↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

bi/b 陶芸 この世で出会って良かったと思うものの一つ

作者: 着津
掲載日:2015/08/16

 受験の年に入って早一ヶ月。受験勉強なんだそれ、おいしいの?と本来の受験生に言ったら呪い殺されそうなことを思いながらマイペースに部活に励む。どうも今日は。親父くさい花の女子高生です。この間描いた巫山戯た部活をテーマにした絵は、緩い先生に惜しまれながらお蔵入りした。今までの絵と同じく、後輩ちゃんに上塗りしてね!とキャンバスを差し出したら変な顔をされてしまった。経費削減のために昔描いた絵の上から描くんだよ、と言ったら感心していたっけ。除光液なんて高尚なものはここには無い!以前もうどうしようも無いくらいパレットに張り付いて剥がれない絵の具を溶かすのに使ったのを見ただけだ。でもあれって、除光液なのかな?もっと強力な何かな気がする。パレットの表面溶けていたし。名前は聞いたはずだけれど忘れてしまった。因みに不格好になったパレットは私が愛用しました。

 受験に向けてのぴりぴりした空気から逃げる意味も含めて、私は週に一度に教室に来ていた。棚から作業着を出して、いつものように着替える。教室の奥、先生の私物化した恐らく本来は教卓の隣のスペースには、珍しい陶芸用のろくろが有った。入部して以来、私の心を引きつけて止まない陶芸である。難点は私のずぼらな性格も合わせてとても汚れやすいという所。と言うか、殆ど慣れと性格が関係していると思うけれど。私が陶芸の面において尊敬して止まない先輩は全く汚れない。汚す自分を女子としてどうかとちらりと思いつつも、やっぱり面倒なんで汚れても良い格好をするという選択を取るのだ。

 絵の具をしまってある机とは違う机の下から、薄いベニヤ板を一枚取り出す。因みに二つの机に計二十枚くらいある。それを、名前を忘れた道具で固定し、ろくろ付近にビニールのゴミ袋で保管している粘土を取り出して板の上に乗せる。

「ありゃ」

 その中身は最近使ったのかとてもびしゃびしゃだった。粘土としてはとうてい使えない。庭があるのなら一カ所に思い切り水を掛けまくれば良い。水たまりが出来るくらいか。その時の土の状態と同じだ。

 粘土はひとまず置いておいて、何故か設置されているテレビの下から石膏の塊(四角い)を取り出す。結構重いけれど慣れればどうと言うことも無い。けれど、持っている人を不用意に脅かしたりしてはいけない。落として下手なところに当たれば、骨折くらいは軽い。

 机の上にどんと置いて、袋から粘土を出して石膏の上へ。暫く放置するのが良いんだけれど、手も汚れてしまったところだし、そのまま石膏の上でこねくり回す。結構楽しい。幼稚園や保育園時代の粘土遊びと大して違わない。違うのは泥だからものすごく手が汚れることと、油のくっさいに臭いがしないところだろうな。

 暫くはすかすかと手応えの無い泥だったのが、水分が抜けてきてゆっくり粘土へと変わっていく。しかし、ここで気を抜くと、水が抜けすぎてただの砂になってしまうので要注意!感触を良く味わうのがこつです。

 適当なタイミングで粘土を板の上へ。その前に程よく濡らした雑巾で板を拭くのが基本。と言うか、粘土は必要以上に乾燥させないのが基本である。時々めちゃめちゃ放置してがびがびにする輩が居るのには腹が立つ。これは部員では無くて、授業中の話を聞いていない馬鹿どものことだけれど。いやほんと彼奴ら嫌い。

 日頃の鬱憤も込めてねりねり。所謂パンをこねるような形の「荒練り」でだいたい固さを確かめて、「菊練り」で空気を抜いておく。空気を抜かないと窯で焼こうとした瞬間そいつが爆発する。配置によっては他のも巻き添え。先生曰く「自爆テロ」だそうだ。理系になら簡単に原因が分かるだろう。

 この練っている瞬間がたまらなく好きだ。何も考えなくて良い。但し初心者はお気を付け。やり過ぎると良くて筋肉痛、悪くて腱鞘炎。最悪で腕が動かなくなる。そのくらい慣れないことをする。何せ、左手で練るのでみんな力が弱いのだ。まぁ、私は聞き手が左なので全く関係なかったりする。あ、時々筋肉痛になるくらいはするよ。

 この菊練りは習得が難しい。綺麗な菊の形に見えるようになるのだけれど、私は大抵まんなかに隙間が出来てしまう。先生は菊を通り越してアンモナイトを作っていた。これ、標本になったりしそうだなぁ、と見本を見るたびに思った。

 練り上げて三角の山みたいな形にして、色々と準備したろくろの台に思い切り落とした。微妙に真ん中からずれるのはいつものことだ。少し不満に思いつつも作業を続ける。暫く放置する粘土には濡らした雑巾を巻き付けて。

 まずは棚の所まで行って作業板という小さな板を持ってくる。それは直ぐ近くに待機。次に椅子をひっくり返してゴミ袋をセット。最後に、水をくんだ標準サイズでLのポリバケツを手元に置く。おっと、忘れるところだった。相変わらず「らしく」きったない水道から、放置されていた縫い糸を持ってくる。もうすでに使われていて、泥がしみこんでいて薄茶色だ。 

 みんな(部員以外)こういうものを見ると余り好きじゃなさそうな顔をする。結構失礼だよね。ここに大好きでたまらない人間が居るってのに。

 意気揚々と作り上げた陶芸の作品は、どうにも満足できないものばかりで、私は全部ゴミ袋に放り込んだ。絶次は良いもの作ってやる!

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。