二十四時限目「名称さえ決まらない変身形態、その試験運用について」
お待たせしました最新話です。どうにか更新停止一か月は過ぎずに済んだ……
『コントロール・ストライク ノーエアー・ノーライフ』
(……?
どういうことだ?)
僕は困惑していた。
何故だ?
何故ボタンを押して電子音声まで鳴り響いたのに、何も起こらないんだ?
まさかこのフォーム、何かややこしい制約が存在するのか?
(まあこの手の代物なら珍しくもない話だがね。まさか『冷静な心でないと扱えない』とかそんなんじゃあるまいが……ん? ……んんんん!?)
刹那、僕の困惑は加速する。これは一体何事だというんだ? どうして何も起こっていないのに、グレイ・スレイブ達が次々死んでいくんだ? それもまるで、突然に呼吸器系が詰まってしまったように――
(――いや待てよ、まさかこれは……そういうことか?)
そこまで考えてみて、僕はある仮説に至る。その仮説とは――
(真空、か? 電子音声も(ノーエアー・ノーライフ)と言っていたし、そもそもこのコントロールのショートレンジは変身時の音声からしてどうやら気体を操るフォームらしいから、敵の呼吸器周辺だけを真空状態にして即座に窒息死させたと考えれば合点がいく)
不可解な技の謎を理解した僕は、次なるフォーム――コントロールのミドルレンジ――を試しにかかる。
『コントロール・ミドルレンジ プラント・クリスベル』
植物という名前のままに、続いて変じた姿は全体的に樹木や蔓植物のような意匠が目立つプレートメイルのようなデザインだった。
(よし、ボタンを押そう。どんな能力が発動するかな)
なんて具合に適当にボタンを押せば『コントロール・ストライク フェアリーズ・シード』という電子音声が鳴り響き、肩部分の装甲から枝が生えて来たかと思えばその先端に赤ともオレンジともつかない色鮮やかな楕円形の果実が幾つも実る。
やたら美味そうなそれらはやがてパックリ縦に裂け、中から光球のようなものが幾つも飛び出しては周囲に転がる死体へと入っていく。
(あれは光球……じゃないな。翅があってヒト型で……まさに妖精か。然し何故死体に潜り込んでいったりするんだ……?)
等と疑問に思っていると、妖精のようなもの達が潜り込んだ死体が突然起き上がり、迫り来るグレイ・スレイブ達と戦い始めた。動きは多少ぎこちないが、足止めとしては十分だろう。
(……なるほど。察するにコントロールのミドルレンジはあの妖精のようなものを操って物体を遠隔操作できる、という能力なわけだな。詳しくは追々調べるとして……次行ってみよう)
『コントロール・ロングレンジ マインド・クリスベル』
続いてのフォームチェンジはコントロールのロングレンジ。弾力性に富んだ外皮は青白くどこか有機的で、目玉や渦巻きなどといった複雑怪奇な刺青の如き紋様が至る所に描かれている。
弾力性のある外皮のままに全体的な外観は両生類的で、特に手足の生えかかったオタマジャクシを連想させる。
(さて、例によってやることは同じだ。ボタンを押し、何らかの技を発動させた上でそのフォームの大まかな特性を理解する……と)
『コントロール・ストライク ゼイアー・フォールインマッドネス』
ボタンを押すと同時に鳴り響く電子音声。額部分にある渦巻き状の紋様から発せられた波動が動く死体と交戦中のグレイ・スレイブ達に襲い掛かる。
