プロローグ
賞に応募しようと思いながら書いていきます。更新は遅めと思われますがご容赦ください。また、ピクシブにも投稿を考えております。
※プロローグを丸まる変更しました。
雨が降る中、痛みを必死にこらえながら歩みを進める。
しくじった。確かに殺される寸前までいったのはあのバカを侮ったからに他ならない。おもわず気絶しちまったが、まさかその後に裏切りにあうとは思わなかったな。
チラリ、と背後を見る。
「おー……隠密特化型がひーふーみー……四人もいやがるのか」
自分で開発した兵器に追われることになるとは。神様も人が悪いな。もっとも、俺が神様に文句を言える立場ではないんだけど。さんざん好き勝手やらしてもらったわけだしな。その中で奪った命も両手じゃ足りないくらいだ。
だが、そんな俺でもすぐに死んでやる気は毛頭ない。死ぬのなら最大限、火をつけてからだ。
と、一人の隠密特化型の男が近づき俺に一撃を加えようとする。だけど残念だったな、こういうのはあれなんだが……
「遅いんだよ」
「ガッ!?」
攻撃される前に首を捕まえ全力でへし折った。鈍く嫌な音が手を通して伝わってくる。そして装備していた兵器、装甲兵器と呼ばれるものが解けていく。使用者の死を察知したからだろう。これで相手が確実に死んだことがわかった。まずは、一人。装着者連中には生身の部分は気をつけろ、って俺は言ってたと思うんだが、どうも聞き流してたようだな。今はそれが幸いとなっているんだけど。
「さて、次はドイツだ……?」
ボキリ、と指を鳴らし留まっていた残りの三人を睨みつける。すると三人は勝機がないと考えたのだろうかその場を去っていった。あっけない幕切れだが、俺としては好都合だ。後は近くの……
「っと? あ、らら……?」
視界がゆがみ、足下がふらつく。
まずいなぁ、これでアイツらが戻ってきたら今度は確実に殺されるだろう。
咳き込み、胃からドロッとしたものがこみ上げてくる。それを地面に吐く。夜だから色がわかり辛いが溢れたのは赤黒い血だった。
「あー……こりゃまずいわ」
思わず苦笑する。やれやれだ。今まで粋がっていた罰なのかもしれない。
だけどさ、こんなところで死ぬわけにはいかないんだよ。俺はまだ目的を成し遂げていない。今までその目的のために何人も犠牲を払ってきた。それがたとえ親友であったとしても。今、目的も成し遂げられないまま死んでしまったら、そいつらに示しがつかない。まぁ中には気分を害した、ただそれだけの理由で殺した奴らもいる。主に口だけの無能だったけっかなぁ。
だけど、俺はそこに後悔などない。俺の生涯で後悔をしたのはアイツらを守れなかった時だけだ。
もし後悔が増えるならここで死ぬことだけだろう。
胸に手を当ててみると、雨に混じって血が流れていることがわかる。
心なしか息も荒くなってきた気がする。どうやら無茶がすぎたらしい。
どこか近くに病院はないものか、なんて……
「……あったし」
ご都合主義も真っ青な偶然。ここからしばらく進んだ場所に病院らしき建物が見える。
しかしこんな場所でもよく見えること。自分の視力のよさに感謝を覚えながら痛む身体を引きずって病院の方面へ向かう。
十分も経った頃だろうか、ようやく病院の前まで辿り着いた。途中何回か血反吐を吐いたがなんとか保った。
こんな夜中に重体の人間が来たら驚くだろうが、こっちとしては四の五の言っている場合じゃない。病院をノックしようと思った瞬間、また身体から力が抜け倒れ込む。
「ガッ……こんな、ところで」
どうする。さっきの比ではないくらい息が荒くなってきている。クソ、即死じゃなけりゃこんな苦しむことはなかったろうが、俺は即死じゃないからこそ感謝しなけりゃいけないってのに、情けない限りだ。
少し、文法がおかしかった気がする。どうやら本格的に思考も回らなくなってきているようだ。
「……肩、かしてあげる」
そんな時だった。女の声が聞こえた。
顔を上げてみると、一人の少女が立っていた。とは言っても顔はよく見えない。視界もだいぶやられてるみたいだな。
よいしょ、と彼女は屈み込み俺に肩をかす。
「重い……見た目よりも随分と鍛えてるのね」
「ま、ぁな……ところでいいのか? 服、血で汚れるぜ」
「別にいい。死にそうな人を放置するよりはマシ。アナタ、名前は?」
「俺か……? 俺は……」
自分の名前を呟き、俺は意識を失った。