「あのさっきまで私を追っていた山賊たちはどうなったか知ってますか?」
「ああ、あいつらなら俺が倒してやったぞ」
「でもどうやってあなたはあの場にいなかったはずなのに山賊たちを倒したのですか?」
「ああそれなら石を掴んで思いっきり投げたらこんな威力が出た。」
「石を投げただけで?」
女の人はびっくりしたようで言葉が続いていなかった。
「あのもう一回石を投げて私にどういう風にやったのか見せてください。」
「ああ。」
俺40メートルの先にあった森めがけて投げた。石は1本、2本、3本と木を貫き森がに道が出来た。俺はこの結果に自分でも驚いた。
「あなたはとっても強いんですね。」
「ありがとう」
「助けてくれたので何かお礼をしないといけませんね」
「そんなお礼なんて」
「いや、助けてくれたのに何もしないのは気が進みません。」
「じゃあこの世界や国のことを教えてくれ」
「えっ、今なんて?」
「この世界と国のことを教えててくれって言ったけど。」
やっぱりこんなことを聞くのは不自然だったろうか?俺が悩んでいると彼女は言った。
「まさか、あなた別の世界からいらっしゃったのですか?」
「えっ!」
予想外の言葉に俺はびっくりしてしまった。
その俺の様子を見てエリカは言った。
「そうなのですね。やりましたついに私のご主人様に出会えました。」
「えっ、ご主人様?」
「ご主人様、申し遅れました。私はエリカです。」
彼女エリカはさっきから目が輝いている。
「ちょっと待ってご主人様ってどういうこと?」
「ああ、そのことは今からお話しします。」
エリカの話だとこういうことらしい今よりはるか昔この世界が魔獣や魔物で溢れかえっていたそのとき別の世界からやってきた勇者は人の街を襲おうとしていた魔獣たちを一人で倒して人々を助け、最後は力つき死んでしまった。そんな勇者にせめてもの感謝の気持ちで勇者のように異世界からやってきたものがいたならそのやってきたものが望むなら奴隷になるようにという古い戒律があるらしい。この戒律を破ると例え国の王であろうと捕まるらしい。
「でも、なんでお前は自分から奴隷になりたがるんだ?」
なぜ、エリカが俺は求めてもいないのにご主人様と呼んでいるかというとエリカは幼い頃からこの勇者に憧れており異世界からやってきた人を見つけその人の奴隷になろうと決意し故郷を出て旅をしていたところで山賊に襲われ今に至るらしい。
「だから、奴隷にしてください。」
こんなに可愛い子が奴隷になるのはとても魅力的だったが、法治国家の日本育ちの自分は奴隷などを従えてはいけないと思い、踏みとどまった。
「お前を奴隷にするわけにはいかない。」
「お願いします。なんでもしますから。」
エリカは泣きながら頼んだ。
「この世界のことや街のことなんでも教えます。」
それは俺にとって重要な情報だった。この場合奴隷にしてやるという嘘をついてあとで別れればいいだろうと俺は思った。
その思惑はすぐ打ち砕かれるとも知らずに。
「分かった。いいだろう。」
「じゃあ、この首輪をつけてください。これは異世界の人がはめるとそのはめられたものが奴隷なるという従属の首輪です。これは一度はめると外れません。あとこの首輪は必ず一人ひとつは持っています。人族でも亜人族でも。そしてこれをはめられたものははめたつまりご主人様の命令はなんでも聞かなければいけません。それを破ると首が締まります。」
「さらっと怖いこと言うな。」
「そうですか?私はご主人様の命令には決して逆らいません。ご主人様が望むなら夜の相手もいたします。」
それは魅力的だなとつい思ってしまった、自分の頭に喝を入れでは奴隷を解除するのは無理なのだなと思ってやめようと一度は考えたが、こんな可愛い子が奴隷になるのと色々情報が入るという誘惑に負けてエリカを奴隷にすることにした。
「分かった。お前を奴隷にするにはどうすればいい?」
「ええとこの首輪をはめて『このものを奴隷にする』と宣言してください。」
「分かった。」
俺は一息ついて、
『このものを奴隷にする』
その瞬間エリカの首元の首輪が光り少ししたら収まった。
「これで私はご主人様の奴隷ですね。ふつつか者ですがよろしくお願いします。」
エリカはとても嬉しそうだった。
「ああ、よろしく頼む。これから街に行こうと思うんだが、ここから1番近い街はどこだ?」
エリカは少し悩み、
「ここから1番近いのはカイナの街ですね。ここからクルメ鉱山跡の山道を通って10日ほどで着きます。そこでご主人様は何をするのですか?」
「装備品やこの世界でやっていくために仕事を探す。」
「それなら冒険者ギルドがいいですよ。そのギルドで自分達のギルドをつくり登録して依頼を受けるんですよ。」
「それいいな!」
日本で読んだ異世界系のマンガは主人公が冒険者となってどんどん依頼を受け、強くなっていくというものだった。なので顕生も冒険者に憧れていた。それに自分がなれるということは昔みた夢が叶うということだ。それなので顕生はすぐに冒険者になることに決めた。
「冒険者になるんでしたらこの近くにいるといわれている紅蓮の魔術師様の元で教えを乞いた方がいいと思います。」
「そうだな。何事にも修行は必要だよな。よし行こう。」
歩き出そうとしたところで大事なことに気づく今からどこに行けばいいのか分からないのだ。
「その魔道士様ってどこにいるんだ?」
「ご主人様って意外にドジなんですね。」
エリカは困った顔をして言った。
「でも、私も紅蓮の魔道士様がいる正確な場所は分からないんです。」
「えっ!じゃあどうすんだよ、この後。」
そんなときにエリカが救いになる情報を教えてくれた。
「でも、私が旅の途中で手に入れた魔力探知スキルを使えばもしかして見つかるかもしれません。多分魔道士様はこの辺で1番の魔力を持っているでしょうから。」
「そうだな、そのスキルを使ってくれ。」
「はい、分かりました。ご主人様。」
そしてエリカは目を閉じて両手を挙げスキルを発動させた。
『スキル発動!』
その瞬間、エリカを光源とした光りが円状に広がっていった。
そして少しして
「ご主人様!魔道士様がどこにいるか分かりました!」
とエリカが嬉しそうに言った。
「その場所は?」
「ここから東に少し行った迷いの森のどこかにいることは分かりました。でも、正確な場所までは」
「大丈夫、そこまで調べてくれただけで充分だよ。」
「ご主人様は優しいんですねこのエリカいつまでもご主人様のお供をします。」
「ありがとうね。じゃあ、迷いの森へ出発進行!」
俺らはこうして初めての旅をした。