波動そのものが内包するエネルギーは小さく、精々そよ風程度が通り抜けた程度の勢いしかないようだった。
――だが、当然その先があることを僕は既に理解し、予想していた。
(電子音声は言っていた。『奴らは狂気に落ちる』……つまりこの技の効果は……)
僕が予想を述べるのと時を同じくして、波動を浴びたグレイ・スレイブ達が狂った様に暴れ出す。
それを察したレイグ・ユリウスは部下達を勝機に戻そうと必死になっているが、彼らは主の命令など聞き入れもせず暴れ回り、やがて仲間同士で殺し合いを始めてしまう。
(……波動を浴びた者の精神を狂わせ同士討ちさせる……流石は『精神を繰り統べる』フォームと言った所か。さて、次だ……)
『ユニーク・ショートレンジ ヒッキ・バクハ』
(……ユニーク、か。その割には――こう言っちゃあ何だがさほど個性的というわけでもない外観だな)
無礼な物言いであることは兆も承知なのだが、実際このユニークのショートレンジというのは名前の割に派手でも奇抜でもない姿をしていた。
全体的には紫がかった白色の装甲に身を固めた細身の亜人といった所で、頭にある尖った部分やつり上がった両目などは多少猫を思わせ、身体の各所には悪鬼の髑髏や白骨化した人間の手を思わせるエンブレムがあったが特徴と言えばその程度のものであった。
(更に言えば専用武器もこの少し大ぶりで少し変わった装飾のされた万年筆だけだ。万年筆で近接戦闘……まさか相手を突き刺せってわけじゃないだろうな。
何時だかドラマになった古典警察漫画の主人公は剣道の全国大会王者だかで、竹刀の代わりにペンを使い暴漢を倒すなどの芸当も披露したらしいが……生憎と僕は剣道の経験なんてないし、そもそもさっきの電子音声の内容を顧みるに……)
ある仮説を思いついた僕は、敵も居ない虚空へ試し書きをするようにペン先を走らせる。
しゅうん、という音がして虚空に線が走る。1メートル弱ほどのそれはやがてミミズか線虫のようにのたうち回り、何かの文字らしき形になったかと思うといきなり爆発した。
(なるほど確かに『筆記爆破』だな。ショートレンジというだけあって射程はないが、その分破壊力は抜群のようだ……。
よし、次だ次。敵に対し技を使ってないのは正直物足りないが、正直尺ばかり伸びても困るからな)
『ユニーク・ミドルレンジ カイゾウ・セイゾウ』
そんなわけで僕はフォームチェンジを実行。変じたのはシャープでどこか有機的でもある細身なロボット風の姿で、シンプルな外見ながら軽くイメージするだけで装甲などが複雑に変形し中から様々な工具が飛び出してくる。
(これはまた……扱いが厄介そうだな)
僕はもう何かこれ面倒そうだし早い所ロングレンジに切り替えたいとさえ思ったが、既にショートレンジで敵を攻撃せずにフォームを変えてしまっている。
一度だけならともかく二度もそんな手抜きで押し切るのは流石の僕でも倫理的に問題のある行動だと理解できる(いやまあ一般的な価値観としては一度であろうと十分問題だとは思うが)。
なので僕は大人しくボタンを押す。すると響いた電子音声は――
『ユニーク・ストライク ウリィー・ウリィィー・ウリィィィーッ!』
(いやちょっと待て何だこの電子音声!? ユニーク過ぎるだろっ!)
