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四十六時限目「艦内最終決戦まさかの場外延長、老いざる者の想像を絶する切り札について」

追い詰められたピーターは、切り札を発動し畳み掛けにかかる。



……ほぼ凡そ二カ月ぶり……何でこんなに遅れたって? 応援が無かった所為だよ(暴言)

「セブンプレシャスはまだ幾らか残ってるが……どれも使い物になる気がしねぇ!

 というわけでこいつで一気に決めてやる!


 いざ…… 秘 宝 超 絶 大 解 放 ォ ッ!」


 カッコいいポーズとカッコいい掛け声を上げながら、俺は残るセブンプレシャスを全て破壊する。

 何も知らねえバカ三人から見りゃあ、追い詰められたアホが自暴自棄にでもなったのかと思うのが当然だろうが、当然そんなことは断じてねぇ。

 何を隠そう、これぞ俺の切り札『秘宝超絶大解放』を発動する上で最も重要な動作ってヤツなのだ。


(全ての宝が破壊された時、セブンプレシャスはその真髄を発揮する!)


 さあさあ、お楽しみはここからだ!




(奴め、手持ちの武器や道具を手当たり次第に破壊し始めたぞ……まさか何か大技の準備を始めるつもりか?)

 狂ったように道具を破壊していくドリスコールを見た私、ジェニファー・ホークスは、真っ先にそんなことを思う。




(野郎、何か大技出す気だな? 武器やなんかをぶっ壊してんのは内部のエネルギーを外に出して一つに纏める為か。とすると……)

 意味深な台詞を発しながら派手な破壊行為に興じるドリスコールの姿を見ながら、私こと清木場創太郎は考察する。




(……纏めたエネルギーをそのまま放つ、というのがあのタイプのやりそうなことではあるかな)

 僕即ち常木譲の考察は、そんな所だった。

 然し万が一の可能性を考慮し、ある程度別の展開についても予想してみることにする。

(或いは、エネルギーを何か別のものに移し替えるという選択肢もあるか)

 その場合、果たして何に移し替えるかが問題だ。

(考えつくのは三通り……新たに用意した何らかの武器か、奴自身か、或いは……

 いや、これはあまり想像したくはない、な。負ける可能性があるというわけじゃないが、軽くイメージしただけでも只管ひたすらめんどくさいのが手に取るようにわかる)

 新たな武器なら別段どうということはない。奴自身にしてもそうだ。適当に叩き潰せば終わる。

 だが三番目に思い浮かんだ"それ"を実際やられてしまうと、全く面倒になってしまうのだ。

(ああ、頼む……頼むぞドリスコール……。お前はバカだ。ひたすらバカだ。とんでもないバカだ。救いようのないバカだ。そんなバカならバカらしく、バカ丸出しの行動であっさり自滅しろ。余計な事は考えるな。どうせお前は主人公になんかなれやしないんだ)

 僕は祈るように念じ続けた。

(というかそもそもお前がこんな無駄に大規模な集団を率いてここまでのバカ騒ぎを起こしてくれたおかげでここまで無駄にダラダラと話の尺が伸びてしまったんだろうが。

『何故こんな話を書いてしまったのだろう。もっと他に書くべき話、書きたい話が幾らでもあったのに』

 モチベーションの欠如により何週間と連載を放置せざるを得ず内心しばしばそうぼやいていた蠱毒の苦しみを、お前は微塵も分かっちゃいない。そもそも理解するだけの知能がないんだからな。

 だが理解できないとしても償えないわけじゃない……そう、お前自身が選択肢を間違えて早々に自滅してしまえばいいんだ。そうすれば蠱毒は必然的にこの長ったらしいばかりで大して面白くもない『ネバーランド編』を切り上げ、より面白くなるかもしれない話を書くことができる。

 それこそお前にできる唯一の償いだ。だから……さあドリスコール、自滅しろ……可及的速やかにそのエネルギーをフイにして呆気なく自滅するんだ! さあ! さあっ!)

 脳内で念じた所で奴に伝わらないことは理解している。だがさりとて口に出すわけにもいかないので、結局念じるしかない。

(だがまあ、案外こういう一件無意味に思えるようなことが思わぬ形で事態を好転させるなんてことも在り得なくはないからな。下手に攻撃でもして無駄な面倒を引き起こすよりは幾分かマシだろう)


 なんて思いから、裏の裏をかいたつもりで揃いも揃ってピーターに手を出さず放置していた僕らは、然しその選択が間違いだったことを思い知らされることになる。




「っしゃああああああああ!」

 全ての宝は破壊され、内包されていた魔力が俺の元に集まっていく。

 ああ、いいぞ。最高だ。これでセブンプレシャスの真髄たるアレが完成する。

「だーっはははははは! これぞ超越! これぞ極限! これぞ完成!

