第1章1話
ゲームテキストの会話部分のかっこの形を『』から【】に変えました。投稿済みの部分についても、随時変えて、再投稿します。
気がつくと、俺はベッドの上にいた。後頭部にまだ鈍い痛みがあるが、他の所には問題なく、少し体が重いと思うくらいだ。
起き上がると、そこはまたも知らない場所だった。
壁はレンガでできていて、部屋の隅には洋服棚と化粧台、隣にはもう1つベッドがある、それだけしかないが、かなり広い部屋だった。近くにある窓からは、涼しい風が入ってきている。
窓から外を見ると、レンガで舗装された道に、多くの人が歩いている。ここと同じくレンガで造られた家が並んでいて、中には剣や鎧の書かれた看板を掛けている家もあった。おそらく武器や防具屋なのだろう。
真下見ると、ここは2階のようで、1階のほうから、談笑する声と、おいしそうなにおいがここまで届いてくる。
これからどうしようかと考えていると、ドアが開き、恰幅のいいおばさんが部屋に入ってきた。
「おや、起きたのかい。あんた、10日間もずっと寝てたんだよ」
俺は10日間も寝ていたのか。ずっと体動かしてなかったから、体が重いと感じたのか。
【やれやれ やっと起きましたか 遅いですよ】
「!!」
「どうしたんだい?そんな驚いた顔をして……もしかして顔に何か付いてるかい?」
「い、いや何でもない」
「……そうかい、じゃあ、準備ができたら1階に下りてきておくれ」
「わかった」
そう答えると、おばさんはさっさと部屋から出て行った。
それにしても、真っ白な空間で慣れたとは思っていたが、いきなりだと、まだこのゲームテキストの声に驚いてしまうなぁ。
それと、さっきのおばさんには、どうやらゲームテキストの声は聞こえなかったらしい。まあ、俺の頭の中で聞こえているだけだから、当然ではあるのか。
「……で、大体の予想はついてはいるが、ここはどこなんだ?」
【……私に訊いてますか?】
「お前以外に誰かいるか?」
【いや 頭おかしくなって 独り言でも言い始めたのかと】
「……うん、傍から見るとそうなんだが、それをお前が言うな!」
一体どうしたらいいんだよ。
【ここは ハンドレッド・キングダム の城下町にある宿屋です】
ハンドレッド・キングダム=百の王国ってとこか。……微妙だな、この名前。
そして、なんとなく予想は付いていたが、ここはやっぱり宿屋だったか。となると、さっきのおばさんは、この宿屋の女将といったところか。
「という事は、ここは……」
【はい RPGの世界です】
そうか、俺はついにRPGの世界に来たのか。……さっき窓から外を見たが、まだあまり実感が湧かないな。
「……ところで、まだ後頭部が痛いんだが、俺、あの真っ白な空間で殴られたのか?」
【はい それはもう 思いっ切り全力で】
「危ないな!……で、殴った理由って、もしかして、気を失わせたかっただけ?」
【Yes!】
「Yes!じゃねえよ!!」
【いや~ 毎回方法が睡魔だと ワンパターンで飽きてしまうかなと】
「そんなところに気を回さなくていい!!」
【さて そろそろ1階に下りましょう】
「おいこら、話を勝手に終わらすな!!」
こいつ、若干ノリが軽くなってねえか?
まだ聞きたいこと――俺を殴ったのは誰なんだ、とか聞きたかったが、とりあえず、こいつの言う通りに、下に降りてみるか。