内心突っ込まずには居られなかった僕を他所に装甲版は複雑に変形していき、一体どこにそれだけ納めてたんだというぐらい大量の機械部品や工具を放出。
空高くに留まったそれらはガチャガチャと音を立てながら忙しなく動き回り、機械のような何かを何かを組み上げている。ハンドルに座席、ドラム缶のように太い円筒状の車輪らしきもの二つという形から察するに――
(……ロードローラー? だが何故空中で組み立ててるんだ? ……いや、まさか……そんな、バカな……)
僕の脳裏を、ある恐ろしい映像が過ぎる。そういえばあの電子音声の変な叫び声、確かどこかの古典漫画に出てこなかっただろうか。
(そうだ、そしてその漫画にはロードローラーもしっかり出てきたんだった……その使い方は――)
刹那、空中で組み立てられた巨大なロードローラーが僕の独白を遮るように――落ちた。
(やっぱりか)
重力のままに落下してきたロードローラーは、何やら集まって準備中だったらしいグレイ・スレイブ数名を容赦なく押し潰す。衝撃的な光景を受けて敵勢は中々混乱しているようだったが、僕は気にせず次なるフォームに移る。
『ユニーク・ロングレンジ コウセン・ショウシャ』
続いて変じたのは、パワードスーツというより最早ロボットといった風体の、これまでのどれよりも厳つい姿だった。
専用武器は複数の大砲――光線照射という電子音声の内容から察するに恐らくレーザー砲なのだろう――ということで、早速手元にあった一本を構えグレイ・スレイブの群れ目掛けてトリガーを引いてみる。照射されたのは予想を遙かに上回る極太のレーザー光線で、その外見に違わぬ超絶火力はグレイ・スレイブ達を跡形もなく消し炭にしていく。
(……然しこのレーザー砲、聊か火力が強すぎる気がするな。このままじゃ全部試す前に敵が死に絶えてしまうかもしれない……よし、フォームを変えよう)
そんな具合に僕はフォームチェンジを実行する。次に試すのはアシストのショートレンジだと、そう思っていたのだが――
『アシスト・ミドルレンジ スタンドバイ・トレーダー』
(しまった)
僕は何を間違えたか、メモリスティックを間違えショートレンジではなくミドルレンジを挿入してしまっていた。
変じた姿はさしずめ『アラビアンな商人の装束を身に纏うフクロウ』といった所か。
ともあれ僕が慌ててメモリスティックを引き抜こうとした、その瞬間――
『ちょっと待った、まだ抜いちゃダメ』
脳内に声が響き渡る。
いっそ少女と呼べるほどに若い女の声に呼び止められ、反射的に僕の手は止まる。
いきなり過ぎて状況が飲み込めないが、こういった指示には取り敢えず従っておくのが世の常だ。
『OK、有り難う……。
さて、それじゃどこから話すかなあ……』
「……取り敢えず君が何者かを教えてくれないか。いきなり誰かもわからない相手に話しかけられて困惑してるのでね」
『ああ、それもそうだね。アテは金田……今このベルトに入ってる緑色のAって書いてある板みたいなのに備わった補助AIだと思ってくれればいいよ』
「あのメモリスティックに? 然し何故? 他のフォームじゃ君みたいなのが出てくる気配なんてなかったんだが」
『そりゃそうよ。他は細かい仕様の差こそあれどれも戦闘向けだからねぇ、とりあえず武器振り回すとかボタン押しときゃ何とかなるんだ。
けどこのアシストってのだけはその名前の通り「補助」が目的なんで扱いが複雑なんだよね』
「成る程。それで君が指導に来てくれたと」
『ああ、まぁね。元ネタ的にもそういう設計にしとかねーとヤバいってことでさー。
ま、今はあんま時間ないし手短に説明だけで済ませるけどね。使いたきゃ使ってもいいし一応慣れれば戦えるけど、正直本当に戦闘向けには作られてないから』
「わかった。なら各種フォームの主要な機能については後日改めて調べるとしよう。説明を始めてくれ」
『おーけ。まずショートレンジ。電子音声の口上は「スタンドバイ・ドクター」。口上のまま医療行為に特化したフォームで、病気怪我も治せるし解毒だってお手の物。
