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第9話 料理好きの魔法使いと一日だけの旅

~山菜と笑顔、そしてちょっとの魔法~


 森の小道をのんびり歩いていた七海は、ふわりと香るハーブと、どこか楽しげな笑い声に気づいた。


「……あれ、誰かいる?」


 茂みを抜けると、帽子の先がくるくると揺れる魔法使いの女性が、木の枝をかき分けながら楽しそうに野草を摘んでいた。


「こんにちは! あ、あなたも食材探し?」

「ええ、まあ……ちょっとつまみ食い用に山菜でも」

 七海は軽く笑う。


 彼女の名はリリィ。魔法も料理も大好きという、なんとも元気な魔法使いだった。

「せっかくだから、今日一日、一緒に旅しませんか?」

「うん、それ面白そうね。ちょっとだけ付き合います」



 森の中、二人は山菜採りを始める。

「これは……ちょっと珍しいキノコかも!」

「こっちにはタラの芽。天ぷらにしたら最高ね」

 七海の万能道具箱からは、調理器具や携帯鍋がぽんぽん出てくる。


 昼になると、二人はその食材を使った即席料理対決に挑戦。

「負けませんよ!」

「ふふ、じゃあ負けないわよ~」


 七海は道具箱から「自動かき混ぜ鍋」を取り出し、リリィは魔法で食材をちょこちょこ浮かせながら炒める。

 香ばしい匂いが森の中に広がり、鳥も思わず立ち止まるほど。


 味見の瞬間、二人は顔を見合わせて大笑い。

「これ、どっちが勝ちか決められないね!」

「うん、料理は楽しむのが一番!」



 夕暮れ時、焚き火のそばで座りながら、旅の話をする。

「私はね、気ままに旅して、あちこちの人や景色に会うのが好きで」

「私は……魔法の腕を磨きながら、料理の腕も上げたいの」


 静かに夜が更け、星がぽつぽつと光り始める。

 焚き火の火と、二人の笑顔が小さな温もりを作る。


 そして朝。山の稜線から光が差し込む頃、二人は旅立ちの時を迎える。

「またどこかで会えるといいね」

「ええ、その時はもっとおいしい料理で勝負しましょう!」


 笑顔で手を振り合い、それぞれの道を歩き出す七海とリリィ。

 森にはまだ、昨日の香りと笑い声がほんのり残っていた。

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