 世界が平伏す完全無敵絶対パワー!

 全てを越えたその先を、後悔しながら思い知れ!」

 凝縮された魔力を両腕に込める。魔力の作用で腕は神々しく光る。その強さは、どんな暗闇をも真昼みてえに照らせるほどだ。


「目覚めろ、ネバーゴッドジャイアント!」


 輝く腕を降り下ろしながら、俺は叫ぶ。

 体内の魔力が、最強無敵の力が、迸る極太ビームになって流れ出る。

 ビームの行き着く先はただ一つ――俺の乗るこの船、飛行艦艇『ピーター&ウェンディ』改め『グレイテスト・ザ・ピーター』の中枢部に他ならねえ。

 そこにこそ俺の持つ最大の切り札、ネバーゴッドジャイアントが眠ってる。

 ジャイアントは一度起きたが最後、そう簡単には止まらねえ。ともすりゃ、奴らの勝機は今度こそ潰えるって寸法だ。


 程なくしてビームはコアに到達。巨人ジャイアントは目覚め、ゆっくりと動き出す。




「時に二人とも」

「何でしょう」

「どうしました」

「……『ミスター・デスロード』って知ってるかい?」

 僕こと常木譲が唐突に名前を出した『ミスター・デスロード』とは、それなりに名の知れた古典小説の一つだ。

「失礼、名前しか聞いたことがなく」

「あー、近頃はあんま読めてませんねぇ」

「そう、か。では知らないホークス君の為に少し解説しようか。

『ミスター・デスロード』……その原型は2010年代に我が国日本のさる男性作家が書き上げた、Web小説を原作とするライトノベル作品でね。

 簡単に言えば、図らずもゲームの世界へ転移し魔王になってしまったサラリーマンの青年が、配下の怪物たちを引き連れ世界征服を目論み暗躍するという物語だ」

「ほう、それはまた独特な作品ですね……」

「実際、主人公は身内と認めた相手にこそ寛容で優しいんだが、それ以外にはほんと容赦ねえからな……。

 で、そのミスター・デスロードがどうかしたんです?」

「ああ、どうかしたというか、何と言うか、


 似てるんだよ、『状況』がね……」

「……『状況』が、『似てる』……?」

「そうだ。明確にこうだからと断言はできないんだが、どうにも今僕らの置かれている状況が、原作のある場面を思い起こさせるのさ」

「……それってなぁ、いい状況で? 例えばそう、四巻エピローグのヤツみてぇな」

「いや、違う。それが描かれているのは十一巻の中盤辺りだった筈だ」

「あー、失礼。つい先日十巻を七割ほど読んだってぐらいで……wikiとか百科とかもチェックしてないんでその辺りはどうにも……」

「そうか。ではネタバレを控えつつ簡単に説明しようか……本当に、簡単に、一言で済むんだ」


 微かな音を立てて揺れる"空間"を見渡しながら、僕は一言呟いた。



「人がね、大勢死ぬんだ」


 刹那、音と揺れが一気に大きくなり、空間そのものが機械的な変形をし始める。

 そこから不穏な空気と面倒な展開を察知した僕は、内臓から力一杯声を絞り出す。


「逃げるぞ!」


 見ればピーターはこちらの動向など既に気にも留めていないようだった。

 正直癪だがここは逃げた方がいいだろう。それは二人も同感らしく、僕らは事前に打ち合わせがあったかのような動きで変形を続ける鋼鉄の塊から逃げ出したのだった。



「……やれやれ、まさか予想を遙かに超えるめんどくさい展開になるとは夢にも思わなんだぞ」

 逃げ出した先、ヘルズスパイラルの内部からモニター越しに外を見れば、飛行艦艇は学園の上空に留まったまま外観が変わる程の大掛かりな変形に移行しているようだった。

「単に艦艇そのものを強化して装甲の強度や飛行速度、火力を底上げするってんならまだわかるんですがね……もうありゃ別もんですよ。何か手足みてーなのが生えてるし……あ、マジでヒト型になりやがった。

 何か如何にも最近のアニメ、それも二次創作だとパイロットのエロネタばっか注目されてるロボアニメで主役張ってそうなデザインだなぁ。プロアマ人種問わずとんでもねぇ人気の所謂『覇権アニメ』ってヤツ、という感じがするぜ」

「……『主役を張っていそう』というか、実在しますね。あのようなロボットが主役のアニメは」

「マジかよ」

「はい。私も詳しくは知りませんが、確かに清木場先生の言うように驚異的な人気を誇り、また人気の二次創作はロボットよりもパイロットやその周辺人物を題材としたものが多かったように思います」

「……適当に言ったつもりだったんだがな」

「ま、何にせよ早急に止めねばなるまい。既に変形は完了してしまったんだ、レーザーだかミサイルだか持ってるのかは知らないが学校を破壊し始めたらいよいよ手に負えなくなるぞ」

