ええっ!? うそ、あれって……ウィンの名前じゃない!?
この物語は、タイの学校を舞台にした実話に基づいた物語です
掲示板の前で、僕は危うく叫び声を上げそうになりました。見間違い? 夢? いいえ、現実です。僕とウィンは、同じクラス(6組)になったんです! まさか、あんなに遠くに感じていた彼と、同じ教室で過ごせる日が来るなんて。
高校生活が始まってすぐ、僕は新しい友達と出会いました。隣の席の「パッ」は、一見おとなしそうだけど、実はかなりの下ネタ好き(笑)。そして、同郷の「プン」。僕は毎日、片道20キロの道を**ソンテウ(タイの乗り合いバス)**に揺られて通学しています。朝5時起きは正直きついけれど、それが僕の日常です。
入学して一週間。英語の授業で「8人グループを作れ」という課題が出されました。僕はグループワークが大嫌いです。中学の頃、何もしないメンバーの分まで一人で課題を背負わされたトラウマがあるからです。親しい友達は別のグループに誘われてしまい、僕は一人、教室の隅で途方に暮れていました。
その時です。
「サイロム、僕たちのグループに入らない?」
目の前に、ウィンが立っていました。
その瞬間、僕には彼が神様か、暗闇に差す一筋の光のように見えました。二つ返事でOKした僕は、心の中で「サードゥ(タイの祈りの言葉)」を何度も唱えました。
後日、放課後に公園で課題の動画撮影をすることになりました。ネイビーのシャツに黒の短パン姿で現れたウィンは、いつも以上に眩しくて、目を逸らすのがやっとでした。
撮影の後、双子の兄・チョンがとんでもない提案をしました。
「ウィンも一緒に、海辺の市場へ遊びに行こうぜ。3人乗り(ソンサーム)で行けばいいだろ。俺が運転するからさ!」
チョンのやつ、勝手なことを……。でも、ウィンに誘われたら断れるはずがありません。「……うん、行こう」
夕暮れの市場。チョンがどんどん先へ歩いていくので、僕も急いで後を追おうとしました。すると、隣を歩いていたウィンが僕を呼び止めました。
「待ってよ。あいつは放っておいて、少しからかってやろうぜ」
そう言って笑う彼と、二人きりの歩幅で歩く時間。心臓の音が波の音にかき消されていくのが分かりました。
帰りのバイク。チョンの背中の後ろで音楽を聴いていると、AKB48の「#好きなんだ」が流れてきました。
「君と僕は仲が良すぎると周りに言われる……」
どうしてだろう。今の僕たちの距離に、この歌詞が痛いくらいぴったり重なっていました。
[ あとがき (บทส่งท้าย) ]
「君と僕は仲が良すぎると、周りに言われる……」
(เธอกับฉันเหมือนเราสนิทเสียจนมากเกินไป คอยหยอกล้อเล่นกันประจำแบบนี้ทั้งปี...)
バイクの後部座席で風に吹かれながら、イヤホンから流れるメロディに耳を傾けていました。
夕暮れの市場、二人きりの歩幅、そしてウィンが僕の胸ポケットに入れてくれたあのキーホルダー。中学の頃の僕には想像もできなかった「奇跡」が、今、目の前で起きています。
同じクラス、同じグループ。
距離が縮まれば縮まるほど、わがままな僕の心は欲張りになっていきます。
友達として隣にいられるだけで幸せなはずなのに、時々、彼の視線の先にいる「誰か」の存在を思い出しては、胸の奥がチクりと痛むんです。
「#好きなんだ」
この歌の歌詞みたいに、素直に想いを伝えられたらどれほど楽でしょうか。
でも、今の僕には、この夕風に乗せて、消え入りそうな声で呟くことしかできません。
たとえこの恋が、また「叶わない記録」の一つになったとしても。
今はただ、このバイクの振動と、隣を歩く彼の温度を、少しでも長く感じていたい。
海辺の町に夜が訪れます。
僕たちの高校生活は、まだ始まったばかり。
風は、明日どこへ向かって吹くのでしょうか。