医療器具とか薬なんかは攻撃にも使えたり。でも本領は治療することだから攻撃性能は低いし装甲の強度もあんま頼りにならないね』
「然しその分日常生活でも使えそうなフォームだな」
『だろうねー。次、ミドルレンジ。口上はさっきも聞いただろうけど「スタンドバイ・トレーダー」。アテっつー補助AIがあってこそ成立するフォームさ。
ただ……自分で言うのも何だけど、このフォームは全十八種類の中でもかなりめんどくさい仕様なんだよね』
「面倒な仕様?」
『うん。っていうのもこのフォームの固有能力、何もない場所に色んなアイテム――武器から道具、食べ物とかまでそれこそ何でも――を作り出すっていう何気に万能なヤツなんだけど、何時でもホイホイ使えるってわけじゃなくってさー』
「……と、言うと……いや、まさか……」
『そのまさかだよお姉さん。このフォームの口上はトレーダー、商人って意味さ。つまり能力を使って何かアイテムを出す為には、お姉さんが一々アテに対して出すモン出さなきゃならねーってルールがあるんだわ。
正直このルールさえ無けりゃ無敵のフォームじゃんってのはアテ自身一番思ってんだけど……逆に言うとこのルールと能力抜きじゃ装甲がちょっと頑丈ぐらいしか取り柄がないゴミスペックの所為で寧ろ最弱になっちゃってるってわけさ』
「なるほどね。まあそれでも色々なアイテムを出せるっていうのはいいと思うがね」
『そうかにゃー? ま、いいや。支払いについては後々教えっからとりあえずラスト、ロングレンジ。口上は「スタンドバイ・スナイパー」』
「ということは、専用武器で狙撃銃でもつくのかな? とすると一見攻撃的に見えるが……」
『まあねー。確かに専用武器はライフルだし、見た感じは戦闘用なのかなって思うかも。けど装甲の貧弱さはショートレンジ以上だし動きだって鈍いし、何より弾の威力はそんなに高くないんだよね。ただ色々な弾が打てるから補助向きって訳』
「成る程ね……」
『さって、大体の説明は済ませたし、フォームチェンジしたいんならしていいよ。このまま戦おうってんなら止めはしないし必要事項も説明するけど』
「いや結構だ。その辺りは次の機会にしよう」
そう告げて僕はアシストとミドルレンジのメモリスティックを抜き、フォームチェンジを実行する。
最後のメモリスティックは黒い『L』。但し距離は『S』ではなく『L』だ。
別に大した意味があったわけじゃない、何となくそうしたかったというだけのことだ。
『レギオン・ロングレンジ ウィーアー・サウザントインセクツ』
変じた姿は昆虫を模した細身のパワードスーツだったが、厳密な虫の種類までは特定できそうになかった(強いて言うならアリか甲虫に近いのだと思う)。
(然し軍団とはどういうことなんだ……いや待てよ、まさか……)
ある事を思いついた僕は、例によってベルトに備わるボタンを押す。
『レギオン・ストライク ミクロ・ヴァンパイアーズ・ファースト』
電子音声と共に虚空から無数の羽虫が現れ、尚もこちらに向かってきていたグレイ・スレイブ達を寄って集って食い殺し始めた。
(ううむ、苦手な奴からすればまさに地獄絵図……然し虫を召喚とは中々便利そうな能力だし、もしやファーストということはセカンドやサードもあるのか?)
等と興味をそそられつつも、僕は次のフォームを試しにかかる。
『レギオン・ミドルレンジ ウィーアー・サーティサーヴァンツ』
変じた姿は古代エジプトの王族か神格を思わせる人とも獣ともつかない芸術的な造形の鎧であり、所々に見られる鋭角的な紋様は僕にある自然現象を思い起こさせる。
(この紋様……どう見たってアレにしか見えないんだよなあ。とすれば……)
『レギオン・ストライク ウェルカム・トゥ・ザ・ファラオズパレス』
僕がボタンを押すと、全身からあふれ出す青白い電気エネルギーらしきものが徐々にその形を成していき、やがてそれは分裂して十数人程度の小人――外見を見れば成る程、こちらは古代エジプトの兵士か従者といった風貌だ――が出来上がる。
それらは誰に命じられるでもなく未だ虫に貪られ続けているグレイ・スレイブ達の体内へ飛び込んでいき、その身体を内側から電撃で焼き尽くしてしまった。