「ええ。あの図体です、この区画一帯余裕で焼き払えるような火器を内蔵してたっておかしくはねえ」

「この区画一帯を……? そんなこと、あっていい筈がない!」

「ああそうだ。さて、そうなるとどう動くかが問題だな。然し未だ目立った動きも見せようとしない。一体何をするつもりなんだ全く……ん」

 ふと、携帯電話に何者かからの着信があった。発信者は学園を見張っているボウエンギョ型の諜報員、ディープスアナライザーだ。

「もしもし、どうした? ……何、奴らが? 生徒は全員下校済みとして、先生方は? ……わかった。くれぐれも気を付けてな。ああ、生きて帰れよ――死んでもな。


……さて」

「何事です?」

「ああ、ディープスアナライザーだ。学校の敷地内からあのロボットを観察した所、格納庫らしき部分から大量の……生命体らしきものが確認されたと」

「生命体?」

「まさか、先生方が戦ったという怪物や、或いはCCMの他にもまだ戦力が?」

「恐らくはね。まだそうと決まったわけじゃないが、まだ何か隠してる可能性はかなり高いと見るべきだろう。

 清木場君、ホークス君、君らは念のため学校に戻っていてくれるか。生体兵器でないにせよ、ロボットから何かしら出て来たとなると学校側の防衛戦力は一人でも多い方がいい」

「わかりました」

「常木先生がそうおっしゃるのでしたら構いませんが……お一人で大丈夫なのですか?」

「ああ、僕のことなら心配しなくていい。一人ぼっちには慣れてるし、何より僕には盟友たちがいる。本当に危なくなったら、その時は助けを呼ぶよ。

 だから君は、清木場君と一緒に学校を守って欲しい。それから近隣の人々もね」

「了解しました」

「ああ、頼んだよ。お互い頑張りに頑張って、生きてあの場所に帰ろうじゃないか」

 そう言って二人を送り出した僕は、盟友達とともに来たる決戦への準備を進めていく。


「……取り残されるのは、もう嫌だからな」




「教頭!」

「教頭っ!」

「おお君たち! 無事だったかね!」

 ヘルズスパイラルを降りた私達が校門へ向かうと、やけにソワソワした様子の教頭が駆け寄って来た。


「そうか……となると、やはり……」

 一先ず艦艇内で起こったことを説明すると、教頭は安心した一方何やら罪悪感に駆られた様な表情を浮かべ、俯きながら悲し気にぼやく。

「一体どうしました?」

「ああいや、気にしないでくれ。兎も角君らが無事で何よりだ。一人残った常木先生には申し訳ない気もするが……」

「彼女なら心配ありませんよ、ああいった事には慣れてますからねぇ」

「ふむ、それもそうだね。君が言うんだから間違いない、か……」


 かくして私達は、教頭の案内で他の学校に残っている職員たちの元へ向かおうと歩き出した――が、ここで事態は予想外の展開を迎える。

 ディープスアナライザーの言っていた『格納庫らしき部位』の中で蠢いていた何かが、一斉に外へ飛び出したのだ。


 重力のままに落ちて来たそいつらは、不格好な蜘蛛か足の伸びすぎたダニがヘドロを纏ったような姿をしていた。一抱え程の黒い泥団子から、長さの揃っていない足らしきものが八本前後生えている。

 到底自立などできそうにない見た目ながら動きは無駄に滑らかで、然し感覚はあまり鋭くないのかまだ此方の存在には気付きもしていないようだった。


(……だが全く周囲の状況を感知できねえというわけはあるめぇ。幾らか仮説は考えられるが、どの道ここで駆逐しねえと何が起こるかわからねえ)


「……教頭、早く校内へ。戦える先生方を集め、奴らの駆除に当たらせて下さい」

「ん、ああ、わかった……部下を残し敵前逃亡とは正直忍びないが、致し方あるまい」

「お気を付けて」


 校舎へ去っていく教頭を見送った私は、傍らのホークスに語りかける。


「ようホークス、覚悟はいいか? 私はできてる」

「……愚問ですね。そんなもの、今更確認するまでもないでしょうに」

「だと思ったぜ」


 軽口を叩き合い、私達は漸くこちらの存在を察知したらしいヘドロ団子どもと向かい合う。


「さてさて、派手にぶっ殺すとしようかい……始業時間だぜヘドロども。上手く死ねたら点をやる」

「行くぞ、内田……一先ずはこれが最後の戦いだ。皆で生きて勝ち残り、きっと幸福を掴み取ろう」

『はい、ジェニファーさん!』

飛行艦艇、まさかのロボットに変形!?

次回、陸空双方の戦いは激化していく!

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