一章-8
今回は凄く短いです。ここで一章は終わりで2章へ続きます。
とある倉庫の中に入ると気絶している男性が縛られて倒れていた。
何を突然言っているのかわからないだろうが、私も通報があった場所に来たらこうなっていたのだからありのままの現実を判断するしかない。
とはいえ、この男の顔はどこかで見たことがある。私がそう考えていると所轄の刑事の一人がなにかに気づいた。
「あれ? こいつ女子高生連続誘拐殺人事件のプロファイリング像に似ていませんか?」
どうしてこんな場所で、と刑事は不思議そうにうなっている。ふむ、そうなるとこの一帯にこの男性に暴行を加えた何者かがいるということになるが……
とりあえずこの男には話を聞かせてもらわないといけない。そしてこの男が悪魔憑きという可能性を考慮して、アレをつけておこう。近くの女性警官に物が入った箱を運ばせ、中身を取り出す。
中にあるのは悪魔憑きの能力を制限するヘッドギアだ。正式名称はなんだったか忘れてしまったが、今はそういう機械であるということが大事なのであり、名前のことは細かい問題である。単純に覚えていないというわけでは、決してない。
話がそれた。私は慎重に男の頭に機械を装着し、顔をはたく。軽くやった程度では起きそうにないのでなるべく強めに、傷ついている部位を叩く。勘違いだったら申し訳ないが、もし女子高生連続誘拐殺人事件の犯人ならば女として許せそうにない。しかも殺害するだけではなくその過程まで有料サイトで報送しているのだ。人としても許せない。
そして激痛だったのだろう、すぐに痛みで男は目を覚ました。
首を左右に振りながら状況を把握しようとし、すぐに表情が青ざめていった。
「な、何で警察が……」
「通報があったのよ。ここに悪魔憑きの男がいるってね」
「そ、それだけで何で縛られてるんだ!?」
「最初から縛られてたのよ。あ、あと能力は使えないから」
「何!? ……マジか」
本当に使えねぇ、と男は嘆くように呟く。
「わかったら大人しくしてもらえるかしら。抵抗する気があるなら怖い目を見てもらうわよ」
「おもしれぇ……だったら見せてみろよ」
「言うわね。トラウマえぐれても知らないわよ?」
やってみろよ、と男は不敵に笑うので遠慮なく実践することにした。
私は指を鳴らし、男の目を見る。
その直後、私の周りに一つの人影ができていく。最初は不定形な形をしていたが徐々にその姿がくっきりと形を得ていく。先ほどまで粋がっていた男もその姿を見ていくなりどんどんと顔が真っ青になっていた。
そして私もその姿には驚いたものだった。
「……アンタ、この人を知ってるのね?」
「知ってるもなにも俺をぶっ飛ばした奴だよ……頼む、俺が悪かったからソイツを視界から外してくれ」
「いいわよ」
もう一度指を鳴らし、幻影を消滅させる。
「さぁて、それじゃあ所轄の皆さん、申し訳ないですがこの男を管理局支部まで引っ張っていってください。私はやることができましたのでこの地域に残ります」
了解しました、と刑事たちは返事をし立てない男の両腕をしっかりと捕まえパトカーに連行していく。
……さっきの幻影、あの女性に見間違うほど中性的な顔立ち。背中まで伸びているロングヘアー、そしてあそこまで相手を怯えさせる実力を持つあの人は。
「……行方不明って聞いたけど、こんな場所にいたのね」
心配してたけど、男の様子を見る限り元気そうにやっているようだ。後は、見つけ出すだけだ。
対悪魔憑き特殊部隊、カニバリズム部隊の一員としてちゃちゃっと見つけてこの愛野心が連れ戻すとしますか!