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喪失者の道中  作者: 法相
三章=交戦=
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三章-4

「何? 闇の参からの連絡が途切れただと?」

「はい。勝手に交戦を始めて敗北したものだと思われます」

「そうか、ご苦労だった。まぁこの様子ならこの場所もわかってくれただろう。画像データはとれそうか?」

「それについてはぬかりなく。闇の参もアホですね、録画機能があるのを忘れていながら交戦したのでしょうが……データは自動的に送信されるので助かりましたけど」

「おかげでデータは取れたんだ。感謝しておこうぜ」

 そうですね、と闇の伍、大島は答える。それから対応策を考えるとのことで大島は席を外す。さてと、首を横にしてムスッとした表情のお姫様を見る。

「そうすねた顔すんなよお姫様。俺様は寛大だが、あんまりすねた表情見せっとやけどするだけじゃすまねえぞ」

 カッカッカと笑う。俺のいつもの癖だ、こういうお姫様を見ると屈服させたくなる。

 こんな窮地の場所に置いても意志を曲げるそぶりを見せないこのお姫様は屈服させがいがあり、そそる。きっとこのお姫様はさらわれた今の状況に置いても助けがくると信じて疑っていないだろう。

 ここは彼女がどこぞの悪魔憑きにさらわれた時の場所と同じところだ。八神朗人もきっと迷わずにここまでくるに違いない。

 そうすると八神朗人はこのお姫様、大鳥華音にとっては助けにきてくれた白馬の王子様となるわけだ。その上で俺たちがあの八神朗人を殺す。そうすればどれだけこのお姫様は絶望するだろうか? 考えるだけでもよだれが止まらない。

 そんな俺の表情を見てからか、彼女は不愉快さを隠すことなく思ったことを口にした。

「下衆い顔していますね。ボク、そういう顔は嫌いです」

「君は正直者だな。俺はそんな娘は好きだよ。屈服させがいがあってね」

「ボクはアナタが嫌いですね。あの男、影山と一緒の臭いがします」

「そりゃ心外だな。俺からすればあんな化け物たちと一緒くたにされたくないんだが」

「アナタの人間性がですよ。ボクをさらったところで意味はありません。あの人ならきっとボクを助けてくれます」

「へぇ、信頼してるんだな。あの男のことを」

 もちろんです、とお姫様は言う。

 これが若さというものか、少しまぶしく感じる。とはいえあの男を殺したら……いや、殺す前に楽しみたいことができたな。動けなくなった八神朗人の前で彼女を汚すことができたなら……それは相応以上の悲痛な声、憎悪の感情が生まれることだろう。

 楽しみが一つ増えた。確実にこれは決行しよう。

 なればこそ油断なく、なればこそ万全の配置をするのが吉だろう。うまくいくためには何事も準備が必要だ。足りないものはあるかもしれないが、何、問題はない。すでにいくつかのデータはあるわけだから手に負えないということはないだろう。

 そもそも、暗殺部隊は特殊部隊なのだ。それが記憶喪失の、それもぼろぼろになっているような半病人を相手に遅れを取ることなどあってはならない。闇の参こと柴田はそういう意味では俺たちの部隊の恥である。

 とはいえ、今はとらわれの身である柴田に対してどうこう言っている場合ではない。向こうも気づいたというのならすぐにやってくるであろうし、こちらもそれに迎撃態勢をとらないほど間抜けではない。

「闇の壱より各員へ伝達。五分だ、五分以内にここにできうる限り最大限の罠を仕掛けろ」

『罠って……戦争でもする気ですか?』

「その通りだ。敵は手負いだが全力で狩るぞ、それが今回の敵に対する最上の手段だ。敵は異端者、つまりは悪魔憑きだ。このことを肝に銘じておけ」

 そう、異端者の中でも最高位の実力を持つのが今回の暗殺対象だ。もっとも、ここまでやると暗殺部隊と言えるのかどうか怪しいところだが、俺が暗殺部隊と思えば暗殺部隊だ。そこに異論はないし、言わせない。

 それに相手のデータはごく限られたものだ。暗殺対象のデータが不足しているなどハナからむちゃくちゃな話だ。それをまぁ前隊長はへぇこらと請け負ってからに……だが、異端者が相手な以上手を抜くことは元からないし、負ける気もさらさらない。

 足りないものは技術で補う。それだけだ。

 異端者は許さない、絶対にだ。



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