三章-9
『殺す……養父さんを殺したお前を……!』
……! 思い出した。これは夢で見て今日心が召喚したあのバンダナとの戦いだ。確か夢であのバンダナと戦っている時の光景の一部とまったく同じだ。向こうの装備も少なからず似ている部分がある。
器用貧乏。とっさにそのキーワードが頭に浮かぶ。どうしてだか知らないが、頭には篭手と具足の形が浮かぶ。これもあのバンダナの装備だった。つまりあの篭手と具足こそが装甲兵器、正式名称器用貧乏だったわけか。そしてその構造が頭に浮かんでくる。
そうだ、あれを発明したのは……俺だ。いつの頃かはわからないが、ソレは確かだ。
そして思い出す。夢で見たこの光景の乗り越え方は……
「こう、だったな」
自分より先の空間を認識。
威力は中くらいで周囲に被害をそこまで及ばさない程度に。
そして拳を握る。瞬間、爆発が起きた。
クナイは爆発に巻き込まれあらぬ方向に吹き飛び、部隊長の男の顔は煙でよく見えないが、たいそう不思議そうにしていることだろう。
今思い出した。いや、認識したといった方が正しいのだろうか。これが俺の能力だ。
爆発能力。これが俺の能力か。
「ば、バカな……何がおこった?」
「最強の悪魔憑き、復活ってところかな」
自分で言うのも恥ずかしいが、あえて名乗っておこう。こうすることで牽制にはなるかもしれないし。
痛む身体を押さえながら立ち上がる。あとは俺が我慢するだけだ。
「っしゃ、いくぜオイ!」
「ほざけ死に損ないが!」
同時に踏み出し、俺は拳を。向こうは新たなクナイを取り出して互いに攻撃を開始する。すれ違いクナイは俺の頬にかすり、拳は空を切る。まだだ。もっと早く攻撃を繰り出さなければ。
反転し、がむしゃらに部隊長の男をめがけて飛びかかる。
「遅い!」
だが狙いすましたかのように顎を蹴り抜かれ、衝撃で脳みそが揺れる。しかし、俺はまだ動ける。振り抜いた足に焦点を当て、そのままその足をつかんだ。
「持っていけ」
拳に力を込め、その足を爆発させた。
「〜〜〜〜〜〜っ!?」
部隊長の男の声にもならない声が漏れる。
これで機動力は封じた。あとは、仕上げだ。
倒れ込もうとする男を捕まえ、そのまま胸元辺りの空間を認識して終わりだ。
「これでジ・エンドだ」
——爆発。
装甲兵器はくだけ散り、部隊長の男は声を上げることもなく倒れた。
あっけない幕切れだったが、なんとかなったことに安堵の息を漏らす。あとは華音ちゃんを探すだけだ。
「……おい、そこで動けなくなってる奴ら」
「ヒィッ!?」
「このまま爆発で殺されるか、逃げ帰るか好きな方を選べ。お仲間つれてな」
なるべくドスを利かせての威圧。それが通じたのか生き残っている奴らも蜘蛛の子を散らすように逃げていった。暗殺部隊の姿としてはどうかと思うが、今はそれでいい。これ以上やるのはさすがにしんどすぎる……
「さて、と……後はこの倉庫にいるはずの華音ちゃんを……」
グラリ、と視界がぶれる。気を抜いた瞬間にこれか……どうやら長い時間は保ちそうにないな。さっさと華音ちゃんを助けて、それで病院に戻る。これがベストでハッピーエンドな終わり方だろう。
重い足を動かし、ゆっくりと進む。一階がこんなブービートラップなど仕掛けられているんだ、人質がいるのなら二階である可能性が高い。ここはなかなか広い、どころかかなり拾い倉庫だが焦点を絞れるのならば探すのは難しくないだろう。
そうしてゆっくりと歩みを進めていった。