表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
喪失者の道中  作者: 法相
二章=アギトを知る者=
11/49

二章-2 夢

 どこかの広い部屋。そこに俺は立っていた。

 部屋の中央では小太刀を持っているバンダナを巻いた青年が俺を睨みつけていた。なぜ睨みつけられているかはわからないが、とりあえず俺はそれに対して笑って返した。まぁこれも正しくは俺が、ではなく夢で俺の視点となっている人物のものだ。

 この笑みは余裕からくるものだということがなんとなく予想がついた。そういえばこういう自分が夢とわかる夢はなんだったか、そうだ。明晰夢というやつだ。こういう夢は自分の思い通りに変化できるというが、別にその必要はないな。むしろ、どうして俺は目の前にいる青年から睨みつけられているのかを知りたい。

 そしてもう一度視線を青年の元に戻す。

 よく見れば青年の身体には装甲が展開されていた。なぜさっき気づかなかったのだろうか? 自分の注意力のなさに呆れながらも青年を観察する。身長は百七十八センチ程度、髪もバンダナで押さえてこそいるがツンツンしていると見た。目つきも鋭く、触れれば切り裂かれそうだった。そして、それをできるだけの実力がこの青年にはあると見た。

 まぁそれよりも特徴的なのはその装備だろう。装甲にまとわれているその姿は現代風にアレンジされた機械的な忍者のようだった。色は黒を基調としており、隠密にはもってこいの配色だ。おそらくアレが管理局という場所で作られているという装甲兵器メタルアーマーというものだろう。そうするとこの青年は管理局の人間ということになるが、露出する部分から管理局の制服ととれるような場所はない。むしろ出かけ用の洋服、そこから青年は管理局の人間ではなく一般人に相当する人物だと想像がつく。

 しかしそうだとすると彼はなぜ管理局の特殊兵器である装甲兵器を持っているのか?

 ここで管理局というものについて思いおこす。

 管理局、年々増加傾向にある悪魔憑き犯罪を取り締まるためにできた警察の上位機関に属する組織だ。何分悪魔憑きには拳銃などが通じるには通じるのだが現状確認されている悪魔憑きの過半数を占める変身型には効果が薄かったのだ。無論、間接を狙えばその限りではないが、動く標的を相手にそれは不可能に等しい。そのため警察ではショットガン、マシンガンなどパンドラカラミティが起こる前では考えられないような兵器を警察で導入したのだが、それでも確保できる悪魔憑きの数は微々たるものだった。

 それだけ悪魔憑きは驚異的な力を誇っていたのだ。鍛えに鍛えられた自衛隊員ですら何人悪魔憑きの犠牲になったかはわからない。

 それに見かねた政府は管理局の設立を決定。設立者は不明とされているが、その科学力には市民は驚かされたという。最初は悪魔憑きの動きを制限するような銃弾、能力を発動させなくする拘束器。そして設立から一年後に装甲兵器を開発することに成功した。そしてこの装甲兵器というものがまた恐ろしく高性能だった。

 数々の悪魔憑きに一方的に蹂躙されていた人類が反撃の狼煙をあげた瞬間だった。装甲兵器は装着者を超人へと変貌させ、今までの雪辱を晴らすかのごとく次々と悪魔憑きを検挙していき、特殊拘置所送りにしていった。そんな高性能な装甲兵器だが起動するためには適応者が必要であり、またそれに選ばれるための基準は制作者もよくわかっていないという。制作者が誰かは知らんが。

 姿は千差万別。漆黒の鎧をまとった騎士のような姿をしている物もあれば、装着者の右腕だけを覆ったりする物も存在する。そんな装甲兵器はある特徴がある。それは装甲を展開する前はアクセサリーとなっていることだ。これにより高い奇襲性を獲得、不意打ちをすることによって決定的な一撃を与えることも少なくない。そして発動キーワードは「アヴェンジ」。今まで蹂躙されていた人間が復讐する機会を得たことからこの言葉を発動キーワードに設定された、と記憶は訴えていた。

 そんな特殊兵器が一般人の若い青年に回るか? と言われれば答えはノーである。

 ではこの青年は一体ドコで入手したというのだろうか。そう考えていると夢の中で俺の視点である人物の口が動いた。

『器用貧乏をそこまで扱えるなんて大した奴だな』

『訂正、だ。コイツは器用貧乏なんて名前じゃない、ゼロアーマーだ』

 どっちでもいい、と吐き捨てる。

 どうやら俺の視点となっているこの男性は彼をそこまで大した障害と感じ取っていないようだった。感覚的には武器を持っているわけでもなく、どうしてここまで余裕を持っていられるのか聞きたい。

 青年は小太刀を構え、こちらを睨みつける。その瞳から想像できるのは憤怒の感情だった。パッと見は冷静そうに見えたが、どうやら激情家であるらしい。だからどうしたという話だが、この男性に勝つにはなんとなくだがそれだけではいけない気がした。

 青年は空いている左手を使い腰から現代風のクナイを投げてくる。男性はそれを避けていくが、数が多くなってきたところで爆発を起こした。

 どうやらこの男性、悪魔憑きであるらしい。構図としては何か青年の恨みを買うほどの所行を男性がした。それゆえ殺意を向けてクナイを投げているのだろう。

 しかし、どうしてだろうか。この青年、どこかで見かけたことがある気がする。

 そこまで考えたとき、目が覚めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