はじまり
知的障害という疾患が名前として出てきますが、正しい知識を元にしたものではない為実存するそれとは異なる点が多々ございます。あくまでもファンタジーとして扱っているので、大袈裟な表現なども出てくると思いますがご了承くださいませ。
また、文中には障害者の方々を差別するような言葉や表現がございますが、そのような思考を助長するためのものではなくフィクションとして受け止めていただけますようお願い申し上げます。
『お前は奴隷なんだから勇者の俺に逆らったりすんなよな !!』 『奴隷って汚ねーよなっ!!』『どーれい!!どーれい!!』
私はいつだって弱者で底辺の者だった。
自分の責任ではないことで存在を否定されることが惨めで悔しくて苦しくて辛くて悲しかった。何よりそれに対して反撃できない無力な自分が嫌いだった。
小学生になってもまともに自分一人でトイレにも行けない。ご飯も幼児のように手でこねながら食べる。口の周りは常にヨダレでべとべと。そんな弟の様子を見れば誰だって一目で弟が“普通じゃない”ことがわかる。
“恥”だった。
“普通”の両親から生まれた“普通”の私。その“普通”の私の“普通じゃない”弟。必死で隠してきたのにバレてしまってからは簡単だった。
弟を気味悪がった同級生たちが私へ攻撃を始めた。弟の知能の低さを疎ましく思った人たちが私たちを非難した。弟の奇行を咎めた人たちが両親を罵倒した。
そんな中でも何も理解せずに好き放題に生きていく弟を憎まずにはいられなかった。