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喪失者の道中  作者: 法相
二章=アギトを知る者=
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二章-8

 愛野さんの方を見るとまだ信じられないという顔をしていた。

「なんで、装甲兵器を使ってるの? アレは限られた人間しか……」

「落ち着け。とりあえずあの装甲兵器は何かわかるか?」

「いえ、私にはわかりません。けど武器型の装甲兵器はそうとう前のタイプのはずなのに」

「つまり骨董品ってことか。それと、俺は装甲兵器使いとは戦ったことはあるか?」

「模擬戦で何度も。ですが、これは模擬戦じゃないですから油断はできません」

 これまでにないケースですから、と小さく彼女は付け加える。

 彼女に礼をいい、バンダナの前に立つ。まずは相手を観察する。

 まず右腕には横向きに装備された大剣、腰には先ほどまで使っていた刀。左腕には盾。攻守ともに対応できるオールラウンダーというところか。

 とはいえ、こちらも何か武器が欲しい。この間の影山は素手でどうにかできる程度の実力差はあったけどこのバンダナ青年相手には厳しいものがあるかもしれない。そう思いながら辺りを見回すものの、特に武器になり得そうなものはない。さすがに木の枝を武器にできるほど無謀ではない。

 となると、

「下かな」

「は? どういうことですか?」

 わけがわからないという声を出す愛野さんをよそにおいておき、俺は突貫する。

 悪魔憑きの脚力ならば一歩踏み出せば距離は一気に縮む。

 バンダナはそれに素早く反応。刃は突くようにこちらに向け、突き出す。

 それを見切りほんのわずかに身体を反らして回避、カウンターに土手っ腹に蹴りを打ち込む。だが手応えはなかった。

「盾か……!」

 俺の蹴りは盾によって防がれていた。

 思ったよりも反応と動きがよくなっている。おそらくは装甲兵器を装備したからこその反応速度であろう。

 しかしまだ終わらない。

「隙ありだ」

 上半身のバネのみを利用した渾身の右ストレート。それはきれいにバンダナの顔面をとらえる。

 グラリ、とバンダナの身体のバランスが崩れる。そこで俺は後ろへ下がり距離をとり下から小石を拾い投げつける。その小石は何も装備されていない、つまりは生身の右肩部分に直撃する。

 ダメージが蓄積されるタイプの幻影、と俺はとっているが、これで先ほどまでの機敏な剣捌きは奪えただろう。

「こ、ロス!」

 しかし、そんなことはまるでおかまいなしにバンダナは右腕の刃をこちらに向け跳んで来る。

「効いてねぇ!?」

 その場から急いで離れ、緊急回避。転じて小石をまた拾い投げうつ。しかしその小石は盾により弾かれ、小石は木の中にめり込んだ。我ながらすさまじい勢いで投げたものだと思う。

 しかしその一撃を一度は身に受けたはずのバンダナは動きが鈍る様子がない。それだけあのバンダナは鍛え上げられていて、なおかつ執念深いのだろう。性格も悪いんではないだろうか。さすがにそこまでは本人ではない人形だから行き過ぎた考えだったか。反省。

「隊長! そんなお猿さんみたいに反省のポーズとらなくていいですから!」

「誰が猿か!」

 失礼なことを言う娘だな! 確かに反省のポーズを一瞬とったけど。

「コロス!」

「お前はそれ以外をしゃべれ!」

 バンダナの巨大な刀を避け、後ろへ下がる。

 幸い先ほど金髪の方は消したので誰かから狙われる心配はない。それは後ろにいる愛野さんを含んではいないが、先ほどの様子を見る限り俺に歯向かうようなまねはしてこないだろう。多分。

 牙を剥かれた時は、その時だ。

「さぁて、飛ばしていこうか……!」

 喧嘩する時のように手を振る。

 ある程度の動きは見えた。後はこっから確実に向こうの戦力をそいで、ぶちのめす。それだけだ。

「コロスこロす……!」

「その殺気と根性は認めてやる。だがしかし、俺とやるにはだいぶ早いと思うけどな」

 わざと不敵に笑ってやる。

 その俺の態度に激昂したのか、向こうはギッと睨んでくる。

 最初に登場した時は意志のないただの人形みたいだったが、あの目は確実に俺を殺す紀の目だ。実にいい目だ。人形を相手にしているよりもよっぽど生死の境を自覚させてくれる。それにもし仮に、このバンダナが俺を本当に知っているのなら、仮にこのバンダナをねじ伏せて話を聞けるとしたなら……

 やる価値は十分にある。

 構えを変えて対峙する。このように真正面から相見えると、威圧感は段違いだ。やはり装甲兵器を装備しているということがその重さを多大なものにしているのか。

 まぁだとしても俺がやることは変わらない。自分の記憶を取り戻すきっかけがあるのならそれに向かって走るのみだ。

 数分ほど向かい合って最初に動いたのはバンダナだった。

 先ほどと同じように右腕の刀を使い、こちらに向ける。

 それを俺は前進しながら屈んでかわし、拳を入れる。拳は顔に入ったが、バンダナは素早く左腕で俺の右腕をつかみ膝蹴りを腹部にいれてくる。治りきっていない身体にはその衝撃が大きく、苦悶の表情が浮かぶ。

 乱暴に左の拳で脇腹を狙う。結果、向こうも苦悶の表情を浮かべ、握っていた手が緩まり先ほどの仕返しと言わんばかりに蹴りをいれかえしてのけぞらせ、追撃のために全力で踏み込み、のど元にラリアットを入れる。

 勢いよくバンダナは後方へ吹き飛び、木々にぶつかって尻をつかせた。



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