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第81話 船に乗って、風の向こうへ
~波の音と、ちょっとしたはじまり~(今更感)
港町の朝。
七海は、マグを片手に桟橋を歩いていた。
空は薄曇り、風はやさしく、海は静かに揺れている。
「……今日の風、出発に向いてるかも。ナビ牛の模様、当たってたなぁ」
船は、小さな帆船。
旅人たちが荷物を積み込み、船員がロープを巻いている。
七海は、道具箱から“船酔い防止キャンディ”をポン。
「これ、私の旅の必需品。チートっていうより、ただの生活力かも」
船が港を離れると、波の音が少しだけ大きくなる。
七海は、甲板の隅に腰を下ろし、マグの紅茶をひと口。
「……海の上って、なんか間って感じ。どこにも属してない時間」
隣に座った老船員が、ぽつりと語る。
「この海は、願いがよく流れてくるんだ。風に乗って、誰かの『またね』が届くこともある」
七海は、道具箱から願いのしおりをポン。
海に向かって、そっと投げる。
「世界は救えないけど、』またね』くらいなら、風に乗せられるかも」
風が吹き、しおりが波に乗って遠くへ流れていく。
夕方。船は、次の町の灯りを遠くに映し始める。
七海は、マグを傾けてぽつり。
「……この旅、どこまで続くんだろ。でも、続いてる間は、誰かの“ちょっと”に応えたいな」
空には、港町のステンドグラスの色を映したような雲が、まだ少し残っていた。




