卒業発表と、胸ポケットの贈り物
この物語は、タイの学校を舞台にした実話に基づいた物語です
「ついに、この日がやってきたんだね……」
中学3年生が終わろうとしています。考えるだけで、なんだか心がざわつきます。僕、本当に卒業しちゃうの? それじゃあ、あの伝説のセリフを借りるしかないですね。
「私、サイロムは……中学校を卒業することを発表します!」
あ、いや、冗談です(笑)。アイドル気取りすぎましたね。
「私、前田敦子は、AKB48を卒業します!」
……なんてね、ふざけるのはこれくらいにしておきましょう。
内部進学の選抜試験も終わり、卒業アルバム(ทำเนียบรุ่น:卒業生の名簿や写真が載った記念冊子)の撮影も済ませました。それにしても、どうして体操服の裾をズボンに入れなきゃいけない(ใส่เสื้อในกางเกง:タイの校則で一般的な「シャツ入れ」スタイル)んだろう? すごく野暮ったい。本当はシャツを出したかったのに。そういえばあの日、ウィンがメガネをかけて撮影しているのを見ました。いつもより「ガリ勉」に見えて、思わず笑っちゃいました。
でも、今日が本番。パチム(วันปัจฉิมนิเทศ:卒業生を送るタイの伝統的な式典)の日です。
昨日の予行演習では、海洋少年団(ลูกเสือสมุทร:タイ特有の海軍式のボーイスカウト)の制服を着たウィンが、学年の旗を持って先頭を行進していました。どうしてあんなに、彼は眩しいんだろう? 僕なんて、彼には到底及びません。でも、僕は幸せなんです。彼の「背中」をこうして静かに眺めていられるだけで。
午前中の厳かな式典は少し長かったけれど、胸に迫るものがありました。午後はお祝いの時間です。僕はクラスの仲間に感謝の印を渡しました。今振り返ると、感謝しかありません。もし、僕の未熟な行動を叱り、導いてくれる友達がいなかったら、今の「サイロム」という人間は完成していなかったはずだから。
そして、もちろん……ウィンのための贈り物も、肌身離さず持っていました。
ステージでの演奏を終えたばかりの彼は、ギターを抱えた姿さえ、どこか浮世離れした美しさがありました。彼に歩み寄るには、これまでの人生で一番の勇気が必要でした。周りにいた友達に順番に贈り物を配り、いよいよウィンの番だ、と震える手で心を決めたその時。
「サイロム、待って。君にあげたいものがあるんだ」
不意に、彼の方から呼び止められました。
ウィンは何かを取り出すと、僕のシャツの胸ポケットにそっと忍ばせました。それは、紫のチェーンがついたピンクの花のキーホルダーでした。その瞬間、心臓の音が耳元まで響くほど高鳴りました。僕は慌てて用意していた贈り物を彼に手渡し、すれ違いざま、彼の背中に指でこっそりと「青いハート」を描きました。
(僕は青色が一番好きなんです。学生服の白地に、僕の好きな色が重なる瞬間が、一番の宝物でした)
それから月日は流れ、高校のクラス発表当日。
やった! 僕は「理数・健康コース(วิทย์-สุขภาพ:医学や理系進学を目指すタイの特進コース)」に合格しました。ウィンも同じコースです。もし、ウィンと同じクラスになれたら……なんて、淡い期待を抱きましたが、きっと無理でしょう。彼は僕よりもずっと優秀なのだから。
そして迎えた、入学手続きの日。
「ええと……僕は、何組だろう?」 掲示板に並ぶ名前を指でなぞります。
「……6組だ」
「えっ!? ちょっと待って、これって……」
[ あとがき ]
6組。その数字が示すのは、偶然か、それとも運命の悪戯か。
風は再び、彼へと導かれるのでしょうか。次回の更新を楽しみにしていてください。