(やはり電撃か。しかも直接電撃を放つわけではなく、レギオンのコンセプト通りに使い魔を召喚する形で攻撃するとは……中々面白いぞ)
そうして僕は最後のフォームチェンジを実行する。
『レギオン・ショートレンジ ウィーアー・シックスセキュリティズ』
変じた姿はそれまでのどのフォーム――推測になるが、恐らくは未だ見たことのないアシストのショートレンジやロングレンジも含めた17種全て――よりもシンプルな外見をしていた。
(覆面のセキュリティポリス……まさにその一言で事足りる外見だ。その分付属武器は色々あるが、どれもさほど特別な破壊力や特殊効果はなさそうだな。だがこれまでの流れから察するに、ボタンを押せば……)
『レギオン・ストライク カモン・オールメンバー』
僕がボタンを押すと、影の中から這い出すように六人の人影が現れた。
何れも大まかな服装こそ今の僕と変わらなかったが、覆面の額部分には1から6までの数字が書かれており(恐らく番号だろう)、ネクタイの色もそれぞれ違えば勿論体格や性別だってそれぞれ違っていた。
更にはどうやら自我まであるらしい。
(さて、どうしたものか……ま、取り敢えずこういう時は挨拶だよな)
というわけで僕は――痺れを切らしたレイグ・ユリウスがグレイ・スレイブの群れを率いて此方へ向かって来ているという状況であるにも関わらず、自分でも信じられない程落ち着いた様子で――召喚されたセキュリティポリス達に話しかけてみる。
正直最初は気安く話しかけていいもんなんだろうかと思っていたのだが、実際会話してみるとそれぞれ程度の差はあれ総じて話しやすかったので取り敢えず安心した。
取り敢えず彼らと軽く言葉を交わした僕は、後日詳しい話を伺う約束を取り付け七人での大技にてこの戦いを締め括ることにする。
『レギオン・ハイパーストライク ザ・トータル・アタック』
ボタンを押すと同時に実行者である僕自身を含めた七人全員の脳へ技の情報が送り込まれ、寸分違わぬ動きでそれを実行に移していく。
まず、最も華奢で小柄な6番が目にも止まらぬスピードでグレイ・スレイブ達の進行ルートに罠を展開し足止めする。
続いて、紅一点の5番が足止めされているグレイ・スレイブ達を威力絶大な爆弾で吹き飛ばす。
この攻撃をも切り抜けたグレイ・スレイブの群れを処理するのは最も大柄で怪力を誇る4番、機動力にかけてはメンバー中随一で刃物の達人でもある3番、射撃の名手である2番の役割で、この三名は計算し尽くされた巧みな連携により生き残った雑兵たちを次々葬っていく。
梅雨払いの後はパワーとスピードを兼ね備えた格闘家の1番と変身者である僕の出番だ。
全てのグレイ・スレイブを失って唖然としている間抜け面のレイグ・ユリウス目掛けて、僕と彼とで渾身の飛び蹴りを放つ。
寸分違わぬ動作で跳び上がった僕ら空中でまさしく一体となり、眼前の敵目掛けて一心不乱に下降する。
(ああ、これはまさに……)
僕は感じる。
今の僕らは最早、飛び蹴りを放つ二人組ではないのだと。
今の僕らはまさしく、ヒト二人分の質量を持つ一つの飛翔体なのだと。
或いはただ至極単純な目的の為、きっと千分の一秒にも満たない刹那に己が全てを賭ける、ただ一つの力なのだと。
それこそが今の僕らなのだと感じながら、
僕らは敵に触れ――
突き刺さり――
刺し貫き――
打ち砕き――
ただ、力のままに通過する。
「……」
気付けば僕らは着地していて、背後には適当な肉片と毛の束と布の残骸からなるぐちゃぐちゃの汚らしいもの――嘗て魔術師レイグ・ユリウス及び彼の私兵グレイ・スレイブであったろうものども――だけがそこらじゅうに散らばっていた。
「……終わった、か」
呟きながら僕が変身を解除するのと同時に、魔術によって作り上げられた異空間は消滅。僕は強制的に元居た街中へ吐き出されたようだった。
「……さて、帰るとするか」
次回、作戦が失敗したばかりか頼みの綱だった部下さえ全滅しまさに孤立したプリティファングを待ち受ける運命とは……